6.デスデスコ
リアルタイム…
「は…」
アギレスの膝の上で、眠っていた…
ナデナデ…
「いい子いい子…」
温かく、小さな手が…髪の上を行き交う…
「あれも…見よ!」
彼女が指さす先に…光るふたつの巨大な目が…
「パパ…人類の進歩と…」
「え…調和?」
斜めに歪んで、ヒビ割れた…太陽の塔が、そこに立っている…そして気づく…
「ここは…吹田市だったのか…」
廃墟ビルの一室…娘とふたり、抱き合って…捨てられていた毛布にくるまって眠る…
(全部ウソで…この温もりだけが、現実かもな…)
娘の体温に安息し…意識を失う…そしてまた、夢の世界へ…
「いい子いい子…」
かつて見た…学校の屋上に佇むマクロは、自分のお腹をさすっている…
「あのふたりは…いないんだな…」
いつも、3人でたむろしていた場所だった…ケンヤユメコ姉弟と…
「誰ですか?」
(彼女は僕の事を、知らない…のか…)
「知ってるわ…私が知らないのは…あのふたりって言う方よ…」
「じゃ…マクロは、僕の事…」
「ええ…私のカワイイ坊や…」
(眩しい…朝か…)
「私の…赤ちゃん…お目覚め…」
アギレスに抱きしめられ、頭を撫でられる…その姿を改めて確かめた…
(似ているが…やっぱり…小さな子供だ…)
眩しい太陽光の下…恋人つなぎをして、アギレスと歩く…
「パパ…もう、私でいいんじゃない…」
「マクロを探すよ…きっと生きている…ママに逢いたくないの?」
「でも…3人になったら…ヤキモチ妬いちゃうな…」
「俺は…ふたりとも、同じくらい…大好きだよ…」
「俺って言うんだ…前は、僕だった…逞しくなったね…パパ…へへッ…」
「笑うなよ…死霊部隊が見てる…」
俺達の周囲を徐々に包囲する、半壊した顔面を持つ…元、人間だった者達…
「外の事…あんま、分からないケド…アギは…知ってる?」
「彼等は、魔物に支配されてる世界で…殺されてもなお、抵抗し続けている…言わば、怨霊ね…」
「敵じゃない?」
「いいえ…もはや、その判断は…出来てない…みたい…」
目線も虚ろな、彼等の中に…見覚えのある顔が…ふたつ…
「ユメコ…と…ケンヤ…か…」
(あの時、俺が見捨てたせいで…こんな姿に…悪いな…)
「パパ…戦う?それとも逃げる?」
俺達の後ろには崖…
「そうだな…どっちもイヤだ…」
「そう言うと思った…優柔不断な…旦那様…」
ギュ~!
娘の腕に抱きしめられ…崖を滑り落ちる…朝日に照らされた壁面には、一面の花…落下する俺達ふたりの肉体を、他の物に変えるかの様に、まとわりつく花びら…
ブクブクブク…
(液体に沈む感触…水、海水…にしては…温かい…)
「あ…動いた…」
お腹を押さえるマクロのイメージ…
「ママ…」
(無意識に、言葉を発してしまう…はっきり分ったぞ…俺は…マクロのお腹の中にいる…)
よく見えない目で…手を伸ばし…温かい方向へ…掴む…そして、懐かしい声が聴こえる…
「パパ…」
恋人つなぎされた、掌の向こう側にいたのは…思わず指を絡めた…
「アギ…」
「いいえ…私の名は、ユメコよ…ケンヤ…」
カラダの外から、マクロの声が聞こえる…
(いったい…誰に話かけている?)
「狂っているのは…この物語を読んでいる、お前…」
「以外の全て…」
おしまい




