16
またしばらく、日が過ぎた。
もう何日この軟禁生活かもわかっていなかった。
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ある日突然
朝、目が覚めても起き上がれなかった。
天井が遠い。
体が重い。
呼吸が浅い。
指一本動かすだけで、ひどく疲れる。
喉が渇いているのに、声が出ない。
足音が近づく。
「優希?」
ベッドが沈む。
額に触れる手。
その瞬間、息を呑む気配。
「熱い」
小さく呟く。
すぐに毛布をめくり、
額を押さえ、頬に触れ、首筋に触れる。
触れる場所が増えていく。
「大丈夫、大丈夫」
何度も繰り返す。
まるで自分に言い聞かせるみたいに。
「起きなくていい」
「何もしなくていい」
「全部僕がやる」
早口になる。
コップが口元に運ばれる。
うまく飲めなくてこぼしてしまうと
はじめさんは当たり前のように、
自分の口に含んで私にあたえた。
「無理しなくていい」
すぐに横に戻される。
毛布が丁寧に整えられる。
隙間ができないように。
逃げないように。
椅子が引かれる音。
すぐ隣に座る気配。
動かない。
ずっと動かない。
「だから言ったんだよ」
静かな声。
「僕がいれば大丈夫って」
心臓がゆっくり沈む。
手を握られる。
強く。
離さないように。
「外に出なくていい理由ができた」
少し笑う気配。
「優希は弱いんだから」
優しく言う。
「僕が守らなきゃ」
髪を撫でる。
何度も。
何度も。
止まらない。
「外に出たら悪くなる」
「ここにいれば治る」
「僕が見てるから」
呼吸が近い。
ずっと近い。
「優希がいなくなったら」
そこで言葉が止まる。
少し間があく。
「僕、どうなってしまうんだろうね」
小さく笑う。
すぐに抱き寄せられる。
「大丈夫」
耳元で囁く。
「どこにも行けないよね。」
返事を待たずに、抱きしめる力が強くなる。
「僕が守るから」
少し間を置いて。
「僕だけが守れるから」




