ロードの街の冒険者ギルド
夜の静けさに包まれたロードの街。
その中で、ひときわ目立つ建物があった。木造の看板には、剣と盾の紋章が刻まれている。
冒険者ギルド——この街の命綱とも言える場所だ。
私は扉の前で一度深呼吸をし、そっと中へと足を踏み入れた。
中は思ったよりも明るく、木の香りと鉄の匂いが混ざり合っていた。
カウンターの奥では、ギルド職員がちょうど素材の買い取りを終えたところだった。
「おや……あら、これはこれは!勇者パーティ《龍の輝き》のツクヨミ様ではありませんか!こんな夜更けに、いかがなさいました?」
私は少し照れながら微笑んだ。
そう、実は私、ちょっとした有名人なのだ。
勇者アーサーと共に旅をしていた頃、各地でケガ人や病人を癒してきた。
軽い怪我ならその場で治し、重傷者には後払いで施術を施した。
中には、失明や手足の欠損を癒した者もいた。お金がない者には「出世払いでいいですよ」と微笑んで。
そのおかげで、私は多くの人々に感謝され、噂が噂を呼んで、名が広まっていた。
「実は……勇者パーティを抜けることになりまして。これからは冒険者として旅を続けようと思い、ご挨拶に伺いました」
職員の目がまんまるになる。
「な、ななな……なんでツクヨミ様のような方が勇者パーティを抜けるようなことに……!?」
まあ、そう思うのも無理はない。
私は簡単に事情を説明した。すると職員は真剣な表情で言った。
「明日、もう一度ギルドにお越しください。正式なギルドカードの発行と、特別依頼をご用意いたします。けっして損はさせませんので、勝手に移動はしないでくださいね」
「……はい?」
「お泊まりは教会でよろしいですね?」
「……はい??」
話はそこで打ち切られ、私はぽかんとしたままギルドを後にした。
教会に戻ると、まずはお祈り。
聖女としての務めでもあるが、実はこれ、経験値を得るための大切な儀式でもある。
祈りを捧げることで、基礎レベルやスキルレベルが上がるのだ。
もちろん、そんな裏事情は教会関係者だけの秘密。
他の人々は、私が熱心に神を崇めていると思ってくれているけれど……ふふ、ちょっとした裏技ってやつだね。
明日はギルドで何が待っているのだろう。
特別依頼って、いったい……?
私は胸の奥に小さな期待を抱きながら、静かに目を閉じた。




