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短編

ご飯は大事だよ、と聖女は言った。

作者: 猫宮蒼



 リナ・サレットは男爵家に生まれた。

 父と母、兄と姉がいて、それはもう大層可愛がられてきた。


 ところが七歳になった日、リナの手には聖女の証ともいえる痣が浮かび上がったのである。


 家族は嘆いた。

 聖女として神殿に行かねばならぬ。

 その後は、城で王侯貴族のために働かねばならぬ。


 聖女になどならなければ、城になど男爵家の令嬢が行く事などまずなかったはずなのに。


 栄誉なことだ、と考えられなくもない。

 だがしかし、聖女として働くとなれば、リナはまだ幼いというのに……と両親は大層嘆き悲しんだのである。


 いっそ何事もなかったかのように隠し通してしまえば……と思ったが、悲しいことに神殿の大神官様に神託が下され、聖女が現れたというのは知られてしまった。今更誤魔化すにしても、一介の男爵家が神殿と王族たちを相手に騙しきれるはずもなかったのだ。

 そもそもそこまでの狡猾さをサレット家の者は持ち合わせていなかったし、事をどうにかできるだけの能力も権力もなかったのである。


 家族から離れる事になったリナもそれはもう悲しんだけれど。


 泣いたところで現実は何も変わらない。

 まだ幼いと言えなくもないリナは、早々に神殿預かりとなり、聖女としての力が正常に機能するか確認された後城へと連れていかれた。


 そうしてそこで、聖女としての癒しの力だとか、はたまた国に張り巡らせている結界に聖女の力を付与するお仕事だとかをやらされて、聖女としての力が衰える事のないようにと聖女としての修行なんてものまでさせられて。

 更には城にいる以上、王族や高位貴族と関わるのだから、とそういった事に関する知識やマナーなども学ぶこととなったのである。


 今まで男爵令嬢として、そこまで厳しい教育をされていなかったリナにとっては毎日が目の回るような忙しさであった。

 例えるならば、適温の水にちゃぷちゃぷと浸かっていたところから突然厳しい冷たさの荒波に放り投げられたくらいに生活が一変したのだ。

 厳しすぎる教育に思わず泣く事もあったし、帰りたいと口にすることもあった。


 けれども周囲は聖女なのだから、と決してリナの甘えを許さなかったのだ。


 そうして、泣いたところで現実は何も変わらないのだ、とリナの心に諦めが生じるのはそう遠くない話でもあった。



 聖女だから、という理由でリナは王子との婚約を結ばされることとなった。

 正直リナは王子の事が好きではなかった。顔は確かにいいかもしれないけれど、なんというか高圧的で思いやりのかけらもないのである。

 家で過ごしていた時にも、近所にガキ大将と呼ばれるようなのがいたけれど、正直あっちの方がまだ思いやりとか真心があったとリナは思っている。顔がきれいだと人の心を失うのだろうか、ととても失礼な事まで考えてしまったほどだ。

 だがしかし、リナはその考えを改める。だって自分の家族はそんな事なかったので。



 ともあれ、聖女になってしまった事で望んでいない結婚までさせられなければならない、という人生すべてをかけた罰ゲームのような苦行をリナは強いられる事となったのだ。

 王子の方もこの婚約には不服であったようで、リナを見るたびぼろくそに貶してくれた。


 それでも婚約を破棄だとか、白紙だとかにしないのはそうする事で聖女を城に縛り付けておくためなのだろう。

 幼かったころはわからなくとも、そこそこの年月が経過すればリナにだってそれくらいは理解できる。


 ちなみにこの国での成人は十八歳とされていて、リナは現在十七歳。

 来年には王子との結婚が迫っていた。とても憂鬱である。

 そもそも、聖女としての証が出てから十年。この十年で楽しい事などほとんどなかったのだから、憂鬱であるのも仕方のない話だった。



 ところがだ。


「お前はもう用無しだ。とっとと出ていけ」


 ある日王子にそう言われた。

 聖女としてのお役目はもう果たさなくて良い? と思ったリナは念を押すように確認したが、王子からするとそれはどうやら自分に縋っていると感じたらしい。

 異世界から聖女が降臨したのだ、という話を聞かされて、しかもその聖女の力はリナよりもずっと強力で、またその姿もお前のような貧相なものではなく、まさに聖女として人前に出るのにも相応しいものなのだ、と王子は異世界からの聖女上げ、現地聖女のリナ下げをしつつ語ってくださった。


 今まで王家のために働けたということそのものが栄誉な事であるのだから、と無一文でリナは城を追い出されたのである。

 この十年の労働は、ぜーんぶただ働きであった。


 まぁ、望んでいたわけではないが一応高位貴族が学ぶような知識だとかマナーだとかの授業料で相殺されたと思えば……それでも思う部分がないわけでもないが、まぁ、うん。王家滅べと思う気持ちはあるのだけれども。


 だがしかし、諸悪の根源からの解放である。

 リナの中では聖女だからとかいう以前に王家はすっかりリナを家族から引き離して辛いことや苦しいことを強要してくる嫌な奴、という認識になっていたのであった。


 身に着けていた衣服は質素極まりなく、手持ちの金もロクになかったけれど。


 たまたま道端で突然の体調不良で苦しんでいた女性を助けた事で、お礼にという形でリナは馬車に乗せてもらって懐かしの我が家へと帰宅する事ができたのである。王家は家に帰るための馬車を手配だとか、乗合馬車に乗るための馬車賃もくれなかったのだと考えると、この助けた一般女性の方がよほど人間ができている。



 そうして実に十年ぶりの我が家で、リナは懐かしい家族たちとの再会を果たし、それはもう盛大に泣いた。

 愛しい娘が帰ってきた! と両親もリナに抱き着いてよくぞ無事に……! と泣いた。

 茶会に出かけていた姉や、ちょっと出かけていた兄も帰ってきてから可愛い妹が帰ってきたと気づいて即座に抱き着いた。

 男爵家全員が涙の海に沈んだのである。


 リナが帰ってきたのは嬉しいけれど、しかしあまり健康そうに見えないのが気にかかって、両親はちゃんとご飯を食べているのかだとか、睡眠は? だとかそれはもう色々と聞いた。

 そうして聞かされる聖女としての生活に、両親はまたもや泣いた。


 リナが聖女になった当時はまだ七歳。そんなお子様にさせていい暮らしじゃない。

 生きていくために何でもしないといけない平民だとかであればまだしも、リナは身分が低いといっても男爵家の生まれで、わざわざそんな苦行のような暮らしをする必要本来はなかったのに。


