4.アナザーワールド
マクロと手を繋いで歩く、この世界は…かつて僕が、知っていたものでは無かった…
「自然が…多いな…てか、ジャングルだ…」
「ハル…いえ、旦那様…」
「ハルでいいよ…」
今の状況ではもう…彼女を受け入れるしか無い…
(だって僕は…彼女を選んでしまったから…)
「ハル…ここ…ドコ?」
「また…夢である事を祈るよ…でも、あの子供教師の言ってた話は、信憑性あるよな…」
「でもね…一回死んでるのに…第二波って?」
「確かにおかしな話だ…死後の世界で、もう一回死ぬなんてな…」
ギュ…腕にしがみつく、マクロ…
「私達…生きてるよ…」
「だな…でも…風前の灯か…」
周囲の鬱蒼とした…森の樹木の隙間から、光る目と…
グルルルル…
獣の呻き…
「走るか…」
「いえ…様子見ながら…ゆっくり進も…気づかないフリでね…」
意外と冷静なマクロに従い…前だけを見て、静かに歩いた…明るい場所を目指して…
イヤな気配が消えた森の外れに、一軒の空き家を見つける…
グチャ…
「イヤン…何かしら…」
「見るな…」
足元に転がっているのは、明らかに人間の…さっきの奴等に襲われたのだろうか…
マクロを、部屋の奥に通し…遺体を片付け、食料を探す…
「ジャ~ん!ハル特製のインスタントラーメンだよ…」
台所にあった、前時代的な…お湯だけで作るラーメンをどんぶりに入れて、マクロに振る舞う…
「フフフ…」
「やっと笑った…」
とりあえず、今だけでも…食事とトイレだけは、確保出来た…この不安定な現実の中で…
「ハル…一緒に寝たいな…」
別々の布団で寝ていたが…マクロがスリ寄って来る…
「眠るって…意味ならいいよ…」
少々…思わせぶりな表現をしてしまった…が、今の僕にムラムラする余裕は無い…
温かい感触…甘い匂い…静かな寝息…
(カワイイ…)
「ソコ…ダメ…あっ…」
(そのタイプの寝言やめて…)
翌朝、目が覚める…太陽が真上だ…
外の様子を見てから、部屋に戻ると…マクロがいない…
ガンッ!
頭に衝撃が走る…地面の、コンクリートの肌触りが頬に…黒い革のブーツが目に入る…
「く…」
そのまま、意識を失ってしまった…
砂の地面の寝心地は悪い…錆びた鉄格子の中…状況を把握するのに、時間はかからなかった…扉の向こう、人ならぬ者の存在…手には鉄棒を握っている。
「マクロ…」
思わず声を出してしまったが…この牢獄の中には僕と…寝転がっている男…
(酷い腐敗臭…顔を見るのはやめて置こう…食欲が無くなる…まぁ食事が出ないから、こんな事になったのかもな…)
時間の経過が、全く分からない…
「ガウガウ…」
言語の通じない…獣人の男から、無造作に運ばれて来る、マズイ食事を取り…排泄し、眠るだけの日々…狭い地獄の天井近くにある、小さい窓から入り込む太陽光…それで、朝だけは認識出来た…
(何も出来ない…する気力も無い…ずいぶん痩せた…運動もせず…筋肉も衰える…来たるべき日が近いのかな…)
カビだらけの天井を眺めながら…消えたマクロの事を想う…
(子供は…どうなったろう…う…)
イヤな想像に、涙がにじむ…
(まだ…そんな感情が残ってたんだ…フフ…)
次に、笑いがこみ上げる…
「転移…」
確かに、女の声が聞こえた…人影が見える…差し込む逆光に照らされ、顔が認識出来ない…
「パパ…助けに来たよ…」
マクロそっくりの少女の姿がそこにあった…




