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海神 ふたたび

久方ぶりに訪れた港町ハンブルク。

潮の香りと焼き魚の匂いが混ざり合い、ツクヨミの鼻をくすぐる。

ふと立ち寄った食堂で、見覚えのある姿が――


「……シャルロット?」

「おう、使徒殿か。いや、陸の食い物が美味くてのう!」


その声は、まぎれもなく――海神リバイアサン。

しかも、シャルロットの姿で定食をバカ食い中。


「その姿でバカ食いはやめてください。あの方、王都の教会の司祭なんですから!」

「む、そうか。ではこれでどうじゃ?」


次の瞬間、ツクヨミの姿に変身。


「それ、もっとダメです。怒りますよ。」

「むむ……ではこれでどうじゃ?」


今度は勇者アーサーの姿に。

「……それなら問題ありません。今後はそれでお願いします。」


アーサーには悪いが、知らぬ存ぜぬで通すとしましょう。


私やリバイアサンのやることに文句をつけても無駄ですからね。


周囲の客たちは笑いながら、スパゲッティや魚の皿を次々とリバイアサンに差し出していた。


「ヨシヨシ、明日は大漁間違いなしじゃ!大漁旗を忘れるでないぞ!」


どうやら、街の人々はリバイアサンの正体を知っているらしい。


そして、しっかりと“餌付け”されているようだった。


「ところで使徒殿、今は暇かの?」


「ええ、特に急ぎの用事はありませんが……」


「ならば頼みがある。わしの娘、テテュスを見てやってくれんかの。

クラーケンのやつが行方知れずでな、あやつ、テテュスに惚れておってな……」


「……それ、わたしに追い払えと?」


「できれば、じゃ。すぐに独り立ちさせるわけではない。ゆっくり考えてくれ。」


ツクヨミは静かに頷いたが、心はすでに雷の杖の在処を探していた。


高位の雷撃魔法――それがなければ、クラーケンには勝てない・・・と思う。


「考えておきます、リバイアサン様。」


会計の際、ツクヨミはふと疑問を抱いた。


「リバイアサン様、いつもお金払ってるんですか?」


「払っておらんぞ?みな、勝手に食わせてくれる。」


……やっぱり。


「オーナーを呼んでください。」


駆けつけたオーナーに告げます。


「この方は、ここの海を統べるリバイアサン様です。失礼のないように。」


オーナーと料理長は白目を剥き、魂がふわふわと浮かびかけていた。


周囲からは安堵と驚きの声が上がる。


「この食堂を徴発します。謝礼は金貨1,000枚。

今後はこの店を――聖女亭と名付けましょう。

オーナーは私が務めますがあなたは引き続き支配人として努めなさい。

当面の費用として金貨1000枚を預けておきます。」


オーナーは感激のあまり、床にひれ伏した。

「ありがたき幸せ……聖女様の御心のままに!」


こうして、ハンブルクの港に新たな名所「聖女亭」が誕生した。


リバイアサン様の胃袋も、街の平和も、ツクヨミの手のひらの上。


さて、次なる目的は――雷の杖。


クラーケンを討つため、ツクヨミの新たな旅が始まろうとしていた。


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