「でも、帰ってこれたから。それに、ご飯がとても美味しいの! お城で出されたやつよりも!!」


 たくさん苦労してきたのね、という気持ちは確かにあった。

 てっきりお城でそれなりの待遇は受けているだろうと思っていたのに、しかし実際は自分たちの暮らしの方が余程いい暮らしだと思えるくらいのもので。

 何も知らずにのうのうと……という気持ちにもなって、リナの家族たちは何とも言えない表情を浮かべていたのだけれど。


 流石にその言葉は聞き捨てならなかった。


 気を使って言っているわけではなさそうだ。むしろ輝かんばかりの笑顔は本心であるとも。

 だがしかし、男爵家の本日のご飯は別にご馳走だとかではない。

 娘が帰ってくるとあらかじめわかっていたならともかく、そうではなかったのだ。

 いつも通りの、何の変哲もない普通の食事である。


 だがそれが、城で出されたご飯よりも美味しいとリナは言う。

 家族に気遣って、というものではないのは早々に察した。


 聖女としての生活は既に聞いたけれど、両親は恐る恐る更に深淵を覗きこむように問いかける。

 普段一体どんなものを食べていたのか、と。


「え? うーんと、何か黒くてかたいパンとか、野菜がちょーっとだけ入ったほとんど味のしないスープとか、お肉もたまに出たけどスジばっかりで噛むのがやたら大変なやつとか……そういうのが大体いっつも冷めた状態で出てくるから、温かい食事ってとっても久しぶり!」

 にこっ! と笑って言うセリフではないが、それを聞いた家族たちは思わずテーブルに突っ伏した。行儀が悪い? そんなこたぁいいんだよ。


 そっ、そんな貧相な食生活を今までずっと……!? と思って改めてリナを見やれば、確かに納得できる感じだった。

 なんというかリナは小柄である。十七歳と言われても、すぐに信じられない程度には。

 見た目で年齢を言ってみろ、と言われたならば今のリナは精々十三歳から十五歳くらいの間にかろうじて見えなくもない……といったものだ。

 いや、十五ならばもうほぼ大人と同じくらいに育っている者も中にはいるので、それを考えるとリナは下手すると十歳前後とか言われてもおかしくないくらいに育っていない。


 男爵家の者たちにとってリナは可愛い可愛い娘であり妹なので、小さいというのは事実ではあるのだが、しかし冷静に思い直せば実年齢よりも幼いというか育っていない。その事実に気付いた途端、家族は再び号泣した。


 王家め……うちの可愛い可愛い娘を聖女だからって強引に連れ去ったくせに、ロクな食事も与えていなかっただと……!? 許せんぶっ殺してやる!

 そんな気持ちになったけれど、しかし現実問題それを実行するのは難しい。

 何せサレット家は別に騎士の家というわけでもなく、武力とかそういうものはないに等しい。

 怒りに任せて突撃かけても、まぁ向こうの騎士にあっという間に拘束されて牢からの王家に危害を加えようとした罪で処刑コースまっしぐらである。いくら王家が悪かろうとも。



「思うのですが、王家の財政はもしかしなくても相当に悪いのでしょうね。だって十年働いて結局その報酬もありませんでしたし、食事はみすぼらしいし。正直先があるとはとても思えません」


 温かいご飯おいしーい! とにこにこしながらも、リナは正直にこの国の先行き大丈夫? とばかりに言った。実際軽い扱いを受けていただけであるのだが、リナはその事実に気付いていない。本気で国を心配している。

 心配といっても、何とかしなくちゃ……! という方向ではなく、沈む泥船にいつまでも乗ってるのはどうかと思うなぁ、という方向での心配だった。

 だって王家で出された食事より男爵家の方がグレードが上なので。

 実際王家の食事はリナ以外は豪勢なものだったのだが、リナは一緒にその食事の場にいたわけでもないので知る由もないし、与えられた服だってどれもこれもが質素極まりないもの。王家の人間は体裁を保つためにどうにかしているのだろうと思ってはいたが、それでも新しい服を仕立てるのも相当苦労しているんだろうなぁ、とリナは思っているのだ。実際は毎月のように新しいドレスを仕立てたりしているのだが。


 だがしかし、両親も兄も姉も、リナのそんな間違いを訂正してあげようとは思わなかった。

 王家の財政は問題なかろうとも、それを指摘すればつまりリナが蔑ろにされていたという事実を突きつける形となってしまう。

 非情な現実を何故に可愛い娘に突きつけられようか。兄も姉も同様に、そんな辛い事実を指摘させて、どうしてそんな事言うの? お兄様もお姉様もいじわる! なんて言われたら立ち直れない。

 それならいっそのこと、自分たちも知能指数を意図的に低下させて、そうだね王家危ないかもしれないね、と乗っかることにした。

 王家とリナならサレット家の人間は圧倒的にリナを支持する。王家への忠誠? 知らん知らん。


「最近は隣国の方が何かと明るい話題が多いようだし、いっそそっちに移り住むのが良いかもしれません」

 なので、リナがそんなことを言い出したのに乗っからないはずもなかったのである。


 サレット家は領地を持っているような立派な家でもない。爵位はあれど、それ以上でも以下でもない。父の仕事もどちらかといえば下っ端役人みたいなもので、言っちゃなんだが代わりはいくらでもいる。

 だから、例えばサレット家が国を出るとなったとしても、お願い行かないで! と縋りつかれる事はまずない。ちょっと前なら聖女の事もあったから、国に残るように留められた可能性はあるけれど、しかし異世界から別の聖女が来たのであれば、そしてリナが城から追い出されたのであれば、今の時点でサレット家を国に留めて聖女の枷としておこう、と思う者もまずいないだろう。

 何せ将来的に国を担う王子が直々にリナを城から追い出したのだから。


 兄も姉もまだ結婚もしていないので、この国の他の貴族としっかりがっちり根付くような縁を結んだりもしていないし、そういう意味ではとても身軽。使用人だって大勢いるわけではないので、すぐさま話し合いを開始して、今後の身の振り方に関してを決めるにもそう時間はかからないだろう。


 サレット家の寄り親的立場の貴族の家についてはどうしたものかと思ったが、リナが城から追い出された事でそちらもサレット家の存在を若干疎むような事になっていた。追い出された聖女を囲う派閥とか、王家からすればいちゃもんつけるのに打ってつけっぽいので、まぁ、気持ちはわからないでもないのだ。

 今まで世話になっていたのもあるし。

 だがそれはそれとして、だからといっていつまでも踏みにじられる立場でいろ、とこちらに言われるのもどうかと思うわけで。


 故に、サレット家がこの国を捨てて隣国へ行こうという結論に至るのはすぐの話であったし、引き留めるような者もいなかったからこそ。


 彼らはあまりにも身軽に、あっさりと隣国へ足を踏み入れる事ができてしまったのである。


 隣国へ行く事にした決め手は勿論リナの言葉もあるのだが、その情報はどこから? と聞けば王子がぼろくそに罵っていたから! との事だった。

 あの王子、自分より優れたものを認めようとしないために、良いものは大体ぼろくそに貶すという悪癖があった。人としての器がちっせぇ……などと思っていても面と向かって本人に言ってはいけない。

 自分より下だと思ったものもぼろくそに貶すのだけど、貶し方の方向性が異なるので十年も関わる羽目になったリナからすれば、隣国はよさげ、と把握するのも容易かったのである。



 隣国は、少し前に色々とごたごたしていたようだがそれもここ数年でだいぶ落ち着いてきたらしく、その影響もあってか国内は様々な変化が訪れていたようだ。

 故に、ほかの国からも今ならここで一旗揚げられるのではないか? と思った者たちが集まっていて、リナたちが隣国からしれっとこちらの国に住み着いても特に目立つような事はなかった。


