トリック
応接室に、再び全員が集められた。
ゴードン「聖女様は、こう仰っていた。“偽の神の件で、アカネが役に立つかも知れぬ”と」
アカネ「……私が、ですか?」
サナ「妾の勘じゃ。アカネの力が、今回は要る」
ユメは椅子の端に小さく座り、指先を絡めている。
アカネ「ユメ。無理のない範囲で教えてください。“神さま”は、どう現れましたか?」
ユメ「……祠の中が、急にあったかくなって……下のほうから、揺れる光が……」
アカネ「色は?」
ユメ「黄色っぽくて……でも、煙は……なかったです」
その一言で、仮説が固まる。
アカネ「音は、どこから聞こえました?」
ユメ「前から……でも、はっきりは……」
アカネ「匂いは?」
ユメ「……少しだけ、変な匂い」
私は頷いた。
アカネ「ありがとうございます」
向き直る。
アカネ「これは幻術というより、ガスの燃焼を使った仕掛けだと思います」
ゴードン「煙が出ない理由は?」
アカネ「ガスが燃えれば、基本的に煙は出ません。完全燃焼に近ければ、揺れる炎と熱だけが出ます」
サナ「なるほど。奇跡らしく見える、わけじゃ」
アカネ「はい。下部から点火すれば、光は下から揺れて見える。声は祠の反響で方向をごまかせます。姿が見えないのも、暗さと逆光のせいです」
ゴードンが腕を組む。
ゴードン「再現できるかね」
アカネ「小規模なら。安全管理を徹底して、確認しましょう」
ユメが不安そうに見上げる。
ユメ「……ぼくが見たのも……それ、ですか?」
アカネ「はい。怖かったのは本物。でも、神ではありません」
サナが静かに口を開く。
サナ「実験を許可する。結果次第で、偽神狩りに移る」
決まった。
奇跡は、仕掛けで作れる。
ならば、暴くのもまた、理屈だ。




