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カロリングの危機

 ――――という夢を見たんだ……とかいう夢オチだったらどんなに良かったことか……。

 最後は、エレオノーラの懇願に俺が折れる形で現在進行形で戦争の真っ最中であるカロリング帝国へ向かうことになった。

 カロリングに恩を売るために来たけどやっぱ帰りてぇ……。

 

 「ほれ、聞いておるか?」


 エレオノーラに扇子で、ちょんちょんと小突かれる。


 「んあ?あぁ」


 そして今は、カロリングとオストラルキの戦争の状況について、馬車で移動しながら聞いている所だった。


 「妾の国の未来が、お主の双肩にかかっているのだぞ?しっかり聞いてくれぇ」

 「んな、大袈裟な……そもそもカロリングだけで動員兵力四万は越すんだろ?」

 「二週間前まで越しておったのぉ」

 

 え……過去形?


 「同盟国も沢山いるんだよな?」

 「二週間前まで沢山いたのぉ」


 え……過去形?


 「物資も資金も潤沢だよな?」

 「二週間前まで潤沢だったのぉ」

 

 え……過去形?

 ということは今はそうじゃないってことか?


 「あのーエレオノーラさん?つかぬことをお聞きしますが二週間前に何が?」


 これ聞いたら絶対、カロリングに足を運んだことを後悔するやつじゃないか?


 「二週間前までは、全て順調だったんじゃ……。それが気づいてみれば一週間のうちに全てが崩壊……父上も病の床に伏せってしもうた……」


 あの温厚そうなエレオノーラの親父が病に伏せるとかどんだけ戦局悪化してるんだか……。


 ◆◇◆◇


 カロリング帝国帝都につくと、宰相カミーロ・カヴールの纏めた戦況についての資料を貰いノエル率いる間諜達の情報と照らし合わせながら策を練ることにした。


 「ここに書いていることは、ほぼ間違いありません」

 「ほぼ?」


 確実性を欠いたノエルの言葉に聞き返すとノエルは、資料にペンを走らせた。


 「ここです」


 そこには、衝撃の事実が書かれていた。

 レパントの海戦におけるカロリング帝国軍の敗北の原因は、南方国家オットマン帝国海軍によるものだと……。

 資料ではイリュリア半島諸国の連合艦隊に敗北したと書かれているもののノエルの諜報網によれば、オットマン帝国の艦隊による《《介入》》があったということらしい。

 カロリング帝国の資料と公国うちの諜報網のどちらを信じるか?と問われればもちろん信じるのは自国の諜報網だ。

 そしてレパントの海戦での敗北は二週間前から始まったカロリング帝国の侵攻計画の狂いに直接繋がったと言っても過言ではない。

 冬に始まった戦争の経過を辿っていくと、オストラルキ主導のイリュリア大同盟軍をゴリツィアの戦いで撃破し快進撃を開始した。

 そして天然の要害であるジュリア・アルプスの防衛線を数ヶ月の戦闘の末に突破してエスト辺境伯国の首都であるアッルヴィアーナに達したのが二週間前のことだった。

 それまでに二伯国一公国を陥落せしめたカロリング帝国陣営の進撃は、二週間前のその日を境に完全に停止したのだった。

 カロリング帝国の本土の最東端に位置し、補給物資を集積させていた重要地にイリュリア大同盟軍五千余りが上陸し兵站線が寸断されてしまったのだ。

 問題はそれだけにとどまらず、三千メートル近い標高を誇るジュリア・アルプスを用いて、その五千余りの敵が閉塞した。

 これによって快進撃をしていたカロリング帝国陣営は、三万あまりの兵力がアッルヴィアーナ盆地に閉じ込められる形となったのだった。


 「おいおい……嘘だろ……」

 「パワーバランスが変わるじゃねぇか……」


 部屋には俺とノエルの重たいため息が響いた。

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