表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/33

秘匿されていた特殊スキル

宿屋の食堂を後にしたツクヨミは、夜の街を静かに歩いていた。月明かりが石畳を照らし、彼女の影を長く伸ばしている。心には寂しさと、ほんの少しの安堵が混ざっていた。


――ありがとう、みんな。


『龍の輝き』の一員として過ごした日々は、ツクヨミにとってかけがえのない宝物だった。だからこそ、別れの前に、どうしても伝えたい想いがあった。


彼女はそっと手を合わせ、心の中で祈る。


「ニケ神様、どうかお力をお貸しください。私の最後の願いを、叶えてください。」


ツクヨミには、誰にも話していなかった秘密があった。

それは、神より授かった特殊スキル『スキル譲渡』。

自らの基本スキルを、他者にコピーして与えることができるという、あまりにも強力すぎる力。


この力が国に知られれば、きっと彼女は自由を失う。

だが、今はもう関係ない。

別れの贈り物として、彼女は静かにその力を解き放った。


まずは、勇者アーサー。

剣技と魔法を操る魔法剣士だった彼に、ツクヨミは蘇生・回復・神聖魔法を譲渡した。

その瞬間、彼のクラスは変化し、聖剣士へと進化を遂げた。


次に、魔法使いミーア。

火・水・風・土の四属性を極めた彼女に、同じく蘇生・回復・神聖魔法を与えると、彼女の魂は新たな可能性を得た。

その名も賢者の卵。未来の大賢者としての道が、今、開かれた。


そして、剣士タニア。

剣技と防御に長けた彼女は、すでにガーディアンの資質を持っていた。

そこにツクヨミのスキルが加わり、彼女もまた聖剣士へと変貌を遂げた。


ツクヨミは、そっと微笑んだ。


「これで、もう大丈夫。私がいなくても、きっとみんななら乗り越えられる。」


彼女のスキルは、譲渡された者の中でLv1から育つ。すぐには気づかれないかもしれない。

けれど、いずれ彼らはその力に気づき、きっと活かしてくれるだろう。


ツクヨミは、最後にもう一度だけ、宿屋の灯りを振り返った。

そこには、かつての仲間たちの笑顔が、まだ残っているような気がした。


「さようなら、みんな。ありがとう。そして……行ってらっしゃい。」


夜風がそっと彼女の髪を揺らし、ツクヨミは静かに歩き出した。

新たな旅路へと――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