王都の冒険者ギルドにて――新たな旅のはじまり
王都の冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間、ツクヨミは気づいた。
(……あ、やばい。)
向こうから、ギルドマスターが全力疾走でこちらに向かってくる。目が本気だ。
「これは……逃げるしかない!」
くるりと回れ右して全力で出口へ――と思ったその瞬間、四方からギルド職員たちが肉壁を形成。見事に包囲されてしまった。
(……テレポートで逃げるほどでもないか。)
観念して話を聞くと、北方の炎龍山脈の麓にある街、ドラグーンへの同行依頼だった。
「兵士隊と輜重隊に同行してくれれば、行って帰って金貨50枚!」
(……お金には困ってないけど、断る理由もないですね。領地探しの旅にもなるし。)
「わかりました。明日の朝、集合ですね。」
その足でツクヨミは教会へ向かい、祈りとお布施を済ませた。
「教会として、何か売り物はありませんか?」
教区長が紹介してくれたのは、教会特製のワインとクッキー。どちらも修道院で丁寧に作られた逸品だ。
「明日の朝までにご用意いたします。」
さらに、販売担当として修道女が一人同行することに。
(商人の心得がない?大丈夫です。わたしが後ろにいますから。天罰、即発動です。)
翌朝、ツクヨミは祈りを済ませ、我が家をストレージに収納し、集合場所へと向かった。
そこには、すでに大所帯が集まっていた。
兵士:250名
商人:4組
輜重隊:荷車10両
修道女:1名+教会の荷車1台
(……これは、ちょっとした移動都市ですね。)
ふと視線を上げると、見慣れた姿が。
「……あら。」
グリムンド王子と国王が、わざわざ見送りに来ていた。
「いってらっしゃい、ツクヨミ!」
「うむ、気をつけてな。」
ツクヨミは手を振り返し、にっこりと微笑んだ。
「それでは――テレポート、目的地:ドラグーン!」
光が弾け、旅の一行は一瞬にして北方の地へと転移した。




