3.ドリーム・オブ・ドリーム
「ハイ、カット!」
病院内の共有スペースで、精神病治療の一環として行われる、箱庭の中の寸劇…それぞれの作った設定に基づき、自由に語りあう…今、医師によるストップがかかったのだ…
「ハルさん…いい演技でしたよ…」
「あの…コレって現実じゃ…」
混乱する僕に、先生は優しく諭す…
「分かりますよ…貴方、ユメコさんがお好きでしたものね…でも、残念ながら彼女は、ケンヤさんの奥さんですから…」
(アレ…そこは、ホントなんだ…)
「ところで…マクロは?」
「マクロさん?そんな人…いませんよ…」
そう言う…男性医師の顔は次第に、僕の子を妊娠した…あの娘の姿に…
「ハッ…」
目を覚ます…教室の机に突っ伏して、寝ていた…記憶を辿ると、姉弟アレを見た後の時間軸か…いや…それとも…
「オイ…ハル、早く片付けろよ…学校のシーン終わりだぞ…」
舞台監督の男が、台本を振り回して…指示を出している…ユメコとケンヤ、その他のモブが、机と椅子を運んで行く…
「ハイ!次、屋上の場面…」
ふと前を見ると、無人の観客席が…
(アングラ劇団のリハーサル中…そう言えば、今日が本番の日…何だ?この記憶…)
「じゃあ…擬似姉弟のキス…それを目撃する彼氏のシーン、スタート!」
屋上のセットが完成し…学生服の僕は、扉を開く…
(また…アレ見るのか…やだな…)
そこには、男装したユメコ(いや…リアル男子だ…)と女装したケンヤ(コッチは胸がある…)の姉弟…いや、兄妹がキスをしている…
(今度は舌、挿れてない…)
「え…えっと…レットミースインク…」
思わず英語を付け加えた僕は、扉の前で…次の行動を躊躇する…
モミモミ…
今度は、ユメコがケンヤの胸を揉んでいる…
「もう…ユメったら…」
「いいだろ…次…下も行く?」
女声のケンヤと、物騒な事を言う男前のユメコ…
クチュクチュクチュ…
不適切な音響が、脳裏にこだまする…
「アレ…」
再び目を覚ましたのは、保健室のベッドの上…
「良かった…旦那様…」
ずっと手を握っていてくれた、マクロ…
「次の授業…出れそ?」
「あ…あぁ…」
実際には、行きたく無かったが…この状況も、あまり好ましく無かったので…動く事にした…
「静粛に…新しい先生を紹介するぞ…」
教室のいつもの場所に、落ち着いた僕の耳に、教頭による面倒くさい情報がまた…
「新任教師の山本くるみで~す…」
教壇より小さく、声しか聞こえない…足元に台を置いてもらったのか、顔が見えた…明らかに子供だ…
「ごらんの通り、小学校四年生よ!」
(何の冗談だ…まだ夢を見てるのか?ん~と、ユメコは女で…ケンヤは男…元の世界だよな…)
「もう気付いてると、思うけど…この世界って、狂ってるじゃない?」
(ホウホウ…その通りだ…)
「じゃあ…説明するね…この間の、南海トラフ地震で…日本人全滅したよね…」
(は、初耳だ…)
「でさ…ワタチ達って…もう死んでるのに、それを自覚出来てないんだよね~」
(何となく納得…)
「でさ…もっかい、第二波来るからさ…思い出ちてねっ❤」
ガガガガガ…グラグラグラグラグラ~!
4DXシアターの様な振動…
(コレって現実?それともVR?)
校舎の地面はヒビ割れ…次々と裂け目に落ちてゆく生徒達…パラシュートで、手を振るくるみ先生…
(助けろよ…)
全壊する学校の下方に、さらなる地割れ…
「ハル…」✕3
そう言い、同時に手を伸ばす3人…崖の上の僕…落下するユメコ、ケンヤそして、マクロ…
パシッ…
思わず掴んだ柔らかくて、冷たい手…
ちょっと前まで、ずっと握っててくれた…マクロ…
落下する残りのふたり…
「どうして…私?」
「あの状態じゃ…ひとりしか、つかめ無かった…だから、2つある命の方を…救ったのさ…」
「あ…」
お腹をさするマクロ…