 身分が低かろうとも隣国で貴族だった人間が一家総出で引っ越してきた、となれば普通はちょっとくらい注目されそうではあるのだが、本当に一切誰にも気にされなかったのである。

 まぁどうせ隣国での身分などこっちじゃないようなもの。どのみち御大層なものでもなかったし、という事でサレット家は皆当たり前のように平民としての生活を開始し始めたのである。


 父は元々国では下っ端とはいえ役人として働いていたので、その経験を活かした職に就いた。

 母は刺繍が趣味だったのもあって、その手の仕事を探して無事見つけ、ある工房に就職した。

 兄は剣術を活かせれば……と手始めに冒険者として登録し、そっちでメキメキと頭角を現した。

 姉は、たまたま募集していたからという事でしれっと平民たちの学校の教師として働き始めた。

 上位貴族に対する教師となれ、となれば無理だけど、平民向けなら簡単な文字の読み書きや計算の仕方、ついでにお貴族様と関わる際の最低限のマナーだとかを教える事になるだろうけれど、それくらいなら元男爵家の令嬢だ。どうとでもなる。


 サレット家一同、皆隣国に移住してからあっという間に職を見つけてきたのである。これで食いっぱぐれる事はない。十年間のリナの食生活を聞けば聞くほど悲しい事にしかならなかったので、家族は隣国に移住してもご飯だけはちゃんとしたものを食べられるように……とそれはもう頑張って職を見つけたし働き始めたわけだ。


 リナもまた仕事を探しに出たのだが、家族からはもうちょっとゆっくりのんびりしていてもいいんだよ? とあまり働くことに乗り気ではなかった。大体十年無給で働かされた娘であり妹だ。ちょっとくらい休んだって罰は当たらないだろう。

 リナが聖女として城でこき使われていた時だって、父は普通に働いていたとはいえ、姉や兄はのびのびと過ごしていたのだ。だからこそ余計になんていうかこう……今まで妹が頑張ってたんだから、今度は自分が頑張らねば……!! となったのである。


 聖女としてお城でそれなりに大切にされていたと信じていたのに実際は奴隷のような待遇。


 家でごろごろだらだらしていた事もある兄と姉が、謎の罪悪感に押しつぶされるのは、まぁ、仕方のない事だったのかもしれない。



 確かに十年間ただ働きをする事になったとはいえ、リナもだからといって新しい土地での生活を、最初からだらだら過ごす事はしたくなかった。

 家族が皆頑張ってるのに自分だけのんびりするのはなぁ……という気持ちにもなったのである。

 あと、なんていうか優しさが時たますごく沁みるので。

 そんな時に自分だけ働いていない、となると何かこう……自分がとても駄目な人間に思えそうな気がしたので。


 とはいえ、リナには特技と言えるものは特にない。

 ずっと聖女として働いてきたのでそういうのはできるけれど、それ以外となると……といくつかのお仕事募集の貼り紙だとかを見ても、ピンとこなかったのである。

 相変わらず自分の手には聖女の証があるので、それならいっそ、とこの国の教会にリナは足を運び、ちょっと聖女としての経験ならあるので簡単なお仕事とかありませんか~? と売り込みに行ったのである。


 聖女というのは必ずしも各国に出現するわけではない。

 現れたのであれば、神託が下ったりするけれどそれでも他の国からやって来た聖女に関してはそういった神託も下る事はない。

 だからこそ、突如現れた野良も同然な聖女に教会関係者が驚くのは無理からぬ事であった。


 えっ、聖女? お嬢ちゃんが?

 ちょっと証拠見せて? あっ、ほんとだ証の痣がある!

 って、まってでも神託はなかったんでしょう? えっ? 隣国で聖女やってた?

 どういう事? ちょっと詳しくお話聞かせて?


 と、シスターも神官たちも囲め囲めとばかりにリナを囲んでお茶とお菓子を用意して、詳しくお話聞かせてくれるかなー? とやらかした。

 リナの年齢は十七歳だが、この国の人間から見るとどうしてもリナは十二歳くらいにしか見えなくて、対応がとてもお子様仕様なのはどうしようもない。



 結果として、教会の人たちはリナの身の上話に如何ともしがたい感情を抱いた。


 えっ、十七歳!? 十七歳っ!?

 と、何回かは聞き返したし聞き直した。だってどう見てもそんな年齢に見えなかったので。

 そして城での扱いに納得したのだ。

 要するに、ちゃんと栄養を摂取できなかった結果である。

 聖女なのに! 聖女なのに!!


 お隣の国どうなってんの!? とシスターたちは思ったし、神官たちもまた聖女だぞ!? と取り乱した。


 ロクな食事も与えられず、ついでに十年間ただ働きと聞いて、数名のシスターはふらりと眩暈を起こし危うく倒れかけた。

 は? 無償奉仕とか確かに教会もやりますけど、でもそれはあくまでも助け合いの一環でささやかなものである事が前提で、確実に報酬を支払わないといけないような仕事をさせておきながらの無償奉仕の強制は教会でも有り得ないんですけど!?

 とブチ切れである。


 大体無償労働での奉仕活動というのは、基本的に余裕があるものが人助けの一つとして行う手段である。

 明日を生きていけるかもわからないくらい余裕のない相手にそれを強いれば、反発は当然だし無駄に争いが発生しかねない。

 貴族が寄付をするのだって、余裕があるからこそであり、金がなくとも時間や体力に余裕があるものが労働の手伝いをするだとか、ともあれゆとりのある者がやるからこそなのであって。


 聞けば聞くほど隣国信じらんない……となるのは当然であった。


 しかも異世界から聖女がやって来たらしく、そのせいでお払い箱になったとか、数名の神官はあまりの出来事に泣いた。こんな小さな子がそんな不憫な目に遭うとか……おぉ神よ、慈悲はないのですか……と大いに嘆いた。


 だがしかし考えようによってはその異世界の聖女によってリナは解放されたのだ。

 今は家族と一緒にいられるから幸せなんですよ、と笑うリナに、教会で働くお兄さんもお姉さんもハンカチ片手に「良かったねぇ……っ!」と涙が止まらない。

 実際同年代のはずのシスターや神官もいたのだが、あまり成長していない見た目のリナはどうしたって年下に見えるし、そのせいで余計妹みが強かったのである。


 教会で働くシスターも神官たちも、基本的にちっちゃい生き物が何か一生懸命頑張る様を見る時はつい無意識のうちに応援しがちな性質のせいか、リナの十年無償労働の話の後に、今度は家族の役に立ちたいから、なんて理由でお仕事を探してるんです、とか言われたら。


 はいそこの神官長さん、大神官様呼んできてー。

 大至急行ってきまーす!


