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スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
42/50

百四十二頁    猫 弍拾弍   『兄と妹』

 百四十二頁

 

 猫 弍拾弍

 

『兄と妹』

 

 わんちゃんの家に着いた。

 

「あっ、二人共こっちにいらっしゃい? 話しをしよう」

 

 猫は、心ここに在らずなんだよ。

 

「あっ、お母さん、さっき電話で伝えた事だけど?」

 

 タツ兄とマリパの件ね。

 

「それは全然オッケーよ! 私達の力、試す時が来た様ね!」

 

「えっ?」

 

 わん母は、子供に混じって一緒にやるつもりだったんだよ⁉︎ 流石に静観すると思っていたんだよ……

 

「全部で五人になるな? あたしと猫宮でチーム組むか? じゃないとパワーバランスおかしくなるし」

 

 わんちゃんお前も参加するつもりだったのか⁉︎

 

「あっ、猫はタツ兄が来たら部屋に戻るのだから気にしないで欲しいんだよ。四人で楽しく、猫が一昨年のクリスマスプレゼントの為に、数ヶ月前から買って買ってと母におねだりしたおかげで手に入れたマリオパーティーを存分に楽しむと良いんだよ」

 

「恨み節が漏れてんぞ? 存分に楽しんで欲しいなんて一ミリも思ってないだろ?」

 

 わんちゃん? へっ? 猫そんな嫌味ったらしかったかな?

 

「なんで? 猫ちゃんも一緒にやろうよ?」

 

 わん母が濁りの無い宝玉の様な瞳を向けて言った。

 

「猫は……今から来るタツ兄の事が嫌いなんだよ。だから、友達も来ると言っているし、その場に居たく無いんだよ……」

 

「そっか……ってか琴子⁉︎ 火を付けたとかって話し、詳しく教えて貰おうか⁉︎」

 

「あっ、それは……」

 

 ピンポーン

 

 チャイムの音が鳴った。

 

「チッ、話しは、パーティーが終わった後にキッチリしてもらうからね?」

 

 パーティーするんだ? 結構な話しだと思うんだけど先送りにするんだ?

 

「猫は、観たいアニメもあるから、部屋で携帯で動画観てるんだよ」

 

「えっ? 猫宮兄貴の紹介くらいしてくれよ?」

 

「会いたく無いんだよ」

 

「なんで?」

 

 …………

 

 猫は、何も応え無い。

 

「……分かった。猫ちゃん? お兄さん達が帰ったら、一緒にご飯食べようね?」

 

 何時の話しをしている? 昨日は日付け変わってもゲームしてたけど?

 

「うん」

 

 猫は、わんちゃんの部屋に立て籠った。中に入り、ドアに背を向けて体育座りして、誰も入って来れない様にした。まぁ誰も入って来ようとなどしないけど。玄関辺りの会話が微かに聞こえて来る。

 

「あっ! はじめまして! 猫宮タツヤです!」

 

 死ねば良いのに。何を外面で会話している? お前はそんな人間じゃないだろ? まぁ、ここ数年は会話も殆どしてないけど。でも猫は、お前の事が、大嫌いなんだよ‼︎

 

 …………

 

 今頃は、四人で楽しく猫のマリオパーティーで盛り上がっているのかな?

 

 アニメでも観ようかな……でも、アマゾンプライムは月額安いけど、観れるアニメ少な過ぎて困るんだよ。アレ観たい気分なのになぁって時に無い事多いんだよ……ユーネクストは多いっぽい。でもエロいのまであるせいでアマプラの四倍の値段だし。dアニメストアも多いみたいだけど、クレジットカード無いと入会出来ないみたいなんだよ。

 

 観たいアニメも、何かやる事も無いんだよ……ってかみんな、何の話ししてるの? 猫の話しとか、して無いよね? 

 

 …………

 

 嫌、嫌ァ……みんなの話題に上がって、笑われるの、嫌だ。

 

 部屋に置いている荷物の中から、チュン太とコン太を取り出した。

 

「チュン太? コン太? ヂュキヂュキィィ……ふふふっ……なんて言ったか分かんないって? なぁんで? 好き好きぃって言ったんだよ? 耳腐ってるんじゃないのぉ? ねぇ? ふふっ……パオン太……うぅぅ……ううぅ……パオン太ァ……」

 

 良いでしょ別に。一人で泣く事くらい。丁度一人きりになれたし、誰に咎められる事でも無いんだよ‼︎

 

「チューン太、コーン太」

 

 せめて生き残った二人にはと、ヌイグルミ同士でチュッチュさせた後、枕元に置いた。

 

「琴子ちゃんも琴子ちゃん母もマジ強すぎぃ!」

 

 ……うっせぇな? タツ兄の声が響いて来る。もう嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。猫を地獄に堕とした癖に、楽しそうにするなよ。お前は、誰の屍の上を生きているのか分かっているのか? ちょっとだけ……話しを盗み聞きしてみるか。

 

「お前ら兄妹、雑魚過ぎなんだけど⁉︎」

 

 わんちゃん? 聞こえてるよぉ? 昨日猫が言った事は忘れてしまったのかなぁ?

