表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

2

二人で食事をするようになるまで、時間はかからなかった。


最初は偶然だった。


バス停で会った数日後、駅前のコンビニで再会した。

その次は大学の近くのカフェ。


三度目で、もう偶然じゃない気がした。



「また会いましたね」


彼はいつも敬語だった。



「本当に偶然ですか?」


私がそう言うと、彼は少し困った顔で笑った。


「どうでしょう」



それから、自然に並んで歩くようになった。



「学生の頃、よく来ていた店があるんです」


ある日、彼がそう言った。


「もしよければ、一緒にどうですか」



小さな定食屋だった。


派手じゃない。

でも、落ち着く店。



「何にします?」


「同じものにします」


そう言うと、彼は少し驚いた顔をした。



「理由、聞いてもいいですか」


「先生が選ぶなら、美味しそうだから」



彼は少し笑った。


「期待に応えられるといいんですけど」



料理が来るまで、他愛もない話をした。


授業の話。

大学の話。

好きな本の話。


彼は話を聞くのが上手だった。



料理が運ばれてきた。


湯気。

味噌の匂い。

揚げたての音。


私は一口食べて、思わず言った。


「美味しい」



彼は少しだけ嬉しそうに頷いた。


「そう言ってもらえると安心します」



少し間があって、彼が言った。


「誰かに美味しいって言われると、

 その日って特別になるんですよね」



その言葉が、なぜか心に残った。



食事の帰り道。


夜風が少し冷たかった。



「また行きましょう」


私が言うと、彼はすぐに頷いた。


「ぜひ」



それから、

二人で食事をすることが当たり前になった。


週に一度。

やがて週に二度。



気づけば、名前を呼ぶようになっていた。


「優希さん」


敬語のまま、少しだけ距離が近くなった。



その頃にはもう、わかっていた。


この人の隣にいる時間が、好きだということを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