 となるのである。

 大金を稼ぎたいわけではなく、正当な労働に対する報酬であればいい、というとても人として当たり前の言葉におぉ神よ……と祈るシスターに神官たち。

 安心して、きちんとしたお仕事を斡旋するから! と力強くどんと胸を叩いて言う神官のお兄さん。


 それを見てリナは、この国の教会の人たちはなんていい人たちなんだろうと感動していた。

 前の国では、正直あまり関わる事がなかったとはいえ、そのちょっと関わっていた教会関係者の事はあまり好きになれなかったので。

 あと、お菓子とかくれたあたりで好感度が上がっている。

 前の国の教会とか、お菓子なんて一切出なかった。

 やっぱあの国、もう経済的に駄目だったんだろうなぁ……とリナは本気で思っている。


 単純に一部が私腹を肥やしているだけなのだが。



 紆余曲折、最終的にリナは神殿で働く事となった。

 聖女としての力が使えるのだ。即戦力にもなろうというもの。


 リナの境遇に割と本気で同情した神官長は貴族が金にものを言わせて聖女を私物化しようとする企みを完全シャットアウトするべく色々と暗躍した。大神官様もリナの前の国での扱いを聞いて、流石にこれは……と思った。

 リナはさておき、神官長も大神官も気付いている。あの国が貧乏だからとかではなくて、リナが男爵家の娘であった事で蔑ろにされていたのだろうと。男爵家など下手をすれば平民にちょっと毛が生えた程度に思われる家も決して少なくはないのだ。たとえ男爵家であっても大きな商会を経営しているだとか、はたまた長く続くが故に様々な事情を抱え込み、結果余計な権力を持たずあえて、といった家だとかであれば。

 扱いはもうちょっと別になっていたはずなのだが、リナの家はそういったものもなかったので。


 かろうじて貴族だけど限りなく平民に近しい存在として、王族も高位貴族たちも、リナの存在を軽んじたのだろう。

 そもそも成長期にロクな食べ物を与えずに育てというのも無理な話だというのに、まともに育てるつもりもないくせにしっかり育たなかったからと貧相だなんだと陰で罵るあたりどうかしている。


 隣国の教会は恐らく聖女を王家に売り払った事で更なる私腹を肥やしでもしたのだろう。

 リナは聖女でありながらも、しかし身分は低いので。

 本来ならば恭しく接するべき存在であったとしても、しかし身分は自分たちよりも下。

 本来自分たちの上に置かねばならぬ存在を、身分が下であるが故に軽く扱って良いと思い込みそうして本当ならば決してそんな扱いをしてはいけないはずの相手を貶める事に、歪んだ愉しみを見出したのだろう。


 恐らくあの国そう長くないんじゃないかなぁ……とこの国の神官たちは思ったし、異世界からの聖女について気にならないわけではなかったけれど。


 ここでもまたリナをそんな風に扱えば、こちらの国も色々と危うい。

 だからこそ、教会は自らの権威を失墜させる事のないように目を光らせ、リナの身柄は全力で保護する事と決めたのである。



 ちなみに神官長はこの国の第三王子である。

 故に、第三王子経由で王家にも聖女の事は伝えられたし、隣国での聖女の境遇もばっちり伝達されていた。


 確かに、聖女が王家と縁付けば色々と利点がある。

 だが、聖女の意思を無視してそういった事を強いた場合、神の裁きが下るともされていた。

 天罰としてわかりやすいものであればまだしも、時にはひっそりとしすぎていて本当に神の裁きかどうかも疑わしいものもあったのだけれど。


 どうやらお隣の国は、過去にあったそういった事例を都合よく忘れ去ったらしい。



 それはそれとして、神官長は一仕事終えたリナにお菓子を出して、隣の国であった出来事の色々を聞き出していた。きちんと裏を読める相手が聞けば単純に聖女が迫害されてるだけなのに、聖女はそれに気づかず本気であの国の経済状況が危ういのだと信じているので。

 神官長にとってはその微妙な差が面白く、また上の兄たちにも大ウケであったのだ。

 聖女が大真面目に隣国の事を心配すればするほど、王子たちの腹筋は鍛えられていくのである。



 聖女の境遇、というか、隣国の経済状況が色々危ういらしい、という噂は何も王子たちだけが広めたわけではない。


 リナの家族たちもまた、隣国から引っ越してきましたこれからよろしく、といった具合に周囲にするっと溶け込んで、隣国ではどんな暮らしを? みたいな世間話の際に、一切を隠す事なくぶっちゃけた。


 リナが聖女である事はもうこの時点で教会が後ろ盾になってくれていたので、隠す必要もないなとばかりに父も母も、兄も姉も堂々と暴露したのだ。


 いやぁ実は向こうの国は色々と経済的に危ういのではないかと思いまして。

 えぇ、向こうでは男爵家だったんですよ。ですがその……城で聖女として働いていた娘が帰ってきて言うんです。お城で食べたご飯より我が家で出された食事の方が豪華だと。

 信じられます? 城ですよ? 城で出された聖女の料理が、男爵家の別段祝い事があったわけでもない普通の料理より劣っていたというのです。

 一体どんなものを食べていたのかを聞けばまぁこれが酷い。

 こっちの国の平民だって滅多に食べないような黒くてかたいパンが普段出されていたというんです。

 スープなんかほんのちょっとの野菜くずが入っただけの、塩気もほとんどないような味の薄いものだったらしくて。

 肉に至っては出なかったわけではないけれど、出たら出たでスジばかりで噛み切るだけでも一苦労なものだというんです。

 王家ですよ王家。王家で出された料理が常時それだったのです。

 我が家ですら出さないような貧相なものですよ、えぇ。

 てっきりお城でそれなりの待遇だろうと思っていた可愛い娘がまさかそんな……だからね、決めたんです。

 今はまだ体裁を保っているとしてもいずれは破綻するだろう王家に仕える価値もない。いずれ、きっと馬鹿みたいに増税しないとも限らないですし……


 しかも何がひどいって、食事もですけど娘は聖女として十年城で勤めていたのに報酬が一切でなかったんです! ね? 増税もいずれは……って言われたら否定できないでしょう?

 こっちも生活かかってるし、家族は大事なので。


 えぇ、こっちの国は良いところですね。働いたらその分報酬は出るし、評価もきちんとされている。

 それに何よりご飯が美味しい! 娘もそれに大喜びしておりますよ、はっはっは。



 ――と、まぁ。

 そんな感じでぶちまけたのである。

 母も兄も姉も、大体父と似たような感じの事を言っていた。それぞれの職場で。


 噂というのは広まるものだ。

 それが、面白おかしい気配があればなおの事。


 自国の王家のネタであれば流石に大っぴらに広めると、不敬であると処罰される可能性も出てくるけれど、しかし隣国から引っ越してきた人の体験談。広まらないはずがなかったのだ。

 隣国に旅行に行こうかしら、なんて考えていた貴族はあらあの国そんなに経済状況が厳しいの? では、下手をするとぼったくられるかもしれませんね、なんて言って旅行に行くにしても他の国にいたしましょうと行先を変更したし、あの国と商売の取引をしようと考えていた商人たちもまた、もしその話が本当なら一見すると旨い話であっても裏があるんだろうなぁと勘ぐって取引数を減らしたし、仕事を探しに行くにしてもあの国はダメそうだなぁ、なんて感じで出稼ぎに出る人も減った。


