表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
39/50

百三十九頁    死神 壱   『マヴェロ・マノフスキー』

 百三十九頁

 

 死神 壱

 

『マヴェロ・マノフスキー』

 

 この世に天使など、女神など居ない‼︎ 居るのは神と死神だけだ……

 

 とは言っても、死神のやる仕事など雑用しか無いのだけどな。

 

 我々死神は、ヒトへ関与する事が出来ない。じゃあ何すんの? と皆さん思う所であろう。我々は、魂を貰ったヌイグルミ達を制御する仕事をしている。

 

 少し前に、我は誕生した。経緯を話そう。天寿を全うした我は、天界にて役職を振り分けられる事となった。

 

「あちらに振り分ける係の方が居るので、列にお並びになって次の転生先をご確認下さい」

 

 こんな事務的なんですね? 我は、その時には前世の記憶も無かった。まぁなんでもいっか、くらいの軽い気持ちでその列に並んだ。

 

 前に並んでいた者達が、次々と転生先を振り分けられていく。

 

「あなたは、牛です。あなたは、シマウマです。あなたは、マントヒヒです。あなたは、引潮です。あなたは、おにぎりです。あなたは、林檎です。あなたは、胡麻です。あなたは、マロニーです。あなたは、庭です。お前は、ワゴンRです。あなたは、ルビーです。あなたは、屏風です。あなたは、武士です」

 

 しりとりになってる⁉︎ あと、一人だけお前って呼ばれてたのはなんで? 疑問はそのまま解消せず、我の番になった。

 

「あなたは、死神です」

 

「死神⁉︎」

 

 はぁァッ⁉︎ 死神⁉︎ ……へっ? 死神? 世に死神って居たの?

 

「ちょっと? 死神ってマジっすか?」

 

 振り分けた方に聞いてみた。

 

「あなたは、ミノムシです。あなたは、ショウジョウバエです」

 

 こっちの話しは全然聞いてくれない。ってか一つ後ろだったらミノムシだったの⁉︎ 二つ後ろだったらショウジョウバエだったのかよ⁉︎

 

 大人しく、転生先の説明をしてくれる係の人の元へ向かった。

 

「あなたは、屏風として風をふせいで下さい。あなたは、武士として誇り高く生きて下さい。もうこの世に武士居ないけど」

 

 前の人達の転生先の詳細伝えてる。次は我の番だ。

 

「あっ、あなたは……死神は新しく出来たやつなので三十二番の窓口まで行って詳細を確認して下さい」

 

 新しく出来たやつなの⁉︎ 嫌だよ。無難に動物とかが良かったよ。

 

 まぁ文句言っててもしょうがないので、三十二番の窓口を訪ねた。

 

「あっ、宜しくお願いします! 案内を担当するミクニと申します! 死神の業務内容ですよね?」

 

「えっ? まぁ……ってか、死神って、人の命奪うみたいな事ですよね? そういうの、わたくしの性分には合っていないと思うのですが?」

 

 我は、虫も殺せない程の意気地なしだった。

 

「そうですよねぇ……そう仰る方多くて……でも振り分けられた以上は、天寿を全うしないと輪廻転生出来ない仕組みになっているので、大人しく死神の業務に励んで下さい」

 

「具体的に、わたくしは何をすれば良いのでしょうか?」

 

「まず、一人称を決めてもらいます。あなたの思う死神っぽい一人称はなんですか?」

 

「へっ? 我、とかかな……」

 

 それから、我の一人称が定まった。

 

「あと、死神って言ってもヌイグルミ達の監視です! 前の神が面白半分でやり始めた事が、今大きな問題になっているんです!」

 

「面白半分? 一体、前の神は何をしたというんですか?」

 

「ヌイグルミに、魂を持たせてしまいました」

 

「へぇー……」

 

 そうなんだ? で? だから何?

 

「物に魂を宿らせる権利を神は持っています。別にそこまでは良いのですが、ヌイグルミにだけ、特殊能力というものを与えてしまったのです」

 

「特殊能力?」

 

 どういう事?

 

「超能力の様な力……まぁ、分かりやすく言うとジョジョのスタンドとか、ハンターハンターの念能力みたいなやつです」

 

 あーそういうやつか。ワンピースの悪魔の実とか、ヒロアカの個性みたいなやつね?

