表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
37/50

三十七頁    象 参   『毎日が金曜日』

 百三十七頁

 

 象 参

 

『毎日が金曜日』

 

「ヌイグルミを駆逐する為に人類が取った次なる策は、対ヒトへは非人道的という理由で使用を永久凍結された筈の化学兵器だった。ヌイグルミ勢の本拠地となった日本の中心にその兵器を落とす報道が全世界に向けられて発信された」

 

 チュン太の紡ぐ物語もいよいよ最終局面だな。

 

「う、うん……それで?」

 

 気になるよな? でも、僕は寝ているていだし……

 

「今日はここまで!」

 

 んだよ⁉︎ まだイチカ帰ってねぇだろぉが‼︎

 

「そっか! 気になるけど……」

 

 だよなぁ? コン太気になるよなぁ⁉︎

 

「今日お昼からだったし! パオン太起きるかもしれないから……」

 

 嫌がらせはまだ続いている。連載始まってもう十年近くなるぞ? まぁ途中で短編挟んだりしてくれたけど。そろそろ僕も、その輪に入れてくれて良いんじゃないかな?

 

「そっか……ってか、日本にはまだ、ヌイグルミ界のレジェンドヒーローだけじゃなく、それの主人、ヒトもいっぱい残っているよね? そのヒト達もまとめて世界は、その非人道的な化学兵器を使って日本を壊滅させるの⁉︎」

 

 そうだよ。日本列島を粉々にする威力を持つ化学兵器があるっていうのは伏線に散りばめられていた。でも今! それを使ってしまったら、沢山のヒトの命さえ奪う事になるんだよ? それを、世界が承諾したっていうのか?

 

「そう。非人道兵器だからこそ、世界からの了承を得たとしても、発射までに時間が掛かる。日本にはまだヒトが居る事を世界の人々が知っている。世界中の人達は、ドールホルダーの人権を主張したりしている」

 

 ドールホルダーとは、人形と心を通わせ、人類に立ち向かうヒトの事を指した言葉だ。

 

 その者達は、ヌイグルミを滅する世界の流れに反抗し、相棒のヌイグルミと共に戦いながら、日本に集まり、大きな力を手に入れようとしていた最中の出来事だった。

 

「それなら! 世界は……日本に化学兵器を使ったりしないよね⁉︎」

 

「残念だけど……」

 

 いや! 物語なんだから‼︎ 作者であるチュン太なら止められる筈だよね⁉︎

 

「そんなの、おかしいよ‼︎」

 

「その為に猶予を与えたの。世界を納得させる為にね。その猶予の期間までに日本から脱出する様に世界に発信したの」

 

「そうだったのか……じゃあ、日本に居るヌイグルミとドールホルダーも、その化学兵器から逃げられるって事だよね?」

 

 でも、それじゃあ……

 

「違うの」

 

「えっ?」

 

 わざわざ敵が、化学兵器を使う意味が無い。

 

「日本にだけは、その報道が伝わっていないの」

 

「どういう事?」

 

「前回の戦いでヌイグルミホルダー達は、通信をシャットアウトして、日本を鎖国の様な状態にする事で優位を取ったでしょ? それが仇となったの」

 

「そんな……」

 

 マジかよ。でもあれが無ければ、ワンダワンもトカゲの助もちょうちょキングも死んでた。相手の対応が鬼だとしか言い様がないよ⁉︎

 

「鎖国している事を世界の人達は知らない。それを更に逆手に取ったヒト側の卑劣さといったら……」

 

 だから、自分で書いてるんだろ? どうにかしてよ?

