百五十頁 竜 弐 『初対面』
百五十頁
竜 弐
『初対面』
なんもねぇ……高校二年になって三ヶ月程経つけど、なんもねぇ。
私この世界の主人公だったんじゃ無いの? だって竜だよ⁉︎ 猫とか犬とか鳥とか居るけど、いっちゃん格好良いだろうがよ⁉︎
……ははっ、もう良いわ。今年度も、私にスポットライトが当たる事なんて無いんだ。来年度に期待しましょう。
切り替えて行こう。拙いながらも小説家になろうというサイトで連載している、ブラックマテリアとセブンジュエリーという物語を完結させる事に心血を注ごう。
もう二年は経つかな? この話しを書き始めて。カヴェルニの放浪記的な感じで書き始めたんだけど、故郷のレクソアの存在感強くなり過ぎて、その周りの登場人物増やしちゃって、その地を捨てる事出来なくなっちゃった。
一応そこから、仲間が攫われて助けに行ったりだとか、なんやかんや見せ場は作ったつもりだけど、全然放浪出来ねぇ⁉︎ 毎回話しに絡んで来るから、一回帰ってレクソアに会わせないと話しが終わらない。ってか、レクソア要るか⁉︎ でも……ワシカヴェさんレクソアに感情移入してるって言うし……いっその事レクソアも旅に連れてくか? ……それもありかも。
ってか、どうせ読んでくれてる人少ないんだから、好き勝手やる方が良くね? 私まだ若いんだし、駄作になったとしても、好きに転がしたら良いんだよ!
本当、好きな様に、後先考えず、物語を転がしてみた。
「……あぁ。どうしよう? ルキアーノの大切にしてた人形に魂が宿って、特殊能力を携えた設定にしちゃった。それって、ジョジョのスタンド的な事だよね? いや、私、そんな知能戦書けないし……天国とか地獄みたいなワードまで出しちゃったし……死神まで登場させちゃったし……どうしよう……」
やめる? ……だって、別に誰も見てないじゃん?
でも……ブックマーク、あるじゃん?
うん。ワシカヴェさんに、完結まで届けないと。
なんかさ? 話を練って、書いて、小説をサイトに投稿するじゃん? 反応無いと、設定良く無かったかなって、その物語を放棄したくなるんだよね。完結さえさせず。
完結さえさせてもらえない物語は、一人でもブックマークしてくれてる人がいる以上、失礼だよね。
何年経っても未完の物語が多い中、私は決意を今胸に抱いている。多分この、ブラックマテリアとセブンジュエリーは、まだまだ長い物語になる。でも、一人でもブックマークしてくれている人が居る限り、必ず完結させる‼︎
一応構想は決まっている、つもりだ……一ヶ月で五十話ずつ続いていく。二年間の話しだから、千二百話で完結する事になっている。
マジか? そんなに書けるか? ネタあるか?
…………
だから、たまに本筋とはあんまり関係ないジョジョ的なスタンド同士の闘いなども取り入れていこう。
……いや、激ムズだろ⁉︎ あんなのは頭の良い人がやるもんだよ。私、異能力バトルなんて描けないよ……
やめときゃ良かった。なんのアイデアも無いのに、特殊能力とか付与させるんじゃ無かった‼︎
…………あっ、まぁサブストーリーみたいなもんだし、アイデア浮かぶまで触れなきゃいっか。あと千五十話あるし。どっかでやりたくなったらその話しすれば良いか。
結構煽ったけど、ルキアーノの人形には何十話かお休みしてもらうとして、本編を進めよう。
これからどうするんだっけかなぁ? 何かアイデアあったんだけど、思い出せない。もぐもぐタイムかな。
横に座らせているツナマヨのおにぎりを手に取り、包装を解いていった。一口ほうばるのだが、具に届かない。でも、この海苔と米だけの区間も私は嫌いじゃない。のだが、家でおにぎりを食べる時はちと違う。具に届かないであろう三角おにぎりの角をほうばる時、マヨネーズをかける。マヨ、海苔、ご飯で味わうのだ。まぁ外にまでマヨネーズを持って行こうとは思わないので、学校では素で食べている。ってか、私はご飯にマヨネーズをかけて食べる様な人間では無い! おにぎりだけ特別なんだ!
……誰に言い訳をしてる? どうせ、この階段には私しか居ないのに。
階段って、なんか私は好きなんだ。特に、今は使われていない階段とか! 趣きがあって、ここの非常階段なんてめっちゃワクワクするんだよね? ここを、先輩達が行き来したんだろうなって。昔は笑い声が溢れていたのであろうこの階段を、私一人が今は独占してる。その経緯が、切なくもあり、嬉しくもある。
きっといつか有名な作家さんになって、この非常階段が私のアトリエでしたって紹介してあげるからね? 今はもう、私しか来なくて寂しい思いしてるかもしれないけど、もう一度、君を輝かせてあげたいんだ。
大きな背伸びをした。
「んんんんー!」
さっ、続きを書くぞ!
…………あれっ? さっき、伸びしながら一瞬目開いたけど、誰か居なかった?
……嘘でしょ? ……霊?
ザけんなよマジで? 何が趣きのある階段だよ⁉︎ 霊取り憑いてんじゃねぇか⁉︎ とっとと取り壊せ馬鹿野郎このヤロォ‼︎ あっ、最近ネトフリで浅草キッド観たばっかだから釣られてたわ。たけし入ってたわ。
ってか……後ろに、霊居る? もう、振り向け無いんだけど?