 

「それの何が問題なの?」

 

「実は……各地でヌイグルミ達の特殊能力バトルが繰り広げられているのです。ヌイグルミは喋る事も動く事も出来ませんが、その特殊能力を使って持ち主に自分をアピールしたり、気に入らないヌイグルミを始末しようとしたりするんです」

 

「えっ? そんな異能力バトルが日常で繰り広げられていたのか⁉︎ 全く気付かなかったよ」

 

「本当、先代の神の尻拭いは大変でしたよ。ってか、昔は良かった。ヌイグルミの特殊能力にヒトが気付いたとしても、そんな事を周りの人間に吹聴しても誰にも信じてもらえない。能力を使う事をそのヌイグルミが繰り返せば、こちらで始末する事が出来たので、そんなに大きな問題にはならなかったんです」

 

「えっ? 別にそれで良くないですか? 死神の仕事って、何をするんですか?」

 

「それで良くないから死神って役職が出来たんでしょうが⁉︎ 手が行き届かなくなった原因は、携帯電話の普及です。ヒトの化学への執念にはドン引きですよ! まさかあんな手軽にビデオカメラの役目を果たす物を開発するなんて。ヌイグルミが調子に乗って特殊能力を使い、動画を撮られてSNSにアップされたら終わりです。新しく作られた役職、死神の方達には、特殊能力を使うヌイグルミ達を、取り締まってもらうという急務があるんです!」

 

 へぇー。

 

「ここ、本当に死後の世界ですか? わたくしは本当はまだ死んでいなくて、夢を見ているだけなんですかね?」

 

 だって、少年漫画でもボツになる様な設定だぞ?

 

「アハハッ! やだもぉ! ちゃんと死んでますよ? 笑わせないで下さいよ!」

 

 何故ウケる? わたくし……我は、大真面目だよ?

 

「ヌイグルミが特殊能力を使う時とか、そんなピンポイントで発見出来なくないですか?」

 

「それを開発するのに手こずったんですよ! ブルマがドラゴンレーダーを造ったみたいに、私達も造ったんです! ヌイグルミが特殊能力を使った時に反応するレーダー、名付けて、スタンドレーダーを!」

 

 スタンドレーダー? それって、ジョジョの世界観に随分引っ張れてるね? だってヌイグルミの後ろに更にスタンド立ってる訳じゃ無いもんね? まぁ、名前なんか何でもいいか。

 

「そのレーダーを見て、ヌイグルミ達が力を乱用していないかどうかを取り締まる係という訳だね?」

 

「理解が早くて助かります! 名前は、何にしますか?」

 

「えっ? 自分で決めるの?」

 

「はい。ヒトとか動物とか虫とか肉うどんに転生される方には必要無いのですが、どうしても死神という役職の方達とはコミュニケーションを取っていかないといけません。その時、名前が無いと不便なんです」

 

 そうか、ヒトは親から名前を貰えるからな。肉うどん? そんなもんに転生させられる奴も居るのか? お気の毒に。

 

「名前か……急に言われても困るものだな……だって、これからずっとその名前を使う訳だろ? 悩まない筈がない」

 

「まぁ確かに。死神って新しく出来た役職だし、どんくらい続ければ天寿を全うした扱いになるのかも分かりませんし」

 

「そうか……選ばれた以上、頑張りたいとは思うけど、終わりが見えないのは少し不安だな……」

 

「えっ⁉︎ そんな簡単に頑張りたいって思えちゃうんですか⁉︎ 順応性高ぁぁ」

 

「何がいけないんだ? 君みたいな若い子には理解出来ないんだろうけどね‼︎」

 

 あれ? なんだ今の想いは?

 

「ウフフッ、現世の記憶は残って無いですよね? でもね? 微かに残り香みたいな程度には残ってるみたいなんです。あなた、現世ではサラリーマンだったんじゃないかな? 一つの会社に、定年までずっと勤務してたみたいな!」

 

「そうなのかも、しれない……それの、何が可笑しいんだよ……」

 

「えっ? 違う、違うよ⁉︎」

 

「少なくともわた、じゃなくて我は、何十年間も勤めている会社の為に働いたのだとしたら、自分の事を誇りに思うよ」

 

 多分、そうだったんだと思う。そんな人生が、楽しかったと言えるのかと問う人も居るのだろう。でも、我は、そんな人生を素晴らしいと思う。会社から、家族も居たりしたのかな? そこから、逃げずに立ち向かった。誰にも非難される筋合いなど無い!

