南への旅の再開
当面のやるべきことについては時間が掛かると言う事で、ニケ神からの託宣に従って南への冒険を再開することにします。
アスタリア王国とウルグジア皇国の国境に建つ南の砦は、百年以上も両国の兵がにらみ合いを続けている――と表向きは言われている。
だが実際は、商人も旅人も通行証なしで行き来できるほどの緩さだ。
むしろ、仲が良すぎるのではと疑うほどに。
兵士の往来には厳しい砦も、冒険家には甘い。
フードを深くかぶり、目立たぬようにウルグジア側へ入り、そこから一日ほど離れたウルンの街を目指す。
ストレージに放りっぱなしだった馬車の試運転も兼ねて、模写の鏡で作った“もう一人の自分”を御者に据えた。
記憶も知識もない、ただ命令をこなすだけの影のような存在だ。
ウルンの街へ入るのは簡単だった。
冒険家の身分証を見せるだけでよい。
ましてやSランク証ともなれば、普通なら立ち入り禁止の危険地帯すら許可される。
街に着くと、まずは冒険家ギルドへ向かった。
依頼掲示板には魔物討伐の紙がずらりと並ぶが、どれも気が進まない。
そんなとき、若い男女三人組が声をかけてきた。
「私たちは白剣旅団といいます。回復職がケガをしてしまって……代わりに一緒にダンジョンへ潜っていただけませんか?」
話を聞けば、街の近くに古いダンジョンがあり、そこで修道女の回復役が負傷したらしい。
急遽、代わりを探しているという。
「回復職の方がいるなら、まず治療してから潜ったほうが良いのでは?
傷の程度を見て差し上げます。治せるかどうかは……見てからですね。」
私なら腕の一本や二本なら簡単に治せる。
しかし修道女は教会で寝かされているという。
教会で寝ている――つまり、厄介な毒か呪いの可能性が高い。
教会へ入ると同時に、ホーリーバリアーを展開した。
空気が澄み、光が満ちる。
その中で修道女の状態を確認すると、案の定、呪いが絡みついていた。
だがバリアの浄化作用で、呪いはすでに霧散している。
残るのは軽い外傷だけ。
回復魔法でそれも癒やした。
「大丈夫ですよ。明日には歩けるようになっています。」
そう告げると、教区長は目を丸くした。
「本当ですか……! あなたは高位の回復術師なのですか?」
身バレは避けたいので、ただ微笑むだけにした。
代わりに金貨五枚をそっと渡す。
お布施という名の口止め料だ。
すると教区長は、連れの冒険者たちも含めて教会に泊まっていってよいと言ってくれた。
食事まで出してくれるらしい。
お金の力は偉大だ。
こうして、わたしたちは全員で教会に泊まることになった。
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翌朝、元気を取り戻した修道女――ルーシーと共に、朝のお祈りと朝食。
彼女から受け取った金貨2枚は、教会へと返納。
「神の御心に感謝を。」
教区長は、さらに信心深くなっていた。
ダンジョン探索に同行することを決めたツクヨミは、ルーシーの装備を整えることに。
回復の杖(ツクヨミによる魔改造品)
聖女のおさがりの法衣(コピー品)
どちらも、普通の修道女が持つには規格外の代物。
(でも、これくらいないと、すぐにあの世行きですからね。)
修道女 ルーシーの現在のステータス
基礎レベル:Lv15
基本スキル:回復魔法Lv5/蘇生魔法Lv4
称号:修道女/聖女の弟子
装備:回復の杖(聖属性/回復適性大/復活適性大/重量軽減/打突適性大)
聖女のおさがりの法衣・コピー(体力自動回復/状態異常完全耐性)
(うーん、やっぱりちょっと弱いですね……)
ツクヨミは考えた。
(これは、ダンジョンでレベルアップ合宿ですね!)