 経済的に厳しいのであれば、物価もそのうち上昇しそうだし、治安も悪くなりそうだし。


 危険かもしれないなぁ、と思えるところにわざわざ足を運ぶ理由がないのなら、行くはずがない。


 更には、隣国の貴族と婚約をしていた一部の家が婚約の見直しに入ったりもした。


 こっちに嫁いでくるのであればまだしも、向こうに嫁ぐだとかであれば。

 流石にそのうち崩壊するかもしれない国に、自分の娘を嫁がせるのはいかがなものかと思う者はそれなりにいたのである。



 聖女の仕事は大半が怪我人の治療であったり、はたまた病気の回復を祈るものであった。

 病気に関しては治癒の奇跡がそのまま通じるわけではないので、回復を早める祈りになる。

 隣の国は聖女のありがたみをすっかり忘れていたようだけれど、しかし今まで聖女がいなかったこの国では、たかが祈りというなかれ。今までは中々快方に向かわなかったものも少しずつではあるがようやく良い方向に転がった事で、聖女の地位は確立されていったのであった。

 目に見えてわかりやすい奇跡が起きるわけではないのだが、今まで聖女がいなかったときと比べるとそれなりに差が出たのは確かなことで。


 その他、国には魔除けの結界が張られているのだが、こちらは聖女の力だけに頼っているものではない。

 基本は国の魔道士たちが作り上げているものの、その魔除け効果は国によってまちまちである。

 だが聖女がいる国は、その結界に聖女の力も付与させてより強固なものにするのだ。


 結果として、国内に侵入しようとする魔物の数が減り、治安が多少向上した。

 明らかにとてもわかりやすい結果が出たわけではないのだが、それでもこの国にとっては聖女が隣国からやってきてくれた事は、確かに喜ぶべきものであったのだ。


 リナもこちらの国に来てから、毎日聖女として働いているが、前の国と比べると圧倒的にやりがいがあった。怪我を治せば感謝され、結界に力を付与すれば労わられる。何より休憩時間にお菓子を差し入れてもらったりするのだ。そしてそれがとても美味しい。

 前の国のお城で食べていたようながっかりするような味の食べ物はこっちの国では一度たりとも出てきたことがない。


 美味しいご飯がやはりよろしかったのか、ほんの数か月でリナの身体には肉がついてきて、ようやく多少は年相応に見えてきた気がするな……? となってきたのだ。まぁ、身長は同年代の女性と比べて低いのだけれども。


 あの国にいたらいずれ栄養失調で倒れていたかも……と今更ながらに思うようになっていて、だからこそそんな未来が訪れなかった事にリナは感謝するのである。神と、自分たちを受け入れてくれたこの国と、あとは美味しいご飯に関する様々な人に。



 ――さて、リナを追い出した後の国はというと。


 異世界から聖女は確かに来た。リナと比べると美人だし聖女としての力も申し分ない。

 異世界から来たのであれば、この世界には寄る辺がないとも言える。だからこそ王子は聖女を保護するという名目で聖女と婚約を、なんて言い出したものの。


 異世界からの聖女はそれを望まなかった。

 どころか、三か月ほどしたら忽然と姿を消したのである。



 この異世界の聖女、別に事故で異世界に迷い込んだとかではなく、なんとこの世界の神様直々に頼まれて一時的にやって来たに過ぎなかった。

 折角神が加護を与えた聖女が、よりにもよって奴隷のように扱われているとなれば神だってそりゃあいい気分はしない。かといって、直接的に天罰を与えようとしても力加減を間違えば思った以上の大惨事になってしまう。


 国ごと亡ぼすか、となればそれはそれで構わないのだが、流石にまだそこまでするほどの事でもないと判断したために、異世界から聖女の適性が強めの女性と交渉して、あくまでも一時的に来てもらったに過ぎなかったのだ。


 神の目から見て、王子のみならずこの国の王家やその周辺、教会関係者あたりも割と腐っていた。

 この手の人間は、今使っている道具よりも更に上のよりよい道具があればあっさりとそちらに乗り換える。

 実際にリナよりも強い聖女の力を持つ彼女が降臨したらあっさりとリナを追い出したのだから、神の目論見通りであった。


 異世界の聖女には、最低でも三か月ほどはこの国にいてほしいと頼んであった。

 すぐに帰られて、やっぱりリナをまた城に……となればリナが救われる事もないし、ある程度の時間を稼いでほしかったのだ。


 勿論、異世界の聖女がこの世界にずっといたいな、と思ったのであれば好きなだけいてくれても構わないと神は伝えてあったけれど、聖女はきっかり三か月経過した時点でサクッと元の世界に帰っていった。


 曰く、ご飯が美味しくなかった、らしい。


 リナと違い、こちらの聖女は丁重な持て成しを受けていたのだが、しかし異世界の料理事情が明らかにこちらの世界を上回っていたようなのである。


 確かにお城で出された料理はそれなりに美味しかった。

 けれども、三日で飽きたのだ。

 何せ味が似たり寄ったり、バリエーションも豊富とは言い難い。

 家畜でもあるまいしお前らよくこんな毎日同じようなご飯で満足してるのね? とは流石に面と向かって言わなかったけれど。


 聖女から見て、王家の連中も高位貴族も、毎日同じ食べ物ばかりを食べ続けているようにしか見えなかったのだ。正直自分の世界の犬猫の方がまだ餌のバリエーションあるんじゃないかな、とかド失礼な事も平然と思っていた。


 何せこの聖女、元の世界では大都会で暮らしており、自国の料理のみならず海外の料理を出す店も立ち並ぶようなところにいたのだ。今日はあの料理が食べたいな~なんて思えば軽いフットワークでお店に行くし、本場の味が食べたいとなれば気軽に海外旅行に行く程度には裕福な家の出でもあった。

 間違いなく、この国の王族以上に舌が肥えていたのである。


 綺麗なドレスや宝石だとかも、興味がないわけではなかったけれど。

 だがしかし、コルセットで内臓や骨格を押しつぶさんばかりに圧迫させてまで着たいわけではないし、宝石だって別に、向こうの世界にも普通にあるし。なんだったら自宅にそれなりにあるし。


 聖女にとってはこの異世界、とてもかったるい三か月強制旅行くらいの気持ちでしかなかったのだ。

 娯楽だってあっちの世界と比べたら失礼なくらい少ないし。

 王子が何やら必死にこちらを落とそうとしているようだったけど、それも鬱陶しいことこの上なかった。


 確かにこちらの世界では聖女の身分など平民でしかないし、向こうの世界でもそれはそうなのだけれども。

 だが、生活水準はとても高く、また家の関わりで有名人だとかとも知り合いであった聖女の目から見て、王子という存在は。


 とても厳しいことを言うようだけれど、中の下くらいのアイドルレベルでしかなかったのである。

 その程度の容姿の相手なら、知り合いにたくさんいるしそれ以上の優れた外見をお持ちの男性とだって聖女は向こうの世界じゃそれなりに知り合いだったので。

 というか、もっと言ってしまえばそんな素敵な男性の一人と結婚の約束までしていたので。


 お前程度が生意気にも言い寄ってんじゃねーよ鏡見ろ鏡、とか言い出す寸前でもあったのだ。


 せめて内面が人として尊敬できるとかであれば良かったが、そうでもなかったし。

 であれば、聖女としてはくそうざい野郎に付きまとわれている三か月強制異世界生活は苦行でしかなかったのである。

 ただただ神様に、聖女を助けたいから時間を稼ぐだけでいいの、王子の嫁とかになる必要とかもないからぁ! と泣きつかれたのを、何か可哀そうすぎて引き受けただけ。人助けをして徳を積もう、とか思う事もあったけれど、異世界の神様を助けたらどれくらい徳が積めるんだろう、とかくっそどうでもいいことを思ったが故に引き受けたに過ぎなかった。

