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スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
30/50

百三十頁    猫 拾玖   『地獄のパーティー』

 百三十頁

 

 猫 拾玖

 

『地獄のパーティー』

 

 楽しいパーティーの始まりなんだよ!

 

 猫はクッパ、わんちゃんはピーチ、わん母はキノピオ、CPUにマリオでその宴は幕を上げた。

 

 まず驚いた事は、わん母が微妙に上手い。CPUの設定を、いつも最弱にするのだけれど、今回は真ん中にしてみた。なのに、ミニゲームで八割くらいは勝ってる。そのCPUに猫はボロ負け。頂点に君臨するのが、わんちゃんであった。

 

 途中でわんちゃんが、「……ってかさぁ⁉︎ よく考えたらピーチとクッパ、すごろくする仲になってんじゃん? これ、ネタバレじゃねぇの?」と、言って来た。猫は、負けまくっていて、苛々してしまっていた。だから、はっきり言ってしまった。

 

「将来の楽しみにしているとか言うから、その将来そんな無垢なままじゃ可哀想だからぶっちゃけるけど、初期のマリオにストーリー性なんか無いんだよ‼︎ マリオがクッパからピーチ助けて終わりってだけのストーリーなんだよ‼︎ ただただ横スクロールのああいうゲームが無かったから、その手法が革命的だったから神ゲーなんだよ‼︎ 誰も当時のマリオに、感動のエピソードなど求めていなかったんだよ‼︎」

 

「えっ、そうなの……?」

 

 わんちゃんはとても悲しそうな顔をした。心が折れた様に感じた。

 

 結果、わんちゃんはミニゲーム全勝の星十個。わん母が星五個で二位。CPUが星二個で三位。猫は……

 

 何故こうなるか⁉︎ 何故猫は一つも星を持っていないか⁉︎ ってか、わんちゃんは途中心が折れたのでは無かったのか? ミニゲーム全勝ってなんなんだよ? 確かにそれだけが勝負を左右する訳じゃ無い。ただ、すごろくの戦略も上手すぎなんだよ。ってか、一緒にプレイしている人達への忖度くらいあって良い筈なんだよ。ガチなんだよ。ずっとガチなんだよこの女。そして、わん母もずっとガチだったんだよ。やっとこさ猫が手に入れた星を、順位など変わらないのに奪ったんだよ! 奪わない事も出来たのに、奪ったんだよ!

 

 猫は、このゲームが好きで、母とずっと遊んでいたのに、こんなガチ勢にボコボコにやられてしまったせいで、もう……このゲームが好きだと、胸を張って言えなくなってしまったんだよ。

 

「このマップでは、妨害するアイテムが効果的だと思ってたけど、それだと妨害のやり合いで運良く近くに星が来た人が得する感じだったね。マジ良く出来てるわ。サイコロ増やせるアイテムをストックしていた方が実は有利だったんだね」

 

 へっ? 猫には、わんちゃんが何を言っているのかさっぱり分からないんだよ。

 

「確かに。でも今回は、琴子に運が偏ってた様に感じるわね」

 

「何? 珍しいね? お母さんが運を言い訳に使うなんて?」

 

「んっ? だってそうでしょ? 星を獲得出来る位置をランダムに変えるアイテム使って、毎回アンタの目の前に移動したじゃん⁉︎ マジで、運が良くて良かったね?」

 

「そんなん無くても星の差見て分かんない? 実力が違うのよ?」

 

「もう一回やろ? 運だけで勝った癖に、調子に乗るのは早過ぎるんじゃない⁉︎」

 

「運だけとか思ってるんだ⁉︎ あたし、ミニゲーム全勝したんだけど⁉︎」

 

「私初見だし‼︎ アンタ一回やった事あったんでしょ? このコントローラーだって触るの初めてだったし!」

 

「そういう言い訳するんだ⁉︎ 見損なったよお母さん! 分かった。さっきは十五ターンだったけど、次は二十ターンでボッコボコにしてあげるよ‼︎」

 

「ふん! ボッコボコにされるのは琴子、あんたの方だよ‼︎」

 

 いえいえ‼︎ ボッコボコにされるのは猫だけです。ってか、この二人何故猫に視線を向けぬか? 文字通り眼中に無いか⁉︎ ね……猫のゲームなのに……猫の好きなゲームだったのに……

 

 母と二人でマリオパーティーをやっていた時、勿論面白かったのだが、本当は、他の誰か……友達とかと、このゲームをやってみたいなんて夢みてた。今日、その夢が叶った。猫は、このゲームをやり込んでいたから、初心者を思うままに蹂躙出来るだなんて思っていた。違った。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの言葉が頭に駆け巡る。「撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ!」猫は知らなかった。初見でマリオパーティーを無双出来る猛者が居る事に。惨めに蹂躙されたのは、猫の方だった。

 

「じゃあ始めようか」

 

「今度のマップは琴子も知らない所にしてね? じゃないとフェアじゃ無い」

 

「別にさっきのマップもあたし初めてだったけど? 日和ってんじゃないのお母さん?」

 

「まさか? さっさとやるわよ」

 

 猫には何も聞いてくれない……猫が主催のパーティーなのに……

 

「ただいま! ハァハァ……ごめん遅くなって! 琴子の誕生日会に来てくれた猫ちゃんが遊びに来てるって言うもんだから、走って帰って来たよ!」

 

 ナイスタイミングなんだよわん父! 玄関やドア開ける音さえ気付かない程猫は追い込まれていたんだよ!

