炎龍との盟約と雷平原へと続く道
ツクヨミは、雷の杖の手がかりを求めて、炎龍山脈へと舞い戻った。
目指すは、勇者アーサー率いる“龍の輝き”のパーティ。
彼らは山の中腹で、ツクヨミが分け与えたホーリーバリアーの中、束の間の休息を取っていた。
「アーサー、ちょっと聞きたいことがあるのだけど」
「だ、誰だ!?」
「わたしですよ。聖女のツクヨミです。」
驚くアーサーに、テレポートの仕組みを簡単に説明。
どうやら、グリムンド王子もシャルロットも口が堅かったようだ。
「雷の杖を探しているのですが、何か心当たりはないですか?」
「場所は分からないけど、北に“雷平原”って場所があるらしい。自然に雷が落ちるって話だ。」
「……それ、絶対に何かあるわね。」
だが、雷平原へ向かうには、まず炎龍山脈の攻略を終えねばならない。
ツクヨミは思念を山に向けて呼びかけた。
「炎龍さん、ちょっと通してもらえませんか?」
返ってきたのは、重々しい声。
「そなた、ニケ神の使徒か?」
「いえ、聖女のツクヨミと申します。」
「……ならば、そなたには通行を許そう。」
しかし、炎龍は続けた。
「だが、そこの人間どもが我が部下を討ち取っておる。もうやめさせてくれぬか?」
ツクヨミはすぐにアーサーに伝え、冒険家ギルドと王宮を巻き込んだ大交渉へ。
王都にテレポートし、王の勅命をもってドラゴン退治の依頼を撤回させた。
調印式には、やっぱり登場――グリムンド王子。
炎龍との和平の証として、王の代理として調印を行うことに。
「我のこの姿で調印など……」
「大丈夫です。模写の鏡がありますから。」
ツクヨミの家をストレージから展開し、急遽調印式を開催。
炎龍はアーサーの姿を借り、王子と契約を交わした。
盟約の内容:
人間は炎龍山脈に無断で踏み込まない
訪れる際はドラゴンに一報を入れる
ドラゴン退治は禁止
ドラゴンは人間に危害を加えない
山脈を迂回する道の建設は許可
聖女ツクヨミには自由通行を許可
問題が起きた場合は話し合いで解決すること
調印の後は、祝宴!
ツクヨミはハンブルクの「聖女亭」ごとストレージから呼び出し、豪華な料理を振る舞った。
アーサーの姿でバクバク食べる炎龍に、皆が笑いをこらえる中、和やかな時間が流れる。
グリムンド王子、シャルロット、勇者パーティ、兵士たち――
皆が一堂に会し、笑い、食べ、語り合った。
「こういうのって、いいわね……」
宴のあと、王子とシャルロットは王都へ。
聖女亭は元の港町へと戻され、炎龍は鏡を割って元の姿に戻り、山へと帰っていった。
静けさが戻った山の中腹。
ツクヨミはひとり、残された。
「……独りぼっちになったけど、さびしくないもん。ぐすん。」
でも、その胸には確かに灯るものがあった。
仲間との絆、交わした約束、そして――雷平原への希望。