 ま、聖女もそこそこ暇をしていたので、三か月くらいならまぁいっか、というのもあった。


 完全に暇を持て余した権力者の戯れである。

 だがそれで助かる者がいるので、神からすれば文句はない。


 個人的に聖女としては、王子とかどうでもいいからそっちの現地の聖女リナの方が気になるくらいだった。

 聞けば七歳のころから聖女として働き始め、十年、十年もこのくそみたいな王家のために働いてきたというのだ。忍耐力ありすぎでは。聖女だったら一か月もしないうちに内心で切れて、さてこいつらどうやって追い落とそうと画策するレベルだというのに。

 しかも自分がこちらの世界に来たからお前は用無しだと追い出された、のは神の目論見通りなのでそこはいいが、王家は今まで十年も働かせておきながら正当な報酬を支払っていないのだそう。


 あー、それ有能な人材が国から出ていくのにダントツの理由じゃない、と聖女はげんなりした。

 ボランティアっていうのは自分の意思でやりたい時にやるから本人もやる気があるのであって、やる気のないやつや余裕のないやつに強制したところでロクな事にはならない。

 これでせめて報酬がちゃんと支払われるなら、そこで思いとどまってもうちょっと頑張るかぁ……と次の給料日までまた頑張ろう、となるのならまだマシだが十年分の給料未払いとか正直ぶっ殺されても文句言えない案件。


 聖女の下した判断は、王家無能の集まりかよ、というものの他に、そこまで酷使されてるのに耐えてた聖女もちょっとおバカなの? といったものだった。

 聖女の中でのリナのイメージは、ちょっとお馬鹿なポメラニアンであった。つぶらな瞳でへっへへっへと舌を出し、飼い主に翻弄されても遊んでもらっていると思って喜んではしゃぎまわるやつ。


 おバカわいい現地産聖女ととことんくそみたいな王子とならば、そりゃあ聖女の関心もリナにいこうというものである。



 リナよりも更に強い力を持ったスーパー聖女は、自分の力の一部を片手間で王家に使いリナに意識が向くのを阻止しつつも、リナの動向をそっと聖女パワーで探ったのである。もうこの女チートが過ぎると言ってはいけない。


 その結果、お隣の国でそれなりに幸せに暮らしているのが発覚して聖女はにっこりした。

 ちなみにイメージはポメラニアンだったが、実際はコーギーかしらね、と聖女はリナのイメージを更新しなおした。どちらにしても王子と比べれば可愛いので良し。


 ついでにどうやら聖女やその家族がこっちの国での生活だとかをしれっと話しているのも聖女は把握した。

 あーあ、聖女を粗雑に扱ったから……としか思えない。

 経済状況がだいぶやばいと噂されている。別にそんな事はないのだが、しかし王家の人間を見る限りどうしようもないのばかりなので、まぁ今はまだしもこのまま数年が経過したら確かに危ないんだろうなぁ、とは聖女も思った。政治経済が苦手分野の聖女ですら思ったのだから、相当である。


 隣国ではこちらの王家の事を面白おかしく噂しているので、知らないうちにこの国の評判がズンドコ下がっている。隣国内だけでの情報ならまだしも、お隣の国には他の国からの商人だとかもいるし、他の国からちょっと留学しに来ました、なんて貴族もいるし、つまり他の国から来た人間がたくさんいるのである。


 そんな人たちにまで噂は広まっているので、この国実はやばいんじゃない……? というのは着々と世界に広まりつつある状況だ。


 わー、詰んでるー。と聖女は草を生やす勢いで爆笑した。


 仮にこの噂をこの国の連中が知ったとして、そんな噂事実無根ですぅ! とのたまったとしても。


 経済的な危機はそうかもしれないが、リナの食事が貧相であったのはどうしようもなく事実だし、ましてや給料も支払っていなかったのも事実。その上で新しい聖女が来たからお前いらね、と追い出したのだって事実なのだ。


 そしてリナは自分の身に起きた事を脚色なしで語り、王家の経済事情を本気で心配しているのだ。貶めようという意思はない。リナの家族はまぁ、分かったうえでやっているようだけど、別にこの国の王家憎しで貶めてやるというよりは、まさか王家がそこまで困窮していたとは知らず……娘には苦労を掛ける事になって……という方向性でやっているので、罪に問うにも難しい。だって向こうは娘、もしくは妹がとても苦労していたという話をしているだけで、意図的に王家を悪く言おうと捏造しているわけでもないので。


 それに、その話題だって別に誰も聞く気がないところに無理矢理やってきて強引に聞かせるわけでもなく、何かの世間話の流れで言える時にぽろっと口に出して相手の興味を引いたうえで、相手が聞きたいと望んだ時にだけ語っているのだ。

 これを悪意を持って流布した、とはとてもじゃないが言えない。


 そして隣国の人たちはただ単に面白おかしくその噂を楽しんでいるだけではなかった。

 商人たちはその噂をうまく使ってこちらの国の商人たちとの商売で交渉を有利に運んでいたし、貴族たちもまたその噂でもって、聖女の恩恵を受けておいて存在を蔑ろにしているなんて恩知らずで礼儀知らずだとお隣の国の貴族たちを、まさか知らなかったなんてありえませんよねぇ? と知ってたならどうかと思うし知らなかったならどれだけ無能なのかと暗に突いたのである。


 婚約を結んでいた貴族の家などは、そちらの国に娘を嫁がせても不幸になるのが目に見えているし……と婚約の解消されたところもあった。

 解消を言われた家からすれば青天の霹靂もいいところなのだが、でももうこの国のやばさは広まってるからねぇ……と言われてしまえば一介の貴族ではどうにもならない。

 王家が率先して火消しに走らなければならない噂を、ただの貴族の家が代わりに奔走したところでどうなるものでもないので。


 まぁ火消しも何もほとんど事実なのだが。


 こちらの国とあちらの国は一応それなりに表向き良好な関係を保ってきていたのだけれど、その関係が断ち切られる事になるのは時間の問題だった。


 お隣の国でリナは教会に身柄をしっかりと保護されているので、今更こちらの国がやっぱその聖女うちのだから返して! なんて言ったところで無理な話だ。どうしてもというのならまずそもそも十年分の報酬を支払えという話だし、それを払った上で今後の報酬も払わなければならない。

