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姉妹

 闇夜を駆ける白き閃光。

 彼女はブラッドスレイヤー。

 通称吸血鬼狩り。

 吸血鬼とは人族の敵であり地球の日本以外の大陸を滅ぼした災厄の生物。

 彼らは残虐の限りを尽くし喉の渇きが癒えるまで人族の血をすする人外の存在。

 彼らは人族として扱われずただ化け物として狩られる。

 そんな化け物を狩るのがブラッドスレイヤー。

 しかし彼女は正規のブラッドスレイヤーではなかった。

 彼女の名はブラン。

 白髪の少女であった。

 体格は小柄でとてもではないが戦いが向いているとは言い難い。

 第一印象からは『弱そう』と思えるほどである。

 ブランは背中に身の丈に合わない大きな大剣を背負っていた。

 大剣の名は『雷神の怒号』。

 機械と魔法技術が合わさったマルチウェポンである。

 マルチウェポンとは機械技術と魔法技術が合わさった武器のこと。

 ブランは20階建てのビルからビルを飛び移っていた。

 その小柄な体格からは想像できないジャンプ力で空を舞う。

 ブランのジャンプ力の源は戦技である。

 戦技はその昔、世界の概念を作り出した3人の魔法使いが作り出したもの。

 戦技とは体内に存在するソウルエナジーを消費して繰り出す技である。

 戦技は身に着ける物であり最初からできるわけではない。

 ブランが使っているのは戦技【跳躍】。

 極めて低レベルの戦技ではあるが使い勝手がいい。

 しかしブランほどの【跳躍】はそうそう出せるものではない。


「待ってよ吸血鬼さん。君を殺さないと推薦状がもらえないんだよ」

「誰が貴様などに殺されるものか!!」


 ブランが飛ぶ10メートル先には1体の吸血鬼がいた。

 見た目は人族と変わらないが瞳が青く輝いていて歯が牙のようになっている。

 また人族にはない独特なオーラを放っていた。


「待ってよ、そんなに急ぐと手元が狂ってちゃんと殺せないよ」

「黙れ人族の肉塊が!!」


 吸血鬼は後ろを振り向いた。

 するとすぐ後ろに大剣の刃先が回転しながら迫っていた。

 吸血鬼はそれを躱すと宙返りして受け身を取る。

 逃げきれないと悟ったのだ。

 吸血鬼は爪を長くしてブランをにらみつける。


「もうー、そんなに動くから当たらなかったじゃん」

「その程度の攻撃で俺を殺せるとでも?」

「うんうん。別にそこまで君のことなめてないよ」


 ブランは腰に差してあった片手剣を抜く。

 対吸血鬼に特化した片手剣、通称クロスソード。

 十字架の形をしたそれは吸血鬼が嫌う太陽のエネルギーを内包していた。

 吸血鬼もそれをわかっていた。

 吸血鬼はブランに会うまで何人もの人を殺していた。

 もちろんブラッドスレイヤーも含まれている。

 じりじりとブランに迫る吸血鬼。

 そして吸血鬼は一気に距離を詰める。

 その速度は並の人間ではとらえられないほどだった。

 しかしブランはこれに反応。

 片手剣で吸血鬼の爪をいなす。

 吸血鬼は何度も爪で攻撃を仕掛ける。

 その度に爪が太陽の力で削れていく。

 数度の攻防の後、吸血鬼はブランの実力を計り攻撃方法を変更する。

 吸血鬼の眷属であるオプスキュリを召喚する。

 オプスキュリは吸血鬼の血を浴びた生物であり血の持ち主に絶対服従する。

 彼のオプスキュリは蝙蝠蝙蝠(こうもり)

