異世界転移
アカネ「……ここ、どこ?」
私は確か、近所の神社に居たはず
鳥居も、拝殿もない。
あるのは見知らぬ石畳と、遠くまで続く白い建物。
コハル「ちょ、あんた! 起きたんか!」
勢いよく覗き込んできたのは、ピンク色の髪の少女だった。
フリルのついた服。エプロン。どう見てもメイドだ。
アカネ「あなたは……?」
コハル「うちはコハル。ここらの屋敷で働いとるメイドや。あんた、神殿の裏で倒れとったんやで?」
神殿、という単語に胸がざわつく。
神社から、神殿。偶然にしては出来すぎている。
コハル「名前は? 喋れるなら歩けるやろ」
アカネ「アカネ、です。……ここは日本じゃ、ないですよね」
コハル「にほん? 知らん国やな。まあええわ、とにかく来ぃ」
連れて行かれた先は、白を基調にした静かな建物だった。
礼拝堂の奥、光が集まる場所に、一人の女性が立っている。
サナ「——ようこそ、迷い子」
白髪。豊かな胸元。
慈しむような微笑みなのに、視線は鋭い。
サナ「妾はサナ。この地の聖女じゃ。貴女、名を名乗りなさい」
アカネ「アカネ、です」
その瞬間、サナの瞳が、ほんのわずかに揺れた。
サナ「……そう。良い名じゃ」
彼女は、それ以上踏み込まない。
私が神社にいたことも、異界の人間であることも——言わない。
けれど確信があった。
この人は、気づいている。
神域から落ちた私と、
それを見逃す聖女。
ここから、物語は始まる。




