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ニュースから逃げるように飛び出して
金沢に着いたのは、夕方だった。
雨は降っていなかったのに、空は重たく曇っていた。
街は静かで、観光地のはずなのに現実味がなかった。
ホテルのドアが閉まった瞬間、
世界が外に残された気がした。
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それから、外に出なくなった。
カーテンを閉めたままの生活。
時間が分からなくなる日々。
朝か夜かも曖昧だった。
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テレビだけが、外の世界だった。
音を小さくして、ニュースを見る。
それが日課になった。
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その日も、何気なくテレビをつけた。
画面に映ったのは、見慣れた街。
京都。
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「続報です――」
その言葉で、体が固まった。
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「警察は現在、」
一瞬、呼吸が止まる。
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「小鳥遊一(25)の行方を追っています」
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時間が止まった。
音が遠くなる。
画面の中の言葉だけが、はっきり聞こえた。
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小鳥遊。
知らない名前だった。
でも、知っている名前だった。
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私はゆっくり振り向いた。
「……はじめさん」
声が震えていた。
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「小鳥遊って」
少し間。
「はじめさんのこと?」
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彼は、少しだけ黙った。
それから、頷いた。
「うん」
短い返事。
それだけだった。
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恋人が、ニュースの中の人になる瞬間だった。
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画面の中で、似顔絵が映った。
特徴。痩せ方で170cm後半と見られ
年齢。25歳
職業。K女子大学附属高校
現代文教師。
すべてが繋がった。
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私はテレビを消した。
部屋が静かになる。
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「人は、自分の信じたいものしか信じないんですよ」
彼が言った。
授業みたいな声だった。
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私は何も言えなかった。
ただ、名前の重さだけを感じていた。