 今までただ働きをさせていた王家が、果たしてそれをきちんとするかとなると……とても微妙である。

 今までがタダだったのだから、普通に報酬を支払うだけでもさぞお高く感じる事だろう。


 本来ならばそれが当たり前であるはずなのに、この国の連中割とダメダメなので、そのお高いと感じる報酬を払い渋るのはそう遠くない話だろうし、もともとリナの事など軽く扱っていいと思い込んでいたのだから扱いはきっとすぐに前のように戻ってしまうかもしれない。

 更には王子と再婚約とまではいかなくとも、次は逃げられないように――逃げるも何も追い出したのはこちらなのだが――リナの自由を封じる可能性すら出ている。


 まぁ、この国の王家が今更何を言ったところで、他国の教会がリナを差し出す事はないだろうしリナやその家族が自分からあの国に戻るなどと言い出す事もないだろう。

 それにどうやら教会のみならず、あの国の王家が聖女を保護する事に一役買っているようだし。


 こちらの国の王家と違い、向こうの国はリナを聖女として扱うがしかし王家と強制的に縁づかせようとはしなかった。それをやるとこちらの国と同じなのだと思われるのが明白だからだ。

 だからこそ、この国とは違うのだというのを示すためにあちらの国はリナを無理矢理城に留めたりはせず家族と生活させているのだ。

 こちらの国の噂と相まって、あちらの国の王家の評判はそれだけで上向く。


 情報戦といい人の質といい、どう見てもあちらの国のが上である。

 王子としてはそれが気に入らないらしく、しょっちゅうあちらの国の悪口を言っているが完全に負け惜しみでしかない。


 王子がギリギリ自尊心を保っていられるのは、異世界からの聖女が今現在王家にいるという、ただそれだけの事だけだ。

 優れた聖女がいるのだから、だからそんな使えない聖女なぞくれてやるという上から目線。決して聖女は王子の所有物でもないし、ましてや王家の物でもないのに。


 王子も王家も気付いていない。


 本来ならば聖女というのは必ずしも一つの国に現れてくれるわけではないので。

 だからこそ現れたのなら、それはもうそれだけで奇跡のようなものだという事を。


 そしてその奇跡を、王子も王家も簡単に捨ててしまったという事を。


 聖女リナを国から追い出して、そうして異世界から来た聖女だって、この国に留まる理由などこれっぽっちもないというのに。


 そんな簡単な事に気づかない者たちばかりだったのである。



 だからこそ、三か月経過した時点で聖女がさっさと元の世界に帰った後は、王家はそれはもう困り果てた。

 聖女の力を付与された結界はまだしばらく大丈夫そうとはいえ、このままでは魔道士たちだけの魔除けの結界に戻るのは時間の問題で、そうなれば今までよりも魔物や魔獣といったものの危険が迫る。

 対する隣国はリナの力で魔除けの結界に聖女の力が付与されたので、比べると余計に危険度合いが上昇しているように思えるだろう。


 今まで平和だった分、本来の状態に戻ったらそれだけで危険度が上昇したように感じられるのは言うまでもない。

 そうなれば、治安の面からも色々な不安が生じるのは当然だろうし、生活に不安を覚えた民が暴動を起こすかもしれない。


 結界の外だけではなく、内側ですら危うい状態になりかけている、という事にまで気付けない王家ではなかったのだが。



 二人の聖女を失った王家がこの問題を簡単に解決できるはずはなかったのだ。

 聖女の力がなくとも魔物を寄せ付けない結界術を新たに編み出すにしても、そもそも長年研究してもまだそこに至っていないしましてや聖女が現れてからはその研究も下火になっていた。

 これも異世界からの聖女がこの国の連中無能揃いかよと思った原因の一つである。



 今更のように追い出した聖女を連れ戻そうとしても、とっくに隣国の民として暮らしているリナを連れ去るのは国に侵略する意志ありと見なされ戦争に発展しかねない。

 どうにか泣き落とし相手の良心に訴えてリナに戻ってきてもらおうと思っても、国がしっかりガードしていたためにそれもできなかった。


 使節団の中に紛れ込んだ王子に、神官長が言う。


「いやぁだって、そちらの国は食事が美味しくない、と聖女が仰せだったので。

 えぇえぇ聞きました。我が国の平民だってそう食べないくらいに酷いものだったのでしょう?

 しかも十年も働いておきながら報酬もなかったのだとか!

 聖女だから? いえ、聖女も生きた人間なので生きていくうえでお金は必要ですよ。教会だってそうなんですから。自分の意思で慈善事業させてるならともかく、強制されて、ではねぇ……


 まぁ、人というのは得手不得手がありますから、王家に生まれたからとて王族として向かなかった者もいるのでしょう。たまたまそれが、続いて生まれてしまっただけだったとしても。

 えぇ、国を運営するにしても聖女にまともな食事も与えられないくらい困窮していたのでしょう? まぁまだ民草が大量に死んでいないだけマシなのかもしれませんけれど……

 でも、それもいつまで続くかは……ねぇ?

 おかげで我が国の商人たちも、そちらの国との取引を見直したりしているようで……まぁ、仕方のない事なのかもしれませんね」


 神官長は神官長らしくとてもにこやかな笑みでもって言ってのけた。

 見る人が見れば大層腹黒い笑みだと言った事だろう。


 もう一度言うがこの神官長はこの国の第三王子である。

 そしてそんな神官長の後ろには、第二王子と第一王子もいた。


 王子たち曰く、たまたま時間ができたから兄弟での語らいでもしようと思って、との事だがまぁ建前である。

 今日この日、ここに使節団がやってくる事を知った上でいるのだ。


 神官長だけなら、第三王子風情が、と王子も悪しざまに言った可能性があるが、しかし三人も王子がそろっていれば下手な態度はとれない。一応それくらいは理解できる知能は持ち合わせていた。

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる王子に、三人の王子たちは内心で「モロ顔に出てるー、こいつ腹芸できないタイプかよ」と同時に思っていた。

 将来これが王になるなら、うちの国はさぞやりやすくなるなぁ、とすら思い始める始末。


 彼は自分を優秀だと信じたくて仕方がないようだが、どうあっても三人の王子たちは自分たちが負ける気がしなかった。何を言われてもリナをそちらの国にやるなんて選択肢は決して出てこない。

 折角聖女自らこの国に来てくれて、この国の聖女として働いてくれているのだ。

 聖女なんてそもそもほしいと思っても簡単に得られる人材ではない。


 来てくれた以上は何が何でも離さない! くらいの気持ちなのは言うまでもなかった。


 そんな貴重な人材を簡単に手放すアホに優しくしてやる義理はどこにもないのである。


「それに、それだけ困窮しているというのならいつこちらの国と提携した事業だとかが破綻するかもわからない。そう思えば手を引こうとする貴族がいるのも仕方のない事。

 まぁうちは今のところそちらの国と何が何でも、という感じで関係を続けなくともどうにかなるので。

 ……無理はしなくても、いいんですよ?」


 と、こちらは第二王子である。


 実際そちらの国が本当に困窮しているわけではないと知っている。

 だが、あえてそれが真実なのだろう? とばかりに言えば王子は屈辱で身体を震わせていた。


 国もまともに運営できない出来損ないと暗に言われ、あげくマトモに国を導けないのなら、いっそ王族である事をやめるのも一つの手だぞ? とも暗に言われているのだ。


 王子以外の使節団メンバーも、下手に口をはさめなかった。


 王家に聖女が虐げられているという事を知らなかった者も確かにこの中にはいる。

 けれど、知らなかった、で済む部分はとうに過ぎたのだ。

 仮に知っていたとしても、王家がやらかしているのだ。それに逆らってまで聖女を守ろうと思えた者が、果たしてどれだけいたという事にもなるのだが。


 聖女が王家に程近い公爵家の令嬢だとかであれば守ろうと動いた者はいたかもしれない。だがリナは限りなく平民に近しい男爵家の娘だった。

 そんな女一人のために最悪自分の家が取り潰されるかもしれない危険性がありながら、王家にあえて苦言を呈する事ができるか、となると……仕方のない部分もあるのだろう。


「どちらにしても、我が国では奴隷というのは廃止されているしましてや人身売買など以ての外。そちらが何を言おうとも、既に我が国の国民である相手を引き渡す、という事はないのですよ。

