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エマニュエル伯


 「えーっと、我が王国から離反したアルフォンス公爵を討伐するべく西方領諸貴族は、直ちに部隊を率いてコンツへ参集されたし……か……。面倒だな。お前はどうしたい?」


 背もたれに背を預けて、気だるげに届いた書状を読み上げるとフィリップは妹の意思を確認した。


 「そんなの決まってるじゃない!私はヴェルナールに付くわ!」

 「お前のそういうところ、昔っから変わんねぇよなぁ」


 彼の名はフィリップ・ド・エマニュエル、そして彼の眼前で苛立たしげに爪を噛んでいるのが妹のブリジットだ。


 「幼馴染の味方に付く、至って当然のことよ!それに今回は王国に非があるもの」

 「そうだよなぁ……でもここでヴェルナールの味方をしちゃうとあとがマズイんだよなぁ……」


 むぅ〜っと唸ってフィリップは机に突っ伏した。

 エマニュエル伯爵家とアルフォンス公爵家は領地が隣あっていることから長い間、親戚ぐるみの付き合いを持っていた。

 そしてフィリップもブリジットもヴェルナールと妹のレティシアの幼馴染にあたる。


 「兄さん、だからこそ女の私が行くのよ」


 この二人もヴェルナール同様、帝国士官学校を卒業していた。


 「私が行けば、最悪捕まったとしても極刑は避けられるわ」

 「まぁ、俺が行ったら負けたとき、エマニュエル家は滅んじまうしな」

 「そうそう、だから私が行くの」

 

 確かにブリジットがアルフォンス公爵家に行ったくらいでは伯爵家断絶といこうことにはならないだろう。

 フィリップは、そう見当づけたのか、


 「そうだな、好きにしろ。俺の胸甲騎兵クィーラスィアも連れて行け」


 とブリジットに言った。


 「そう言ってくれると思ってたわ」


 深々と礼をするとブリジットは駆け足で退室していった。


 「さーて、王国の馬鹿どもの足をどうやって引っ張ってやろうかな」


 部屋に残ったフィリップは、悪戯を考える子供のような顔をして腕を組んだ。

 それからおよそ二時間あまりが経った頃、藍色の胸甲を纏った騎兵百騎あまりがアルフォンス領へと粛々と行軍を開始したのだった。

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