2.カオス
「で…ハルは、あの女と何もしてないって?」
駅前の公園に、ユメコを家に送り届ける途中…立ち寄った所、責められた…
「勘弁してくれよ…子供なんて…まだ、キスすらした事ない…童貞男が、どうして…」
「は?キスなんか、私と何回もしてんじゃん…」
彼女は、何を言ってるのか…僕は、一度も唇に触れた事は無い…
「ハグ…くらいしか、許してもらってないんだけど…」
「何言ってんの?私…男の人の匂いキライだからさ…ハグさせた事ないよ…キスの時は、いっつも肩だけ抱いてって、言ってたやんか…」
急な関西弁に一瞬引いたが、それはどうでもよく…今は、記憶違いにも程があると言う事…でも…状況が状況なんで…互いの混乱よりも先に、解決すべき問題が山積みだ…
(でも…キス出来るんなら…今、しとくか…ラッキー…)
「ユメコ…キスしよ…」
「バ~カ…」
(アレ?)
納得がいかないまま、彼女を家まで送り届ける…自宅に帰ると玄関に、人影が…
「ハル…」
ケンヤだ…いつの間にかいなくなっていた、一緒にいれば…ユメコとのゴタゴタも、簡潔になったかもだが…
「俺は、信じてるぜ…」
ギュ…チュッ…チュッ…
彼は、僕を抱きしめる…
(唇の生暖かい感触…コレって…ん?)
「だって、ハルを愛してるから…」
「な…何を?」
男に、ファーストキスを奪われた衝撃と、さらに増す意識の混乱…
「いったん落ち着こう…僕達の関係って…」
「今更何を…まぁ姉貴には、隠してるケド…恋人同士じゃないか…」
(待て待て…ユメコが恋人で、ケンヤは親友…それが、僕が今まで生きてきた現実…のハズ…)
「ケンヤ…ちょっと今日は、体調悪いんだ…また、明日な…」
心配そうな彼を、何とか帰らせる事に成功する…
その夜は、さすがに…
(眠れない…見知らぬ娘を妊娠させて…ガードの固い彼女とは、キス経験がある事になっていて…させてくれなかったが…親友とは、恋人だと…あっ…唇の記憶が…ううぅ…)
「お早う…旦那様…」
学校に着くなり、笑顔で出迎えてくれるマクロの顔を見ると…何だか安心する…
(もしかして…マトモなのは、この娘だけなのかも…)
なんて…カオスな思考に囚われた…
滞り無く、午前中の授業を受けた…やがて来る、長い昼休みの過ごし方を考えると、少し憂鬱になる…
キーンコーン…
ため息をつきながら…いつもの姉弟との昼食に向かおうとするが、ふたりはいない…
「旦那様…あのふたりなら、屋上行ったよ…」
(今日は、屋上で食べるって言ってたっけか…まぁいい…)
「お前も来るか?」
「いいえ…邪魔しちゃ悪いモン…」
何気に物分かりのいいマクロを後に、屋上へ向かう…扉の外に、ふたりの声が聞こえた…
「ケンヤ…」
「ユメコ…」
チュク…チュク…ペチャ…ペチャ…
「激しいよ…ケンったら…」
「ユメの舌、いつもより柔らかいよ」
僕が、目にしたのは…舌を絡め合い、唾液を滴らせながらキスをする…彼女と親友だったふたり…しかも、実の姉弟だ…
「ケン…ハルにバレ無いかな…」
「俺達が…姉弟じゃなくて…ホントは夫婦だって事?」
(な…何を言っている…コイツら…ふたりの両親も、小さい頃から知ってるが…紛れも無い姉弟のはずだ…血縁までは、確認出来んが…)
屋上へ入る事無く、そっと背を向け…階段を降りる…
「フフフ…面白い見世物ね…」
下で待っているマクロは、楽しげだ…
「何を知っている?」
「もし、私のお腹の子が…あのふたりの子供だったらどうする?」
質問に、質問で返す彼女は、既に常軌を逸していた…




