穢れの魔物討伐譚
魔物ウィンゴ討伐
ウルンの街をでて東の森で発生原因の確認に出発です。
おっとその前に教会に行って修道女ルーシーを呼び出して一緒に連れて行きましょう。
わたしがいなくなった後をルーシーにすべて押し付けるつもりですから、しっかりと引き継ぎして頂かないと・・・
ルーシーに拒否権はありません。修道女とはそういう存在だからです。
ところでシャルロットで経験しているので違和感がなかったのですが、聖女と修道女のパーティってどう考えても歪ですね。
東の森は、魔物が結構多いのですが、ホーリーバリアーと気配察知を全開にして手負いの魔物を探します。
するとウルンの街から東の森に少し入ったところにウィンゴという狼型の魔獣がいました。
鑑定すると穢れの魔物と出ています。現在の状況の発生源はこれと考えて間違いないでしょう。
120頭くらいの大規模の集団です。
ホーリーバリアーを展開し、ニケ神の血まみれメイスを取り寄せて、ウィンゴの集団に近づいていきます。
牙をむいて襲い掛かったくるのですが、わたしのメイスとルーシーの杖の一撃でどんどん数を減らしていきます。
とうとう最後のボスとご対面ですが、これは厄介な事にウィンゴの変異体が死霊化しているウィンゴゾンビというものになっています。
とはいえ、レベル差が大きいのでわたしの一撃で頭を粉砕しました。しかしまだ向かってきます。
そこでホーリーバリアーを広げて死霊が活動できなくし、しばらく抵抗していたのですが最後には動くのをやめ、2人に大量の経験値が入ってきました。思った以上に大物だったようです。
さて今回の処置については倒したウィンゴが再度死霊化する可能性があるので、大き目のホーリーバリアーを発動させて死霊化を防ぐこととします。まあ3日もしたら落ち着いていると思うので、また様子を見に来ましょう。
ウルンの街に戻ると、冒険者ギルドの前でギルドマスターが待ち構えていた。
「ツクヨミ様!ご無事で何よりです!」
「ええ、討伐は完了したわ。報告するわね。」
ツクヨミは淡々と、しかし的確に状況を伝えた。
ウィンゴの討伐は完了。
ボスは死霊化した変異体、ウィンゴゾンビ。
領主らを蝕んでいたのは“穢れ”。
再死霊化の可能性があるため、ホーリーバリアーを展開済み。
3日間は東の森への立ち入りを控えるように。
ギルドマスターは目を見開き、何度も頷いた後、領主のもとへと走り去った。
その背中を見送りながら、ツクヨミはルーシーに振り返る。
「お疲れさま。あとは教会に戻って、しっかり報告しておいてね。」
「はいっ、ツクヨミ様!」
翌朝、冒険者ギルドからの呼び出し。
ツクヨミが足を運ぶと、ギルドマスターが満面の笑みで迎えた。
「昨日お届け頂いたエリクサーによってご領主様らは完全回復されています。ツクヨミ様にはいかく感謝されておりました。そこで、こちらが今回の報酬です。金貨1,200枚、王国からの褒賞も含まれております。」
「ふむ……まあ、妥当かもね。」
エリクサーと言えば万能回復薬としても知られている超貴重品。
昨日討伐したようなダンジョンに眠っているようなアイテムではありません。
とはいえ、事実だったのでしょうね。
さらに差し出されたのは、王宮からの勅命。
「王城にて謁見を賜りたいとのことです。」
「……謹んでお断りするわ。わたしはアスタリカ王国の子爵。勝手に他国の王に会うわけにはいかないの。」
ギルドマスターは目を丸くしたが、すぐに納得したように頷いた。
数日後、ウルンを立とうと準備をしていたツクヨミのもとに、王宮からの早馬が駆けつけた。
届けられたのは、豪華な箱に収められた贈り物の数々。
ウルグジア王国内フリーパス(王宮含む)特権商人の証
王国からの感状
そして――ニケ神の守りというペンダント
「……こんなもの、貰えないわよ。でも……欲しい。」
ツクヨミはそっとペンダントを手に取り、ストレージに滑り込ませる。
「複製……できるわね。」
オリジナルは丁寧に返却し、複製品をこっそり保管。
ルーシー、シャルロット、グリムンド王子、アスタリカ王室用に複数作成し、さらに予備もたっぷりと。
その足で、ツクヨミは母国アスタリカ王国へとテレポート。
王宮の中庭に降り立つと、すぐにグリムンド王子が駆け寄ってきた。
「ツクヨミさん!来てくれたんだね!」
「ええ、あなたにこれを渡しに来たの。」
ツクヨミはニケ神の守りのペンダントを王子の首にかける。
「それと、炎龍山脈に向かってる勇者パーティにも届けてあげて。あなたならできるでしょう?」
「うんっ!任せて!」
王子の目がキラキラと輝く。
その隣には、いつの間にかシャルロットの姿も。
「……あら、遊びに来てたのね。はい、これはお土産です。」
とニケ神の守りを首から掛ける。
「うん、王子と色々な冒険のお話を聞いていたの。今度は私も連れて行って下さいね。」
ふたりの無邪気な笑顔に、ツクヨミは小さく笑った。
「じゃあ、ついでに送ってあげるわ。勇者アーサーにニケ神の守りを届けてね。
炎龍山脈の手前、ドラグーンの駐屯地まで。」
「やったー!」
「わーい、冒険だ~!」
ツクヨミが詠唱を終えると、光がふたりを包み、瞬く間に姿を消した。
「……さて、わたしはどこに行こうかしら。」
風がローブを揺らし、ツクヨミは静かに空を見上げた。
次なる舞台は、まだ誰も知らない――