 

「許せないよ……それで、日本を壊滅させて勝利? だれがそんな結末望むんだよ⁉︎」

 

 コン太が、今までで一番感情的になった。僕の言葉を代弁してくれていた。

 

「今日はここまで! またね?」

 

「うん……ってか! 気付いたらイチカが部屋に向かって来てるよ⁉︎」

 

「本当だ!」

 

 ガチャッ

 

「はぁ……やはり我が部屋が一番落ち着くんだよ。パオン太? チュン太? コン太? 今日も、猫の部屋の見守りご苦労様である!」

 

 イチカが僕達に敬礼した。ここ三日くらいはそうしている。後二日もすれば飽きておやすみとだけ言うのだろう。でも、毎日僕達に一言だけでも話し掛けてくれて、ありがとう。

 

 イチカがベッドにドサッと倒れ込み、目をゴシゴシしながら独り言を喚いた。

 

「あぁぁ……にぃゃぁぁぁぁぁ‼︎ はぁ……もう土曜日終わりなんだよ。明日は天羽とわんちゃんと用事あるし。最近土曜日が一番自由なんだよ。土曜日が一番好きまであるんだよ。いや、いざ土曜日になると、やる事無い事に気付いて、焦って、チャリで遠出して何の成果も得られず、何時間も掛けて帰って来る土曜日を繰り返している。土曜一番辛いまであるんだよ。実質金曜日が一番楽しいんだよ! 明日休みだなぁってワクワクしてる金曜日が一番楽しいんだよ! 毎日が金曜日だったら良いのになぁ……」

 

 毎日金曜日だったら、休み無いよ?

 

「今日もサブスクでアニメ観ながら寝落ちするんだよ」

 

 本当助かるんだよなそれ。基本僕ら暇だからさ? ただすぐバッテリー切れして落ちるから、続きが気になって仕方ない。充電しながら観てよ? でもそうなるといつまでもアニメ垂れ流しで、僕らは寝る事が出来なくなってしまう。

 

 今日もあっという間にイチカは寝息を立て始め、見てたのか? と問い詰めたくなるタイミングで携帯のバッテリーも切れた。

 

「ねぇ? 起きてる?」

 

 はいはい。またこの時間が来たよ。チュン太がコン太に話し掛けてる。でも、今日は昼間話していたから、夜の部は無いんじゃないの?

 

「…………」

 

 コン太も今日は寝ているみたいだ。

 

「ねぇ? 寝てるの?」

 

 無駄だよ。今日はもう起きないよ。

 

「パオン太……昼間寝ていたのに、夜も寝ちゃうの?」

 

 へっ?

 

 ぼっ、ホボボボボボ僕ゥゥゥゥゥウッ⁉︎ この女が、一体僕になんの用があるというんだ⁉︎

 

「……ぼ、僕は、起きているよ?」

 

「あっ、やっぱり起きてた! お昼寝するって言ってたから、流石に夜は寝付けないんじゃないかと思ったんだ」

 

「そ、そうだね。しくじったみたいなんだよ。二人がよくお昼寝してるから真似してみたけど、昼に寝るもんじゃないね」

 

 チュン太とコン太は夜中に朗読会をやっているせいか、お昼寝をよくしていた。ってか僕もこっそり聞いていたので、二人がお昼寝する時に僕も仮眠をとっていた。でも今回は、チュン太の話しの続きが気になり過ぎて寝れなさそうだったので、「お昼寝しよっかなぁ」と言って、急遽昼の部の朗読会を開いてもらったのだった。

 

「パオン太と、二人で話したい事があったの……」

 

 ……えっ? えっ、なんで? だって君は、僕をずっと蚊帳の外にして来たじゃないか?

