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始まりの物語

ここは異世界、剣と魔法が交差し、魔物と人類が生存を掛けて争う世界。

一つの勇者パーティがダンジョン攻略を終えて、お互いの生還を祝って宴会をしているところから物語は始まる。

今日も、勇者パーティ『龍の輝き』は、予定していたダンジョンの攻略を終え、宿屋の食堂でささやかな祝宴を開いていた。木のテーブルには温かいスープと焼きたてのパン、香ばしい肉料理が並び、仲間たちの笑い声が静かな夜に溶けていく。


その時だった。

「申し訳ないのだが、ツクヨミには今日で勇者パーティを抜けて貰う。」


勇者アーサーの声が、食堂のざわめきの中でもはっきりと響いた。ツクヨミは一瞬、誰に向けられた言葉なのか分からず、思わず問い返した。


「えっ……私に言っているのですか?」


「そうだ、ツクヨミに言っている。」


その言葉に、ツクヨミは静かに周囲を見渡した。戦士タニヤも、魔法使いミーアも、どこか言葉を飲み込んだような顔をしている。その表情を見て、ツクヨミは悟った。


――ああ、私はこのパーティを抜けるのだ。


思い当たる節は、いくつもあった。回復魔法と身体強化しかできない自分が、今までこの精鋭たちと共に旅をしてこられたこと自体が奇跡だったのかもしれない。

足手まといだったかもしれない。それでも、ここまで連れてきてくれたアーサーには、感謝しかなかった。


「では、私と勇者様との旅はここまでということですね。分かりました。それでは失礼します。」


ツクヨミが立ち上がろうとしたその時、アーサーが手を上げて制した。


「まあ待てよ、食事くらいは最後まで付き合えよ。少し話したいこともあるし。」


「はあ……何でしょうか?」


アーサーは少しだけ目を伏せ、そして静かに語り始めた。


「本当は、自分はツクヨミには抜けて欲しくはないんだ。しかし、次に向かう炎龍山脈は、非常に危険なドラゴンが生息している場所だ。ツクヨミを守り切れなくなる可能性が高い。だが、回復役がいないと攻略は難しいのも事実だ。回復薬にも限界があるしな。そこで、回復魔法と肉弾戦を両立できるモンクを新たに迎えることにしたんだ。」


その言葉には、苦渋の決断がにじんでいた。


「こっちの事情で今まで付き合ってもらって、こっちの事情で抜けてもらって、本当に申し訳ない。でも……分かってもらえないだろうか?」


ツクヨミは、アーサーの瞳に偽りがないことを感じ取った。だからこそ、胸の奥が少しだけ温かくなった。


ツクヨミは微笑み、静かに頷いた。


――そう、これが旅の終わりではなく、ツクヨミの長い長い苦難の旅の始まりであった。





勇者パーティ―から離脱した回復術師ツクヨミは、港町ハンブルクで浜風に当りながら、明日への思いに馳せているのであった。

(明日がどうなるのかした)

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