私こういうの無理なんだけど……取り敢えずこのまま固まっておこう……昼休みが終わるまであと二十分、大人しくしておこう。
……十分経った。霊、もう居なくなったかな? 居なくなったよね⁉︎ アハハッ! 霊とか、何言ってんだろ私。そんなの居る訳無いじゃん? 残しておいたおかかのおにぎり食べよ。
いつもツナマヨとおかかのおにぎりを私は買う。何故かというと、安いからだ! 明太子とか鮭に目移りするけど、やっぱ高いから……お手頃な価格のその二種類に依存してしまう。梅も安いけど、酸っぱいのは苦手なんだ。
だから、おかしいんだよ? ツナマヨは食べた。食べたよね⁉︎ うん、食べた。後は、おかかのおにぎり食べるだけ。それが私のルーティーン。なのに、なのに⁉︎ おかかのおにぎりが、私の隣に無いんだよ⁉︎
「あっ、やっと気付いたぁ!」
「ヒィィィィィィィィィィィィィッ⁉︎」
「そんな、怖がらないでよ‼︎ ……ゴメン。いつも美味しそうにおにぎり食べてるから、気になって……」
「あっ、はっ、アァハァハァハァハァハァ、ハァ! ハァ! ハァッ‼︎」
あぁ……息出来ないんですけど⁉︎
「過呼吸なってる‼︎ 落ち着いて‼︎ ちょ、マジで⁉︎ ほら! 落ち着いて? ねぇ? 落ち着いて⁉︎」
背中さすってくれた。霊じゃ無かったんだ?
呼吸も正常になり、その女と向き合った。
「ありがとう……ってか、霊じゃ……無いんだよね?」
うっ、怖い。霊だよとか冗談でも言わないでね?
「霊だよぉ〜」
「霊だったァァァァァァァァァァァァッ‼︎ ウワァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎ アァッ、アァハァハァハァハァ……」
「また過呼吸なってる⁉︎ ゴメン‼︎ マジでゴメン‼︎ 嘘‼︎ 霊じゃ無いよ‼︎ 落ち着いて? ねぇ? 落ち着いて?」
背中さすってくれてる。えっ? あっ? はっ? アァ霊じゃねぇじゃんコイツ‼︎ 良かったァ……いや‼︎ ってか⁉︎
「ここで何してやがった⁉︎ 私の、おかかは……?」
「ゴメン、食べちゃった……どんくらい気付かないもんなんだろうと思ってたら、食べ終わるまで気付かなかったんだよ? でも、私初めておかかのおにぎり食べたけど、とっても美味しかった! 私つぎ、おにぎり食べたくなったらコンビニでおかか買う!」
コイツ何言ってる⁉︎ 私のおかかおにぎり盗んで食って、品評したんだけど? 私が聞きたかった事は……色々あるな。何故私のおにぎり盗んだか? いやそれより、何故私しかいない筈のこの階段に居るか? どっちを、先に聞こうか?
「あの……」
私の糞コミュ症が発動しやがった‼︎ 理由を聞けや⁉︎
「ゴメン。おにぎり今度買って返すから! なんか、美味しそうだったからパクッちゃった! ……ってか、こんな今は誰も使って無い非常階段に人が居るなんて思って無かったんだよ。君は、何をしていたの?」
こっちの聞きたかった事に勝手に応えてくれた。……私、なんて言えば良いの? 小説書いてたなんて、言えない。
「私……友達居なくて、一人でご飯食べてるのを見られたくなくて、だから、いつもここに来るの」
自分で言ってて寂しいわ‼︎ 別に、私友達なんか欲しくないもん‼︎
「えっ? へぇー……何か、そっとしておこうと思ったんだけど、十分前くらいに背伸びした時、目合ったよね? だから、っていうと変かもだけど、声掛けてみたいって思ったんだよ?」
「へぇー……そっか。……あなたは、何でこんな所に来たの?」
「何でだっけ? 忘れちゃった! あなたとかやめてよ! 私の名前は結糸らん。らんって呼んで! 君は、なんて名前なの?」
「……私の名前は、竜胆なつめです」
「じゃあ、なつめって呼ぶね?」
「えっ、はい……」
めっちゃフレンドリーに接して来られるし。こんな、誰も来ない様な非常階段で、一人でおにぎり食ってる奴なんか普通不気味じゃないか⁉︎ 良い人そうだけど、嫌な出会いだしあんまりお近付きにはなりたくないな。
「敬語止めてよー! 同い年じゃん!」
「あぁそうです……ねっ? へっ? 同い年なんですか?」
「あっ、そうかなぁって思っただけだよ?」
「何年生ですか?」
「二年……二組だよ?」
「本当に同い年だ。なんで分かったの?」
前から、知ってた?
「いや、なんか、二年っぽいなぁって思ってさ! 私そういうのピンと来るタイプなんだよねぇ」
コイツなんなの? 怖いんだけど……
「へぇー……じゃあ、もうすぐ昼休みも終わるから、教室に戻るね」
「あっ、はっ、一緒に戻ろうよ?」
「えっ……あなた……らんは、ここに用事がある訳じゃ無いんだ?」
「無いよ? こんな誰も使わない階段に用なんてある筈無いじゃん?」
じゃあ何故来たし? 不気味過ぎんだけどこの女。……私も同じ様なもんか。
「うん。そうだよね。教室に戻ろう」
「う、うん!」
らんの初対面の印象は最悪だった。ただただ、怖かった。二人で教室へ向かう時も、会話の一つも無かった事を今でも覚えている。




