表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/33

冒険者ギルドからの依頼


朝靄が街を包む頃、教会の鐘が静かに鳴り響いた。

私は修道女たちに混じって、ニケ神へと祈りを捧げる。

誰も私の素性には気づかず、ただの旅の修道女だと思っているようだった。

それが少し、心地よかった。


祈りの後、質素ながらも温かい朝食をいただいた。

そして、そっと金貨を五枚、神父様に手渡す。

その瞬間、彼の目が見開かれた。


「こ、これは……!」


どうやら、私が《龍の輝き》の元メンバーであることは知られていなかったらしい。

けれど、私にとって金貨五枚など、ささやかな感謝の気持ちにすぎない。

それで十人の修道女が一月暮らせるのなら、安いものだ。


朝の光が差し込む中、私は再び冒険者ギルドへと向かった。

すでに多くの冒険者たちが集まり、依頼掲示板の前で活気を見せている。

その様子を横目に、私はカウンターへと歩み寄った。


「おはようございます、ツクヨミ様」

昨日の受付嬢が、にこやかに手招きする。


「おはようございます」

「早速ですが、ギルドマスターがお待ちです。二階へどうぞ」


……嫌な予感がする。

けれど、ニケ神の託宣がある以上、逃げるわけにはいかない。

私は覚悟を決めて、受付嬢の案内で二階へと向かった。


ギルドマスター室の扉が開かれ、重厚な机の向こうから、落ち着いた声が響いた。


「おはようございます、ツクヨミ様。ロードの冒険者ギルドへようこそ」


「おはようございます。ご丁寧にありがとうございます」


「実は……王宮からの依頼で、どうしてもお力を借りたい案件がありまして」


ギルドマスターの話は、要するにこうだった。


・アスタリア王国の第一王子、グリムンド殿下が現在ロードの街に滞在中。

・彼はわがまま放題に育ち、誰の言うことも聞かない。

・王宮からは、彼のレベル上げと性格の矯正、教育を依頼されている。

・報酬は破格、だが誰も引き受けたがらない。


……まあ、当然だろう。

王族に何かあれば、責任は重く、最悪の場合、首が飛ぶ。比喩ではなく、物理的に。

そんな依頼、普通の冒険者なら誰だって避ける。


でも、私は違う。

実績もあるし、今は自由の身。

そして何より、ニケ神の託宣が「南へ行け」と告げたのだ。

これは、きっとその導きの一部なのだろう。


「とりあえず、鑑定してみますね」


私はそっと目を閉じ、遠隔鑑定魔法を発動した。

浮かび上がったステータスに、思わず目を見開く。


王族 グリムンド・フォン・アスタリア

基礎レベル:Lv15

基本スキル:身体強化Lv1

特殊スキル:なし

称号:アスタリア王国第一王子

年齢:8歳

職業:王族/魔法剣士Lv1

性格:わがまま


「……性格まで表示されるなんて。ニケ神、これは完全にあなたの仕業ですね」


普通、鑑定魔法では性格や年齢なんて表示されない。

これは神の力が働いている証拠。つまり、これは神託の一環。

逃げ道は、ない。


「この方は今どこに?」

「郊外で護衛と遊んでおられるはずです」


「では、探してみます」


「その前に、これを」

ギルドマスターが差し出したのは、漆黒のギルドカード。


「……Sランク?」


「報酬の前渡しです。あなたほどの実力者なら当然でしょう。王宮の依頼ですし、これくらいは職権の範囲内です」


「はあ……ありがとうございます」


(まあ、断れないんだけどね)


部屋を出ようとしたとき、ギルドマスターがもう一枚、銀色に輝くカードを差し出した。


「こちらはグリムンド王子に。王族専用のギルドカードです」


そのカードは、名誉Sランクと同等の特典を持ち、素材の買い取り価格は通常の1.2倍。

さすがは王族、というべきか。

ギルドのオーナーが王宮である以上、こうした特別待遇も当然なのだろう。


私は二枚のカードを手に、ギルドを後にした。

さあ、次は……わがまま王子とのご対面だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