 どうせそちらの国に渡したところで、食事もままならないのであればすぐに死んでしまいそうですし。

 酷い話ですよね、実はこちらに異世界から来た聖女からの手紙もあったのですが、まさかそちらの国が聖女にマトモな食事すら与えられなかったなんて……」


「なん、だと……?」


 第一王子が見せびらかすように、異世界から来た聖女からの手紙とやらを振る。

 それは王子の国で、王家が使う封筒と封蝋でこの国の王子が偽造するのは難しいとわかるものだった。


 読んでみるといいですよ、と封筒の中から手紙を取り出した第一王子から手紙を受け取り、王子は半信半疑ながらもその手紙に目を通す。


 異世界の聖女の文字だと察したのは、彼女の文字が特徴のある癖字であったからだ。真似をしやすい気がするが、いざ真似ようとすると中々に難しいもの。異世界からの聖女がいた期間は三か月。その間に彼女の文字を見たことがある者は限られていて、そしてそれを真似しようと思うような事などそうあるはずもない。真似るにしても、特徴があるが故に簡単そうに見えてその実難しいために、聖女がいなくなってからすぐに手紙を偽造するとしても相当難しい事が窺える。


 だからこそ、王子はこれを聖女の書いたものだと確信した。



 手紙には、王子の国に対する文句がつらつらと書き連ねられていた。

 あの女、裏ではこんな風に思っていたのか……! と怒りで危うく手紙を破きそうになるがどうにか堪えて読み進める。


 その中で、前の聖女にもロクな食事が与えられていなかったとは聞くけれど、本当に食事が酷すぎると書かれていた。聖女にはまともな食事を与えていたのに。リナと違って、王子たちが食べる物と同じ料理だったのだ。それを酷いと言われるなんて、王子には信じられなかった。


 だが手紙には確かにこう書かれていた。


 毎日代わり映えのしない同じようなメニュー。まるで家畜の餌のようだった、と。

 正直自分の国の犬猫の方がまだバリエーション豊富に食事をしているとまで書かれていて、いかにこの国の生活水準が低いのかを切々と訴える文面。

 こんな所にいつまでもいられない。故に自分は元の世界に帰るし、もし前の聖女があの王子に何か言われても彼女の意思じゃないなら帰さないようにしてあげて、とリナを案じる事まで書かれていた。


 王子は自分の住んでいる国が都会であると信じて疑っていなかったので、これにはプライドがバキバキである。王子の目には都会であっても、聖女の中では故郷と比べると都会に近い田舎くらいの分類であった。

 聖女は別に田舎が悪いと思っているわけではないが、田舎なら田舎なりの良いところを出せばいいのに、王子はあえて悪い部分を前面に押し出したようなものだったので。


 余計にぼろくそに書かれていたのは言うまでもない。



「王家で出された食事よりもこちらで出る平民たちが食べるような一般的な食事の方が圧倒的に美味しい、とこの国に来た聖女様も仰ってるので……それにこちらの国に来たばかりの頃は本当に貧相としか言いようがありませんでしたが、最近ようやく程よく肉がついてきて背も伸びてきたんです。

 人並みに成長し始めたのに、そちらの国に戻ったらまた栄養失調でガリガリになるかもしれないでしょう?

 聖女様を流石にそのような目に遭わせるのは我が国としても本意ではないのですよ」


 あくまでも聖女の健康状態を心配して言う神官長。


「食事はなんだかんだ生きていく上で重要ですから」


 それに便乗する第二王子。


「偏った食生活は若いうちはともかく年を取ったら一気にくるぞ」


 まぁお前らがどうなろうと知ったことではないが、というのを暗に匂わせつつ第一王子。


 何をどう否定しても、否定しきれるものではない。

 リナに粗末な食事を与えていたのは事実だし、聖女には自分たちと同じ食事を与えていたが、その聖女は手紙に毎日同じようなのばかり出されて辛かった、とまで書かれている。

 仮にリナを自国へ連れ帰って、今度はマトモに食事を与えようとしたとして、聖女と同じような事を言われたらまたも蔑ろにしているだとか、健康被害を出そうとしているだとかの噂が流れるのは目に見えている。

 一度目はリナが虐げられているなど気付きもしなかった貴族たちは、二度目は流石にないだろうと反旗を翻す可能性もそうなると出てくるのだ。


 聖女がいなくなったことで目に見えて困る事はそれなりに出てきているのだから。


「聖女がどうのこうのという前に、まずは自国の悪い部分を改善するところから始めるべきでは?」


 そうして、第一王子の悪気のなさそうでいて悪意たっぷりの言葉に。


 うちの国民を差し出すつもりはありませんから、と再度念を押すように言われ、使節団と教会の話し合いは三人の王子の圧により早々に終焉を迎えたのであった。



 そうなれば王子の国が徐々に衰退していくのは仕方のない事で。


 聖女を追い出した挙句二人目の聖女にも逃げられたという事実があるのだ。そりゃまぁ衰退もしようというものだ。

 王子に至っては一人目の聖女と婚約をしていたがそれを破棄し追い出して、二人目の聖女とは婚約を結ぶ前に逃げられた。

 いくら王子という身分があろうともうロクな縁談など出ないだろう。



 実際この国は数年後には地図から消えて、かわりにお隣の国の領土がその分増えたのだが。


 周辺の国は「でしょうね」としか言いようがなかったというのだけは事実である。

 次回短編予告。

 とある作品の世界に転生した人の話。

 ジャンルは安定のその他。

 ※人によっては若干のBLみを感じる可能性があります(上級者レベルに限る)

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― 新着の感想 ―
[一言] >かろうじて貴族だけど限りなく平民に近しい存在として、王族も高位貴族たちも、リナの存在を軽んじたのだろう。 普通に考えて、「最底辺だけど一応、自国の貴族」なのと「突然、降って湧いた異世界(…
[一言] 御飯大事。本当に大事ですね
[一言] 異世界聖女を間者で送り込んだ神ですが、腐り国の王家と教会への天罰自体が抜けているような? 現地聖女の保護体制構築と腐り国のターゲットの絞り込みが目的でしたよね? まぁ天罰より、国が消えるド…
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