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六話 潜入、賢者の堂!!

 朝陽に連れられて、ビルに入る。この建物にエレベーターはなく、剥き出しのコンクリートの階段は暗然として、壁に手をつきながら上がる。昼間だと言うのに壁の冷たさに驚いた。


 「今から会う人は、私の先生ですので、失礼も失言もッないようにお願いしますからね!」


 どうやら朝陽の先生とやらは、礼節に厳しいようだ。


 「善処するよ」


 しかし朝陽の後ろを歩いていると、彼女の残り香の匂い、めっちゃくちゃっ、いい匂い! 女子ってみんなこんないい匂いするのか? やっぱり天使並みの造形美を兼ね備えた朝陽は体臭までも神がかっているいるのか……?


 そうこうしていると、扉の前についた。コンクリートビルには不釣り合いなアンティーク調の木製扉が現れた。後から付け替えたのだろうか?


 朝陽がドアを開ける。外観の想像よりも広い部屋。本棚が部屋を囲むように設置され、棚には隙間なく本が収納されている。でも一つの本棚は様相が変わり、上から下まで漫画がびっしりと収納されていた。


 部屋の中央には来客用のソファーが向かい合って設置され、その奥には仰々しいプレジデントデスクが鎮座している。どうやら先生とやらのデスクだろう。

 

 デスクの備え付けチェアが窓際を向いている。僕達が入室した事に反応したのか、椅子が一人でに回転する。さあ先生のお出ましだ。


 ——…………


 「あれ? いない?」椅子はこちらに正対したけど、誰も座っていない……また……怪奇現象?


 「ひうっ!!」


 !! 隣から朝陽の小さな悲鳴が聞こえた。慌てて隣を向くと、そこには。


 

 「朝陽、今日はいつもと違う香りがするね……シャネルのNo.5、私がプレゼントした香水じゃないか、嬉しいよ」


 朝陽に後ろから覆い被さるように、抱きしめて首元に顔を埋めて香りを堪能する女性が、一人……何て羨ま、何て大胆な人なんだ。


 「せっ、せんっ、先生! 人前で匂いを嗅がないでください! 恥ずかしいです!」


 朝陽は、背筋をピンと伸ばし硬直している。朝陽の身長が小さいからか先生は前のめりになるように抱きしめており嫌がる朝日を堪能したようで、僕に向き直る。


 正対した時、先生は僕より頭ひとつ分、背が高く見上げてしまった。僕は百七十二センチはあるから、百八十五センチはあるだろうか? 


 「君が、朝陽の言っていた少年だね」


 僕に訊ねる女性は、身長も相まって、まるでモデルのように手足が長くてスタイリッシュな体型に豊満な胸。その胸を強調するようにノースリーブのテイラードシャツを谷間が見えるほどにボタンを外している。下半身は全体の形がわかる程のスキニータイプのレザーパンツにヒールブーツを履き、おまけに白衣のような物を肩から肘の辺りまで下ろして羽織っている。それはまるで、何かの作品(意味深)の保健室の先生みたいだ。


 

 「……あ、ハイそうですけど、貴女は?」呆気に取られてしまう程の美貌だ。朝陽にも引けを取らない顔貌に大人びた風貌、さらに異国の雰囲気に髪は銀髪に特殊なくびれのあるロングヘア、ウルフカットという物だろうか。


 「まずは、自分から名を名乗るのが礼節を重んじる日本男児ではないのかね?」


 センターに分けた前髪から覗く薄青としたブルーサファイアの瞳が僕をギラリと睨む。

 

 「それは……間違いないですね。僕は私立滝壺高等学校二年、佐野命(さのみこと)です。スリーサイズは上から85-72-92。少しお尻の大きな男の子でっす」しまった緊張してギャル風にスリーサイズまで答えてしまった。


 「ほう、威勢のいい挨拶をするじゃないか、私の名はイリス•アルケミスティ・イグノランティ。スリーサイズは上から91-69-97だ。スリーサイズは何か意味があるのかい?」


 で、でかい! 何かとは、言うまい!


