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恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の約束

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18/27

#3




そりゃあ俺は月仁が大好きだから、一緒にいられるのは死ぬほど嬉しい。


でも常に罪悪感に苛まれる。自分なんかが彼を独占していいのか、と。


だって俺は弱虫で、容量が悪い笑われ者だったから。


「深白。おはよう」

「あ。お、おはよ。……月仁」


翌朝。学校に着いてすぐ、月仁と顔を合わせた。

いつもと変わらない様子の彼に安堵し、上履きに履き替える。


「ねぇねぇ、今の聞いた? あの二人名前で呼び合ってる!」

「ね〜! やば……イケメン同士の名前呼びって破壊力あるぅ~!」


聞こえてる聞こえてる。

背後でキャッキャしてる女子達に内心ツッコみながら、二人で教室へ向かう。

月仁に今の会話が聞こえてなければいいなと思ってると、今度は他のクラスの男子が話しかけてきた。


「あっ。なぁ川音、今日の放課後暇? ちょっと女子と集まることになっててさぁ……貴島も来てくれると助かるんだけど」


う。また合コンか。

穏便な断り方を考えてると、月仁が前に出て毅然と言い放った。


「ごめん。俺達バイト入ってるから」

「あー、そっか。じゃあしょうがないな。サンキュー」


彼はがっくりした様子で去っていった。


「そうだ。“それ”があったこと忘れてた。さすが月仁」

「お前が提案してくれたことだろ」


月仁は腰に手を当てる。呆れられてそうだけど、彼は俺の額を指で押し、笑った。


「深白が“そういう”場所に行ったら狙われて大変だ」

「何言ってんだよ。そりゃ月仁の方だろ。今や学校を代表するイケメンて噂されてさぁ……」


頬を膨らまして言うけど、内心は複雑だった。

良いことばかりじゃなくて、同性からのやっかみを受ける可能性がある。


しかもそれは月仁が変わるキッカケにもなったことだから、悪意をぶつけられるようなことがあれば何としても防いでやりたかった。


俺が月仁を守らないと。頭の中で何度も繰り返して、胸に誓う。


でも、ちょうどこの日を境に、俺を取り巻く環境が明確に変わった。


「川音。今好きな音楽って何?」

「おい、俺が好きな食べ物訊くほうが先だって」


「ま、まあまあ……言うからちょっと待って」


第二のモテ期襲来。


しかし男限定。


何故か急に学校中の男子から話しかけられるようになった。

以前と決定的に違う点は、プライベートなことを訊かれることだ。前はあくまで優等生として、学校全般のお願いや質問をされていた。でも今はみんな、俺個人に関心を持ち、話しかけてくる。


何でだろう。最近は大人しくして、すっかり空気みたいになってたのに。


「川音、バイト始めたんだって?」

「え? あ、うん」

「変わったよなぁ。前は勉強一番! って感じだったのに。でもそっちの方がいいよ」


クラスメイトは隣で頬杖をつき、うんうん頷いた。

話しかけやすくなった、と二回は言っていた。


どういうことだ……キラキラオーラを頑張って発してた前の方が、絶対話しかけやすいはずなのに。

今は恰好もダボッとして、テンションもそんな高くなくて、できる限り机にへばりつくスタイルになってるのに。


今まで近寄ろうとしなかった、違うタイプの男子達が話しかけてくるようになった。


「川音って彼女いんの?」

「え! い、いないよ」

「何でつくんないの?」


どちらかと言えば昔の俺が萎縮してしまう、ギャル男達だ。彼らは固い俺のことなんて眼中になさそうだったのに、急に周りを取り囲んできた。


「まだお勉強一筋なわけ?」

「まさか。もう卒業するよ」


受験を控えてるのに勉強を卒業って何だ。自分で言っておきながら意味分からなくて困惑する。


というか、頭真っ白で挙動不審になるのも無理はない。

俺は優等生を演じてたからまともな受け答えができていたんだ。優等生という皮を脱いだら、マジで不審者になる。


ところが、クラスのイケてる男子達は様子が変わった俺に興味津々で。


「気になってる子とかいないの? いたら手伝うぜ」

「そうそう。あ、ボタンもう一個外しとけよ」

「わわ! ちょちょちょっと!」


もみくちゃにされながら何とか対応してると、後ろから軽く引っ張られた。倒れるかとヒヤヒヤしたけど、背中を優しく受け止められる。


「深白」

「月仁……」


振り返った先には、怪訝な表情を浮かべる月仁がいた。

目の前の男子達に向き直り、すぐさま笑顔を浮かべる。


「彼そろそろ返してもらってもいい?」

「ど、どうぞ……」


一瞬で切り替えを見せる月仁が恐ろしいのか、彼らはそそくさと去って行った。

廊下で捕まり中々教室に戻らない俺を心配して来てくれたらしい。お礼を言って、一緒に教室に戻る。


「何か俺、急にイケイケ君にモテるようになった。何でだろ?」

「普通になったからだろ」


月仁は頭をかき、ため息まじりに答える。


「多分以前のお前って、完璧過ぎて近寄り難い感じもあったんだろうな。それが急に頼りなくなって、オドオドしてるもんだから興味津々になんのも仕方ないよ」




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