王都への帰還――そして、王子の力、王を驚かす
魔物の氾濫が収束し、ゲートがダンジョンへと変わったその日、ツクヨミは勇者パーティをハンブルクへ送り届けた。
「そういえば、王城に来てたのって……ドラゴンの炎対策の相談だったんですよね?」
勇者たちは深刻な顔で頷いた。
「ドラゴンの炎が防げないんだ……」
「えっ、それ……ホーリーバリアーで防げますよ?」
「……えっ?」
どうやら、スキルが付いていることすら気づいていなかったらしい。しかも、レベルが低すぎて機能していなかった模様。
「でも、経験値祭りでレベルも上がったでしょう?今ならちゃんと効きますよ。」
その一言に、勇者たちは歓喜の声を上げた。
(……あんまり長居すると、またパーティに引き戻されそうですね。)
そう思ったツクヨミは、グリムンド王子を連れて、そそくさとテレポートで王都へ帰還した。
「今回は勝手に連れてきただけですし、褒美もないでしょうから、ここでお別れですね。」
そう言って王城前で別れようとしたその瞬間――
「囲め!」
王城の門が開き、中と外から兵士たちが現れ、ツクヨミを挟み撃ちにした。
(……また肉壁ですか!?)
「もっと丁寧に!もっと慎重に!」
隣で王子が叫んでくれたおかげで、今回は多少マシな扱いで王宮へと連行された。
王宮の玉座の間。ツクヨミはグリムンド王子に連れられ、王の前に立たされた。
王子は一生懸命、これまでの出来事を説明していたが、なにせまだ8歳。ところどころ説明が抜けている。
そこへ、討伐隊の隊長が補足を加え、ようやく全貌が明らかになった。
「……なるほど。だが、王子の力がそこまでとは……」
王は半信半疑だった。
「では、模擬試合を。」
王宮の訓練場にて、ロイヤルナイツ10名が整列する。
対するは、たったひとり――グリムンド王子。
試合が始まると、王子は圧倒的な速度と精密な動きで、次々と騎士たちを打ち倒していった。
だが、それだけでは終わらない。
「立ちなさい。」
倒れた騎士に回復魔法をかけ、再び立たせる。そしてまた戦う。
疲れたら回復。腕が飛んだら、即座に再生。
「……これ、私が王子にやってたことですね。」
ツクヨミは遠くから、ちょっとだけ申し訳なさそうに見守っていた。
(でも、これが一番効率的なんですよね。)
ロイヤルナイツは何度も降参を申し出たが、そのたびに回復され、再び戦場へと戻される。
「……これは、もはや修行というより、試練だな……」
王は目を見開き、そして深く頷いた。
「見事だ。グリムンド、そなたの力、確かに見届けたぞ。」
王子の成長に、王は大いに満足した様子だった。
ツクヨミはそっとその場を離れながら、心の中でつぶやいた。
(……さて、次はどんな“思し召し”が来るのやら。)