 

「どんな事?」

 

 話したい事……僕には、何一つ心当たりが無いよ。

 

「私ね……恋、してるみたいなの……」

 

 …………

 

「はっ? はっ、はっ、はっ、はァァァァァァァァァァァァァァァァァッ⁉︎」

 

「ちょ、ちょっと‼︎ 大声出さないでよ⁉︎ コン太が起きちゃうでしょ?」

 

 ぼ、僕が大声出してた? アレッ? 僕は沈黙を貫いたつもりだったんだけど、心と口に出す言葉がまさか、入れ替わってる⁉︎

 

「そんな……君の名はじゃ無いんだから……それも違うか? 身体が入れ替わってる訳じゃ無いし」

 

「君の名は? 急にどうした? イチカが観てたやつだよね?」

 

「い、いやっ⁉︎ 何故そっちが口からこぼれる⁉︎ それは心の声の方だろ⁉︎」

 

 いや、何でもないよ? ちょっと驚いただけさ。

 

「どうしたのパオン太? いつものあなたらしく無いよ?」

 

 それは、君がいきなり告白なんかして来たからだよ……

 

「絶対そうだよ‼︎ こんな経験、無かったからさぁ⁉︎ だから今僕は……こんな惨めなムーブかましてる。童貞の様なムーブかましちゃってるんだよ‼︎」

 

「えっ、童貞? 童貞のムーブ? なんの事?」

 

「ヒィィィィィィィィィィィィ……やっぱ、心で思ってる事と口に出す言葉が、入れ替わってる……」

 

 ぼ、僕は⁉︎ 僕の伝えたかった言葉は……

 

「ふふっ……パオン太、面白い人だったんだね? そんな一面、今までだって見せてくれたら良かったのに?」

 

 意外と好印象なんだ⁉︎ あれ? これ心の声だったんだけど、口に出して無い。やっと治まったか? 冷静になれ。彼女は、勇気を振り絞って僕に告白してくれたんだぞ⁉︎ 僕がバグってる場合か⁉︎ 童貞だという事を忘れるんだ‼︎ ちゃんと、その告白に返事をしてあげるんだ‼︎

 

「ヴェオオオ……クモ……ウヲォォォォォォォォォォォォォォォォオッ‼︎ エナジー……プリィィトゥリィヤァァヲォォォォォォォォォォォォォォォォオオオッ‼︎」

 

 ち、違う違う‼︎ 僕も同じ気持ちだよって言いたかったの‼︎ なんで⁉︎ なんでこんな大事な時に‼︎ ちゃんとこの想いを伝えられないんだコンチクショォォォォォオオオガヨォォォォォォオオオッ⁉︎

 

「パオン太聞いて? 私ね? ……コン太の事が……好きみたいなんだ!」

 

 何をやっているんだ僕ワァァァァァァァァッ⁉︎ 抑えろ! 抑えろ‼︎ 抑えろよ⁉︎ 初めて告白されたからって浮かれてんじゃねぇ‼︎

 

「ヴェェヴェェェ……」

 

 魔物か僕は? 本当は、ごめんねって言いたかったんだ。なのに、なのによォ? ちゃんと喋れやマジでよォォォォォォォォォォォォオオオッ⁉︎

 

「いつの間にか、コン太がこの心の真ん中に居たの。恋をしてたの。だから、恋愛相談に乗ってもらいたくって……あなたは面倒臭がるって思ってた。でも、胸が苦しくて。誰かに話さない訳にはいかなかったんだよ。コン太が寝てる今、この溢れ出してしまいそうな想いを、あなたに話してみたの」

 

 あ、あぁ……よし‼︎ やっと、心を取り戻せた‼︎ はず……だ、だって、チュン太の言葉の尻の部分は聞き取れたし! 「この溢れ出してしまいそうな想いを、あなたに話してみたの」……辛かったんだな? 僕に想いを伝える事が出来ず、何年間その恋心を縛り続けた? コン太にも相談出来なかったのか? 仲は、悪く無かった筈だよね? まぁ、こうやって、僕に告白出来たのが、君の強くなった証なんだよ。それを伝えたい。

 

「ヴェ……ヴァなしでブレテ……ありがとう」

 

 あぁ、良かった。ありがとうって、ちゃんと伝えられた。

 

「私の方こそ、こんな話し聞いてくれて、ありがとう」

 

 回り道したけど、お互いの想いは、通じ合ったんだね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