 

「あら? あなたおかえり。もうそんな時間? ってかもう八時じゃない⁉︎」

 

 そう。マリオパーティーは、時空さえ歪ませるゲームなんだよ。でも良かった。二人が正気に戻ってくれた。猫はもうお腹空いてしまったんだよ。

 

「ゲーム始まる前で良かった。お父さんキャラ何にする?」

 

 はっ? ちょっと待て⁉︎ まだ続けるかこのゲームを⁉︎ わん父は、流石にこんな夜遅くまでお仕事頑張ったんだ。疲れているよね? お腹空いているよね? ゲームを続ける事を反対してくれる筈なんだよ!

 

「猫ちゃんが持って来てくれたんだよね? ちょっと前に恵子からライン来て、マリオパーティー三人でやってるって言うもんだから興奮しちゃったよ! 懐かしいなぁ。昔よく遊んだものだよ! 俺も是非混ぜてくれ!」

 

 ヒィィィィィィィィィィィィィィッ⁉︎ 反対するどころか、ニューゲームを促して来るではないか⁉︎ 何だこの家族は⁉︎ そりゃこの一人娘もモンスターと化すわ‼︎

 

「猫宮? コントローラーってもう一つあんでしょ?」

 

 どれくらい振りなのだろう? わんちゃんが猫に視線を向けたの……とても久しぶりだと感じている。

 

「……ある」

 

 何故猫はコントローラーが四つあるなどと言ってしまったのか? ……だって、あの頃の猫には、未来猫がこんな窮地に立たされるなど思いもしなかったから……コントローラーを一つ忘れてきた事にするか? でも……みんなワクワクしてるのに、猫の嘘でシュンとされるのは、心が痛むんだよ。

 

 わんちゃんの部屋に行って、猫の荷物からコントローラーを取り出し、リビングに向かった。でも、その扉を開けようとした時、手が震えてしまった。

 

 わんちゃんとわん母には、逆立ちしても勝て無い。わん父は、マリオパーティー経験者だと言っていた。……猫、大丈夫かな? 心、壊れないかな? わん父にまでボコられても、二十ターン負け続けても、猫は、マリオパーティーを好きでいられるのかな?

 

 だからと言って、もう後戻りは出来ない。猫は扉を開き、地獄のパーティーが開催されるリビングへと足を踏み入れた。

 

 猫はヨッシー、わんちゃんはデイジー、わん母はワリオ、わん父はルイージでその宴は幕を開けた。

 

 結果、わんちゃんが星十個、わん母が星八個、猫が星三個、わん父が星二個という結果になった。

 

「か、勝った……や、やったやった……わん父? ありがとうなんだよ……」

 

 わん父に感謝を伝えた。一人には勝ったのだから、発言権くらいあるよね?

 

「負けたよ。いや、良い勝負だったね! 猫ちゃんとは……」

 

 やっと分かった。この二人が異常だったんだよ。

 

「ボーナススター一個取られたのが痛かったな」

 

 わん母は、猫達の……雑魚の言葉は耳にも入らぬか? わん父と猫の会話にはノーリアクションで呟いた。

 

「いや、逆にあのボーナススターがお母さんだとしても、コインの差であたしが勝ってたから!」

 

「コインの差で優劣付けるんだ? その仕様私知らなかったし‼︎」

 

「見苦しいと思うんだけど⁉︎ お母さん? ちゃんと負けを認めなよ?」

 

「ボーナススター二つ取ってたら私勝ってたじゃん? 楽勝でしたみたいな気に障る言い方止めてくんない⁉︎」

 

「はっ⁉︎ 別に、楽勝でしたみたいな言い方して無いんだけど⁉︎ じゃあ今度は、スターが同じ数の時、コインが多い方が勝ちってルール頭に入れた上でちゃんと勝負しよ! なんならボーナススター無し設定にしよ!」

 

 えぇぇっ⁉︎ 止めて⁉︎ ボーナススター無しはマジで止めて? さっきも、一番マップを移動しなかった人に贈られるノロノロボーナスでスターを貰えたのに。それ無かったらコインの差でわん父に負けてたんだよ猫は! ガチ勢の戦いに、これ以上猫を巻き込まないでくれ。でも、わん父に勝てたの、めっちゃ嬉しかった。マリオパーティーの事、猫はまだ好きでいられそうなんだよ。

 

「さぁて、今日のご飯はカレーって言ってたよな?」

 

 わん父は晩御飯の詳細を知っていた様だ。ラインで伝えていたのかな? 随分と仲の良い夫婦なんだよ。

 

「何言ってんの? ボーナススター無し設定でもう一回やるんでしょ?」

 

「はっ?」

 

 それ後日の話しじゃ無かったの⁉︎ もう十時過ぎてるんだよ⁉︎ まだやるつもりだったのかよこの主婦は⁉︎ 猫の母よりクレイジーなんだよ⁉︎

 

「付き合うよ」

 

 わんちゃんまで⁉︎ もう猫は……お腹空いてて……次やったら、負けるかもだし……

 

「……そっか。じゃあ二人でやれば良い。猫ちゃん? お腹空いてるだろ? 俺達はご飯を食べよう」

 

 メシア……わん父はこの円環の理から猫を救い出してくれる救世主だったんだよ。

 

「分かった。やるよ? 琴子」

 

「返り討ちにしてやる」

 

 こうして、猫とわん父は地獄のパーティーから抜ける事が出来た。というより、さっきのゲームが始まってから二人は、取り憑かれた様にテレビ画面とお互いの顔を見合っていた。既に猫達の様な雑魚には、興味の欠片も無いのであった。

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