 素早く移動して攻撃する。

 吸血鬼の血で強化されており通常の蝙蝠とはスピードの桁が違う。

 吸血鬼はブランを眷属化することを狙っていた。

 一滴でもその体に吸血鬼の血が混じると人族は吸血鬼の眷属と化してしまう。

 にやりと笑う吸血鬼は勝利を確信した。

 いくらブランが強くても触れれば負けの蝙蝠の攻撃を躱すのは不可能と考えたからだ。

 しかしブランは慌てなかった。

 いや、これを狙っていたのだ。

 ブランは蝙蝠の攻撃をあえて受ける。


「ば、馬鹿め!! 抵抗もせずに俺の眷属の攻撃を受けるとは!! いや、みずからの死期を悟ったか。その気概だけは称賛に値するな」


 そう言った直後、吸血鬼は戦慄する。


「この子たちあんまり力を注いでない? 君の本気の眷属じゃないのかな?」


 ブランの体から青いオーラが漏れ出てくる。

 吸血鬼はそのオーラの正体を知っていた。


「貴様も吸血鬼だというのか!!」


 ブランはその言葉に少し苛立つ。


「君みたいな低俗な吸血鬼と一緒にしないでほしいな」


 ブランの体にかみついた蝙蝠たちが次々に地面に落ちていった。

 ブランの吸血鬼としての力が強すぎたためだ。


「貴様、まさかこの俺よりも強い力、金爵級だとでもいうのか?!」


 吸血鬼の階級は色で分類される。

 蒼、赤、黒、銅、銀、金、そして最高位の虹。

 ブランと対峙している吸血鬼は銀爵級の吸血鬼でありその銀爵級の血がブランの血に負けるということは少なくともブランは金爵級以上の吸血鬼であるということだった。


「さて、じゃあ殺すね」


 ブランは蝙蝠から血を吸収して数段と力が増していた。

 先ほども強かったがなお強い。

 吸血鬼はブランの脅威を数段階引き上げた。

 視界にブランを捉え防御の姿勢に入るがうまく構えることができない。

 視界が傾き膝から崩れ落ちた。

 吸血鬼は何が起こったかわからなかった。

 視界にとらえたはずのブランの姿も消えていた。

 ブランは吸血鬼の後ろで片手剣に付着した血を払った。

 吸血鬼は地面に倒れた。

 そして理解した。

 自らの足がブランによって切り落とされたのだと。

 吸血鬼の足はビルの屋上にまだ立っていた。

 それほどにブランの斬撃が素早く精密なものだったということだ。

 吸血鬼は全身から汗が噴き出す。

 自らを狩る者としていたがそれは間違いだったのだ。

 自分はウサギでありブランこそがウサギを食らう狼。


「待て殺すな!! この俺を殺すことは吸血鬼にとって損失。お前も吸血鬼なら分かるだろ? お前は同胞を手にかけるつもりか?」


 吸血鬼はブランに訴えかける。

 少しでも吸血鬼に対して慈悲があるならブランは自分を殺さないと思ったのだ。

 しかしブランは吸血鬼の顔につばを吹きかける。


「君のようなゴミに少しでも私が同情するとでも? この身この命はすべて魔法使い様に救われたもの。だから私は吸血鬼を同胞だと思ったことは一度もないしこれからも君たちゴミを同胞として見ることはないよ。じゃあね」


 ブランはクロスソードを吸血鬼の心臓に突き刺そうとする。

 心臓は吸血鬼の急所であり心臓を破壊されたら体の再生ができなくなる。

 吸血鬼は最後の力を振り絞った。

 ただで殺さるほど絶望してはなかった。


「クリムゾンデビル!! 俺の命に従いこの小娘を抹殺せよ!!」


 吸血鬼は叫んだ。

 すると何もない空間から赤い皮膚をした異界の化け物が姿を現す。

 クリムゾンデビルはこの吸血鬼のオプスキュリ。

 最後の切り札。

 ブランは背後に現れたクリムゾンデビルに反応はしたもののクロスソードを弾き飛ばされてしまう。

 虚を突かれた。

 ブランは武器を失ってしまった。

 雷神の怒号は投げ飛ばしたまま遠くに突き刺さっている。

 ブランは大剣を取りに行くことは諦め爪を長く伸ばす。


「グオオオ!!」

「爪傷つけるのは嫌なんだけどな」


 クリムゾンデビルがブランを攻撃しようとしたその時、もう1人のブラッドスレイヤーがクリムゾンデビルの首を切り落とした。

 ブランはその姿を見て喜び飛び跳ねる。


「お姉ちゃん!!」


 剣と銃が合体したマルチウェポンを装備した黒髪の少女。

 彼女はノワール。

 ブランの実の姉であり吸血鬼。

 ノワールはクリムゾンデビルの心臓に銃弾を浴びせる。

 クリムゾンデビルはぐったりと倒れて動かなくなった後に灰になってしまった。


「おねえちゃーん」


 ブランはノワールに抱きつこうとするがノワールはブランの頭にチョップを入れる。


「痛いよお姉ちゃん」

「これはブランが魔法使い様との約束を破った罰」

「えーでも戦いは楽しいんだもん」

「戦いは迅速に終わらせるべきよ。あなたなら初撃で殺せたはずよ」

「ぷー」


 ノワールは吸血鬼の心臓に剣を向ける。

 ノワールのマルチウェポンはソードガン。

 銃弾は太陽のエネルギーを帯びていて吸血鬼に当たれば致命傷になる。

 吸血鬼は青ざめる。

 ついに抵抗する手段がなくなったのだ。


「待って話を」


 吸血鬼が話始めた直後に発砲音が夜の街にこだまする。


「お仕事終了」


 吸血鬼は心臓を撃ち抜かれて灰になっていく。

 そして赤い宝石のようなものが灰の中から出てきた。

 これは血結晶。

 吸血鬼が死ぬと灰の中から出てくるエネルギー体。

 これは街の電力やお金、マルチウェポンのエネルギーに使われる。

 これ1つでかなりのエネルギー源となる。

 ブラッドスレイヤーの仕事はこれを集めること。

 そして吸血鬼を根絶させること。


「さて、じゃあ本部に戻るわよ」

「はーい」


 姉妹は血結晶を手にブラッドスレイヤーベール基地に戻る。



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