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アレクシア


 「久しいな、ヴェルナール!」


 アヴィス騎士団とともに一晩駆けて自分の城となったクーヴァン城へ戻ると姉であるアレクシアが黒いドレスを纏った姿で出迎えてくれた。

 アレクシアは女ではあるが、親戚筋である隣国ヴァロワ朝ファビエンヌ伯爵家の家督を養子として継いでいた。


 「お久しぶりです、姉上」

 「うんうん、また一段と男らしくなったな!」

 「姉上も随分とお綺麗になられましたね」


 ファビエンヌ伯爵家の養子となって以来、姉の言動は男らしいものとなっていた。

 貴族社会においては、女だと舐められるからというのが理由らしい。


 「お兄様とばかり、ずるいです!」


 そこに侍女に支えられながら馬車を降りたレティシアが駆け寄ってくる。


 「お前は、ほんとに兄離れが出来ないのね。そろそろ結婚を考える時期なのだが……」

 「お兄様よりいい人が見つかったら結婚しますわ」

 「それは私も同じだ」


 アレクシア姉は嘆息しつつも顔は嬉しそうに笑っている。


 「つかぬ事をお聞きしますが姉上、どれ程の援軍を?」


 悠長にしている時間は無いから早く本題に移らなければならない。


 「急なことだったので八百程度しか連れて来れなかった」


 アレクシア姉は、済まなそうに言った。

 だが、それは俺の予想よりも三百程多い兵力だ。

 つい二日前に、独立戦争をする可能性があると伝えたのにさすがの手腕の良さだ、短期で八百も集めてくれたのか。

 

 「いえ、問題ありません。勝てますよ、この戦!」

 「そうか?まぁ、帝国士官学校を首席で卒業したお前が言うのなら間違いないだろう」

 「えぇ、そこらの貴族連中に負けるつもりは無いです」


 ちょうど二年前まで俺は、最新の用兵学と戦術を学ぶために身分を偽り南の隣国カロリング帝国に留学していた。

 カロリング帝国貴族とエルンシュタット王国貴族が仮にも戦争となれば、国力はもとより用兵戦術において勝ち目はない。

 それほどの差がある。


 「とりあえず今日のところは、ゆっくり休んでください。具体的な戦略の詰めは明日行いましょう」

 「そんな悠長でいいのか?」

 「敵が来るのは明後日以降ですから問題ないと思います」


 何しろ敵となったエルンシュタット王国は王国直属の軍隊では六千程度、多くても七千五百程度しかいない。

 このアルフォンス公爵領に攻め込むには必ず、他貴族の部隊を参加させるはずだから準備期間に数日は要するはず。

 そして王国の部隊の状況は、全貌を掴んでいると言っても過言じゃない。

 何しろ【アルフォンスの目】とも評される諜報網を敷いてあるのだ。

 兵数以外の条件において勝っている状況、負ける道理がなかった。

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