 

「私も、そういうの素晴らしいと思いますよ」

 

 若造が、分かった様な口を聞くなよ?

 

「青二才に何が分かる? 継続する事の大変さが、お前に分かるか⁉︎」

 

「あぁ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ無かったのに……本当は、訳分かんないままここに来る人達を鼓舞して、背中を押してあげないといけないのに。私、やっぱり向いて無いのかなこの仕事。案内役も、満足にやってあげられない」

 

 ちょっと、言い過ぎたと思うよ。

 

「……まだ始めて間も無いんだろ? 君のおかげで、色々と自分の気持ちを見つめ直せた。君はとても、伸び代あると我は思うんだ!」

 

 本心だよ? ってか、案内してくれる子が君で良かったまである。

 

「……ありがとう。私ね? 案内係やり始めて、今年で丁度百年になるの。それでも、新人さんに間違われちゃうんだね、伸び代? もう、無いよ」

 

 デェヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎

 

 違う……違う‼︎ そんなつもりじゃ無かったんだ⁉︎ この子を、笑顔にしてあげたい。だってこの子は頑張ってる! 百年も社畜をやって、こんなに明るく新参者へ案内が出来る! この子を、一番日の当たる場所へ連れて行きたい……

 

 ……我に、こんな死後の世界で目標が、夢が出来た。

 

「ミクニ? 我に、相応しい名前を付けろ!」

 

「えっ? ……急に、どうしたの?」

 

「我は、ミクニ、お前の為に働く。お前の為だけに頑張ってみせる‼︎」

 

「そんな……新しい役職だし、気負わない方が良いよ? だって、分からない事だらけなんだよ? あなたは……失敗するのが、怖くはないの?」

 

「我は、失敗しない。君は、信じてくれるか?」

 

「…………」

 

 沈黙、だろうね。

 

「信じているとも、信じないとも言わない。君は、卑怯だ!」

 

「私は……」

 

「でも、君が一番信じられないのは、自分自身なんだろ?」

 

「…………」

 

 間違ってたらごめんなさい。

 

「自分の事を好きになれないから、ずっと迷ってる。君の危惧しているそれは、世を円滑に回す為の事柄なのか⁉︎ 我が、君の不安を言い当ててあげるよ! 君は、自分が案内した人が失敗する度に、優しい言葉を掛け続けているんだろ? そして、その言葉が正しかったのか、いつまでも自問自答している!」

 

「だってそれは……私が、私の案内の仕方が悪いから‼︎」

 

「違う。君は、やるべき事をやっている。ちゃんと案内をしても出来ない奴、そういうのはザラに居る。君の責任じゃ無い」

 

「でも私は……私は……百年やっても、誰の事も上手に導く事が出来なくて。ねぇ? おかしいよね? こんな奴が、案内役やってるだなんて。そっか、やっと気付けたよ。私じゃ、駄目なんだって。上司に、辞表を出すよ」

 

「そっか、君がそう決めたんなら、仕方無いね」

 

「ごめんね? こんな不甲斐ない案内役で……」

 

「でも、もう少しだけ、待っていろ‼︎ 百年もその仕事を続けたんだろ? なら、もう一年だけでも待ってみろよ!」

 

「なんで?」

 

「我が、この世の全てを統べてやる。いずれ、神となってみせる‼︎」

 

「ちょっと……本気で言ってるの?」

 

 引くなよ?

 

「本気さ。我を案内したお前は大金星だぞ? 我はお前に、自信というものを与えてやる」

 

「あはっ……ありがとう。なんか……元気出たよ!」

 

「我は本気だ。その代わりにお前は、我に名前を与えるんだ」

 

「名前か……それじゃあ、マヴェロ•マノフスキー」

 

「ほーう。マヴェロ•マノフスキー……我の名前はマヴェロ•マノフスキーだ‼︎ ……あの……意味は?」

 

「無いよ! 響きで決めたの! 格好良くない⁉︎」

 

 マヴェロ•マノフスキー……格好良いかな? でも、君がその名前を付けてくれたってだけで、我には勇気が溢れ出して来ていた。

 

 我が、必ず死神のトップに立ち、ミクニの自信を取り戻してみせる! この世の王に、我はなる‼︎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