 

「イチカも弱いんだ? だからアイツ俺がマリパやってる時顔出さねぇのか?」

 

 はっ? 違うよ。お前が言ったんだろ⁉︎ 猫は馬鹿だから、友達に知られるの恥ずかしいって。だから、付いて来んなって言ったではないか⁉︎

 

「タツヤ君は、イチカちゃんの事、嫌い?」

 

 わん母⁉︎ そんな質問やめてよ……とか言いながらリビング近くまで近寄ってしまってはいるんだよ……みんなの声が鮮明に聞こえるんだよ……

 

「嫌い? そんなんじゃなくないですか? 家族だし」

 

「家族同士でも、好き嫌いはあったりするものでしょ?」

 

「まぁ……やっぱ母とは話しする頻度高いし、ってのはあるけど……でも、家族に優劣なんか、付けられなくないですか?」

 

 何を言っている? タツ兄は、猫の事が嫌いなんだろ……? 人の家だからって自分を良く見せ様とするんじゃないよ。

 

「そうね。私達の家は三人家族だけど、どっちの方が好き、なんて事は無いわ」

 

「じゃあ、何でそんな質問したんですか?」

 

「家族でもね? すれ違ってしまう事ってあると思うの。そのまま、お互いに話しをする機会が減って、誤解が解けないままになっているんじゃないかって、思ったの」

 

「なんの話しをしているんですか?」

 

「イチカちゃんの事、あなたは、どう思ってる?」

 

「えっ? ……妹です。ただの……」

 

「好き? 嫌い?」

 

「…………家族です。好きとか、嫌いとかいう話しじゃない気がします。アイツは妹で、俺は、お兄ちゃんなんです」

 

「そうだね……」

 

「でも……いつからかアイツ、俺の事避ける様になって。昔は、小学校低学年くらいまでかな? アイツいっつも俺に付いて来てて、公園で俺の友達と一緒に遊んだりしてたんです」

 

 それが、お前にとって迷惑な事だったんだろ?

 

「懐かしいなぁ。イチカちゃん」

 

 えっ? タツ兄の連れて来た友達が喋った。あの当時居た人なの? 流石に声も変わってるだろうから、思い出せないんだよ。

 

「翔太も、よくイチカの事聞いて来るもんな?」

 

 えっ⁉︎ 翔太君⁉︎ 懐かしいんだよ。翔太君は優しくて好きだったなぁ。木の棒に野良犬の糞を突き刺して、追いかけ回すとヒィィヒィィ言いながら逃げ回るものだからとても印象に残っているんだよ。

 

「うん。とっても明るくて楽しい子だったからさ、急に顔出さなくなって、何度も現状聞いたりしたよね?」

 

 そうだったんだ? ……ってか、犬の糞持って追いかけ回された女の現状そんなに聞きたくなる?

 

「まぁ、やっぱ妹だからさ。男と女ってだけで、歳も一つしか離れてないのにこんなに気持ちが分からなくなるんだなって思ったよ。カズ兄は歳離れてるし」

 

 気持ちが、分からなくなる? お前は、何を言っている?

 

「タツヤ君? はっきりと言って欲しいの。イチカちゃんの事、好き? 嫌い?」

 

「えっ? ……だから、家族です」

 

「二択だよ。好き? 嫌い?」

 

「……妹の事が、嫌いな兄貴なんて、居る訳無いでしょう?」

 

 ……えっ?

 

「好きって、事だね? だってよ猫ちゃん?」

 

 えっ、えっ? 盗み聞きしてるのバレてた⁉︎ そんな筈無いんだよ! 取り敢えず、地蔵の様になってこの場をやり過ごそう……

 

「おい猫宮? ドアのガラスにお前のシルエットが丸見えなんだよ‼︎」

 

 ヒィィィィィィィィィィィィィィッ‼︎ これバレてたのか⁉︎ うぅ……恥ずかしいんだよ……

 

 キィィィ……

 

 ドアが、何者かの手によって開かれた。「イチカ?」名前を呼ばれた。顔を上げると、タツ兄が状況を全く理解していない様な顔をして突っ立っていた。

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