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恋人は、あまえた(元)優等生  作者: 七賀ごふん
幼馴染の約束

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#2




時晴さんは俺と月仁を交互に見て告げた。


「そ、そうですね……!」


多分、彼が言ってるのは青春っぽい活動のことだろうけど。


俺は返事してる間もずっと、隣にいる月仁のことを考えてる。……なんて知ったら、彼らはどう思うだろう。


普通にやばい奴認定だよな……。顔に出さないようにしないと。

努めて真顔を保ち、熱々のピザを頬張る。月仁を盗み見するとやれやれみたいな顔をしていたので、いつも言われてるのかな、なんて思った。



今しか言えないことか……。



その後も三人で昔のことを話したり、近況報告もしたりして盛り上がった。

時晴さんは本当に優しくて、また家に遊びに来てと言ってくれた。


「もう真っ暗だから、送って行こうか」

「大丈夫ですよ! 俺の家、ここから近いので」


マンションの外で時晴さんが心配そうにしていたから、笑顔でお辞儀した。すると今度は月仁が俺の隣に移動し、歩き出した。

「駅まで送ってから帰る」

「そうか。悪い、頼んだぞ。深白君、またね」

「は、はい。夜ご飯ご馳走様でした!」

月仁の歩くペースが速いから、別れの挨拶は声を張り上げた。


暗い住宅街で、月の光が道を照らしてくれる。

俺はぼんやり目の前を見ながら、隣の月仁に話し掛けた。


「月仁のお兄さんに会えて良かったよ」

「あぁ……最後に会ったの小学生のときだから、びっくりしたろ」

「うん。でもスーツ似合っててかっこいいし、やっぱ月仁の兄貴だな〜。って思った!」

「何だそりゃ」


月仁はくくっと笑って俺の髪を撫でた。

「今日は嫌なこと色々聞かせちゃったし、ごめんな」

「嫌なことって?」

「お前が転校した後のこと。学校で浮いてたって話」

踵を鳴らし、月仁は車道に面した細い道に乗り出す。さりげなく内側に押されたから、彼の腕を引いて自分の方に引き寄せた。


「嫌なことじゃなくて、大事なことだよ。月仁を傷つけた奴らに腹立つけど……お前が辛いときに何もできなかった自分にも腹立つ」

「教えてないんだから何もできないのは当然だろ」

「そ、そうだけどさ。これからは教えてよ。俺は月仁の力になりたい」


足を止め、力強く告げる。

いつも何かしら告白してるせいで、段々耐性がついてきたのかもしれない。彼の目を見て、はっきり伝えることができた。


「無理すんな、の前にもうひとつ約束したろ? ずっと傍にいるって。もう絶対、月仁に寂しい思いはさせないよ」

「深白……」


相棒とは、やっぱりちょっと違うんだ。

片割れとか半身とか、それぐらい強いもので繋がっている。月仁の痛みは自分にも刻まれる。


こう思うってことはやっぱり、俺は月仁のことを……。


胸の辺りを押さえ、静かに深呼吸する。

急に黙ったせいか、月仁は不思議そうに俺の頭を撫でた。


「また暗い顔してる」

「……これは真面目な顔って言うんだ」

「同じだよ。何でいつも気負ってんのか分かんないけど。……もっと寄りかかってこい」


駅に到着する直前、月仁は俺の手を握った。


「お前にその気がないなら、ウザいぐらい付き纏うぞ」

「え? 月仁が?」


ウザいどころか、普通に嬉しくてヤバいけど。


驚きやら照れくさいやらで思考が停止し、淡々と尋ねた。


「そう。今は抑えてるだけだからな?」

「な、何で抑えてんの」

「そりゃお前が逃げそうだから」


月仁に背中を押され、駅の方へ乗り出す。

逃げるというか、いつも俺が彼に突き放されてる気がするんだけど。

どういうことなのかと思い振り返る。すると月仁は見たことない真剣な眼差しで俺を見つめていた。


「でも、明日からはそれもやめる。そろそろ限界だしな」

「ちょ……全然よく分からないんですけど。俺、何かしちゃった?」

「いいや。おやすみ。気をつけて帰れよ」


そう言うと、月仁は軽く手を振って踵を返した。


何なんだ? 変なこと言っちゃったかな。

今日は特に感傷的になってわたわたしたから、引かれたかも……。


「はぁ〜……!」


時晴さんの家にいた時のことを思い返す。


……告白はしてないよな。あくまで、月仁の“強いところ”が好きって言ったんだし。


大丈夫大丈夫。まだ幼馴染の範囲内だ。


でも、心臓が爆発しそう。

何か絶対おかしい。……引き返せない場所に来てしまったような気がしている。


息が苦しい。顔が熱い。


何だこれ。

初めての経験に戸惑い、電車に乗った。夜の気温は涼しいぐらいなのに、自宅に着いてからも顔は火照ってしまっていた。




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