 「いえ……実は僕、初めてお会いする女性に下着をプレゼントするのが趣味なんですよ。ちなみになんですけど、現在何色の下着をっうぇっ!?」


 「いい加減にしろ変態っ!!」朝陽が強烈なフライングニーを腹部に決めてきた。そして蹲る僕の額にまたしても漆黒の冷たい銃口を突きつけて窘める(たしなめる)

 

 「もしかすると貴方はまだ、夢の中にいるのかもしれませんね。どうです? 私の50口径でどたまぶっ飛ばしましょうか?」

 

 「ずみません、でしゅ」


 「あっははははは。朝陽、随分と少年と仲がいいんだね。そんなに楽しそうにしている君を見るのは初めてだよ」イリスは高らかに笑い、言い終えると、いつの間にか取り出した煙草を口に咥える。


 「もう揶揄わないでください! 先生も馬鹿正直にスリーサイズ答えなくていいんですよ!」


 「はて、朝陽もスリーサイズを伝えてあるのではないのか? 下着は何着あっても困らないぞ?」


 「もうっ!」


 イリスは嘲笑し、咥えている煙草に火をつける「フフ、冗談は捨て置いて、初めましてだね佐野命君。私の事は好きに呼んでくれたまえ。しかしあの病院内でよく生き残ったね感心するよ」


 どうやら本題に入るようだ。真面目な話になるとまともに話せるか心配だなあ。


 「ぼ、僕もお好きに呼んでもらって、大丈夫です……。あの病院って、なんなんですか? それに化け物女も急に見えるようになって……正直、困ってるんですよ! どうにかならないですか!?」後半は捲し立てるようになってしまった。どうやら僕は自分で思っている以上にテンパっているようだ。


 「急いては事を仕損じる。順を追って説明するよ」イリスは口元のタバコを指に挟むと、自身のプレジデントデスクに戻り、チェアに座る。


 「さて、まず君に起きていることを話さそうか、朝陽」朝陽に話を戻す。


 「はい、まず命さん、貴方は一週間前に単独で交通事故にあわれましたが覚えていますか?」


 「ああ、覚えてるよ……ちょっと待って、今単独って言った?」


 「ええ、事故現場には貴方しかいなかった様ですけど、何か?」


 …………あの野郎うぅぅ。油女ころもおぉアイツ助けてやったのに僕のこと見捨てやがったなぁあ許さん。


 「命さん、大丈夫ですか?」朝陽が眉間を抑える僕を心配そうに見つめている。


 「ああ、すまない続けてくれ」


 「では。その事故によって命さんの人となりは変わりました。単刀直入に言いますと、死に近づきすぎた事が、貴方の霊障に直結しています」


 「死に近づきすぎたって……待ってよ僕の怪我って大した事なさそうに見えるけど……」


 「いえ、命さんは一度心肺停止になり、蘇生したんです」


 マジかよ……。


 「基本的に霊感や霊視と言うのは、弛まぬ(たゆまぬ)鍛錬により得るか、遺伝的に受け継がれる事が殆どです。けれど稀に、死から逃れた人間に霊感が目覚めることもあるんです。かなりの低確率ですが」


 「でもさ、それって元に戻すこともできるんだろ? 正直困るよこんな体質……」朝陽とイリスは目線を合わせ、イリスが口を開く。


 「君の様なケースは稀、だが確かに一度目覚めた霊感を閉じる事も可能だ」しかし、と、吸っていた煙草を灰皿にすり潰す「閉じた霊感は身近な人間に目覚める可能性がある。伝染、共鳴、同調好きな解釈で構わないよ」

 

 そんな馬鹿なと、思ったけど別にいいんじゃないか? 僕にそんな身近な人間なんていないんだから、適当な学校の陽キャにでも移ってくれればいいじゃないか。

 

 「大丈夫です。僕友達もかぞ……く」


 『命、一人で大丈夫?』頭の中で一人の女性の声がした。


 「姉さん……」


 「どうする少年?」イリスの眼光は肉食獣の品定めの様にじっとりとしたものだった。


 

 continuation————。

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