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恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の約束

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19/27

#4



「そうなの?」

「そう。つうかそろそろ自分が可愛いこと自覚しろ」


か……っ!?


不意討ちの台詞に顔が熱くなる。


「可愛くはない! 強いて言うならかっこいい、だ」

「じゃあそういうことにしとくか。とにかく、今のお前はただ立ってるだけで狙われやすい。かわ……かっこいいから」


何か言い直された気がするけど。月仁は変わらず、真剣な表情をしていた。


「でも今度は絶対、俺が守る。だから俺の傍から離れな」

「自分のことは自分で守る! もうガキじゃないんだから、大丈夫だよ」


だけど、どうしても我慢できずに月仁の言葉を遮ってしまった。


俺は自分どころか、月仁のことを守りたいんだ。なのに彼に守られるなんてこと、あってはいけない。


使命感のようなものに支配されて言い放ったけど、月仁の表情も険しくなる。さっきより確実に強い語調で返してきた。


「お前の気持ちは尊重する。でも今は意地張ってるようにしか見えない。……いや、初めからずっと……お前は何かを怖がってる」

「……!」


月仁の鋭い眼差しを受け、言葉を失った。

きっと、図星だからだ。そして、それを否定する言い訳すら浮かばない自分に落胆している。


月仁はどんな時も俺の本心を見抜いている。それに気付いたらいたたまれなくて、息が苦しくなった。


「怖がらなくて大丈夫だ。もう離れることなんてない。ずっと傍にいるから」


そっと指が伸び、俺の前髪を撫でた。でも俺は臆病で、それすらビクッとしてしまった。

月仁の驚いた顔が見えた時……彼を傷つけてしまったんだと分かり、さらに頭が真っ白になった。


「ごめん……!」

「おい、深白!」


考えるより先に、足が動いていた。

廊下へ出て走り去る深白を追いかける為、月仁も扉へ向かう。


そこには都波が佇み、腕を組んでいた。


「取り込み中ごめん。貴島って、意外と熱いんだな」

「……」


月仁は足を止め、一旦呼吸を整える。彼の言うとおり過去最高頭に血が上っていたが、努めて冷静に答えた。


「別に。親友だから」

「親友? 嘘だろ?」


都波は目を丸くし、今度は前に身を乗り出した。

しかしそれは彼だけでなく、教室にいた数人も同じ反応で。


「嘘じゃないよ。……でも色々熱くなってたから白状する。親友っていうか、深白とは幼馴染」

「幼馴染? 嘘だろ?」


都波含め、全員が先ほどと全く同じリアクションをした。


隠していたことは申し訳ないけど、やや驚き過ぎな気が……。


月仁は気まずくなりながら小さく息をつく。

都波は未だダラダラ汗を流していたが、やがて可笑しそうに吹き出した。


「幼馴染なんてレベルじゃないだろ、お前ら。あんなこと大声で言い合ってさあ……逆に何で、そういう仲じゃないんだよ」

「え?」

「まぁいいや……早く追いかけてやれ。あいつ、ほとんど泣いてたぞ」


都波に背中を押され、前に踏み出す。

振り向くと、話を聞いていた女子達も心配そうに見守っていた。


「貴島君、川音君のこと追いかけてあげて」

「応援してる!」


「あ……ありがとう」


よく分からないが、応援されてしまった。

廊下に出て、深白が向かった方へ走り出す。もう放課後だから生徒が少ないのが救いだ。


周りにどう思われてようと、自分がすることはひとつ。


深白に寂しい想いをさせないことだ。だから、何があっても絶対迎えに行く。


クラスメイト達が言ってたとおり……幼馴染なんかじゃないから。


痛いほど拳を握り締め、月仁は昔の残像を思い浮かべた。







「はぁ……」


最低だ。

体育館の隣にある倉庫室まで走り、深白は項垂れた。


自分の言動を思い返したら、叫びたい衝動に駆られた。

月仁は俺を心配して言ってくれたのに。……突き放してしまった。


今度こそ嫌われた。そして、傷つけてしまった。

自己嫌悪からその場に屈み、蹲る。


月仁のことが大切で、大好きなのに。……何で意地張っちゃうんだろう。


多分、認めてほしいんだ。俺は変わった。強くなったって。

実際は全然強くない。むしろ弱々メンタルになってる。

月仁が遠い存在になっていくのが悲しいし、独りが怖い。


駄目駄目じゃん……。

こんな最低な人間……幼馴染としても、彼の傍にいる資格はない。


離れなくちゃ……かも。


苦しくて嗚咽してると、不意に名前を呼ばれた。


「あれ。川音じゃん。どした?」

「あ……」


顔を上げると、隣のクラスの男子が立っていた。

蹲ってる自分を不思議そうに見つめている。

「大丈夫。そっちこそどうしたの?」

運動部がここにいるなら分かるが、彼は帰宅部だ。制服を着ていて、咄嗟になにかをポケットに仕舞ったのも分かった。


「いや〜、暇でぶらぶらしてただけ」


すぐに匂いで分かったが、一服してたんだろう。こんなエリート校でも、そういう生徒はいる。むしろ見た目は真面目そうな生徒ほど、裏でストレス発散してることは知れ渡っていた。

彼に限ったことではないから、一斉摘発でもしないとなくならない気がする。


「それよりお前、泣いてたの?」

「う、ううん」


慌てて袖で目元を拭ったが、腕を掴まれた。


「バレバレだから隠さなくていいって。……それより噂通り、お前ほんと変わったよな」




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