王都近郊・魔物の氾濫鎮圧戦――そして経験値祭り
ニケ神からの託宣により、ツクヨミは魔物の氾濫が起きる場所を正確に把握していた。
「この辺りですね。」
王宮の兵士たちに野営の準備を命じると、ツクヨミは森の木々をストレージに収め、ぽっかりと空いた空間に我が家を設置した。
(やっぱり、家があると落ち着きますね。)
翌日、討伐隊も到着し、あとは魔物の出現を待つばかりとなった。
やがて、地面にぽっかりと開いた、直径2メートルほどの黒い“何か”が現れた。そこから、魔物が一体、また一体と這い出してくる。
「……これは、あの世とこの世を繋ぐゲートですね。」
ツクヨミはそう名付けた。
兵士たちは次々と現れる魔物を討伐していたが、ツクヨミはふと、あることを思いつく。
(このゲートの前にホーリーバリアーを展開したら……?)
試しに魔法を発動すると、ゲートから出てきた魔物たちは、聖なる結界に触れた瞬間、塵となって消えた。
その瞬間、ツクヨミの身体に、すさまじい量の経験値が流れ込んできた。
「……これは、美味しすぎます。」
すぐさまツクヨミはテレポートで王城へ飛び、グリムンド王子の部屋に突入。
「王子、ちょっと来てください。」
さらに、ちょうど王宮に来ていた勇者パーティ《龍の輝き》のメンバー4人も、問答無用で確保。
「はい、全員まとめてテレポート!」
次の瞬間、6人は魔物の氾濫の現場に転移していた。
「えっ!?戦闘!?」「何が起きた!?」
混乱する一行をよそに、ツクヨミはすかさずパーティ申請を行う。
すると、再びホーリーバリアーを展開し、魔物が出現するたびに、全員に経験値が分配されていく。
「……え、なにこれ。何もしてないのにレベルが上がってる……!」
「これが……神の恩寵……!」
一同はすぐに状況を理解し、スキルの調整や装備の見直しに取りかかった。
「王子、あとでお父上には、ちゃんと説明しておいてくださいね?」
「……う、うむ。任せておけ。」
ツクヨミの家には、かつて王子が使っていた部屋がそのまま残っていた。王子はそこに滞在することに。
勇者パーティは4人。部屋は3つ。だが、彼らは自ら進んで6時間交代でゲートの監視を申し出た。
「交代で見張りをするので、部屋は3人分で十分です!」
(……なんて都合のいい人たちなんでしょう。)
こうして、魔物の氾濫は、戦いではなく“経験値収穫祭”として幕を開けた。
ツクヨミはそっと空を見上げ、心の中でつぶやいた。
(ニケ神様、これは……ご褒美ですよね?)
神の返答はなかったが、ゲートからは今日も、経験値が溢れ出していた。




