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スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
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百二十六頁    猫 拾漆   『マリオパーティー』

 百二十六頁

 

 猫 拾漆

 

『マリオパーティー』

 

「もういいよ。帰ろう……」

 

 わんちゃんめっちゃ落ち込んじゃったんだよ。言い過ぎたんだよ……

 

 よくよく考えてみれば、ちょっと服がダサいくらいなんなんだよ‼︎ しかも、五年くらい前にお母さんからプレゼントされた服をヘビロテで着てるんだよ⁉︎ 良い話しでは無いか! 大丈夫かなわんちゃん? 今回の事を気に病んでそのクマさんトレーナー捨ててしまったりしないかな? まぁ、とっくにそのトレーナーの寿命は過ぎてるのだけどもね。

 

「わんちゃんちょっと待って欲しいんだよ? 猫のオレンジジュース来たばっかりなんだよ……別に一気飲み出来るけど、それじゃ、こんなどうせ紙パックのやつから注いだのであろう何処にでもあるオレンジジュースを三百六十円も払って頼んだ意味が無くなるんだよ……」

 

「知らね。帰ろう」

 

 もう心はここに在らずなのか⁉︎

 

「ねぇわんちゃん? せっかくここまで来たのだから、猫の家に寄って行くといいんだよ」

 

「はっ? 行きたく無い」

 

「良いではないか? どうせやる事も無いのだろう?」

 

「嫌だ‼︎ 行きたく無い! もう帰る‼︎」

 

 精神がだいぶ不安定なんだよ。このまま見送れば、最悪、わん母にダサいトレーナーを買って来た事を責めかねないテンションなんだよ⁉︎ そんなのわん母が可哀想ではないか。クリスマスにプレゼントした服をずっと着てくれてた娘からある日、周りからダサいって言われたけどどうしてくれんの⁉︎ とか言われたら、わん母が可哀想なんだよ。

 

 何か、わんちゃんの気を引けるものは無いか?

 

「あ、あの? わんちゃんって、ゲームとかする?」

 

 この子は今、とても傷付いている。このまま帰す訳には行かない! 一か八か、誘ってみるんだよ!

 

「やらない。ゲーム機自体家に無いもん」

 

「スマホでゲームしたりはするよね?」

 

「まぁ、その位はやった事あるけど、簡単過ぎてつまんないだもん」

 

「コントローラー使ってやるゲームは、その何倍も難しいし面白いんだよ? マリオくらいはやった事ある?」

 

「あぁ、マリオくらいは知ってるよ。でも今更やれないよ」

 

「どうして? 猫、マリオ系のゲーム大好きなんだよ! 何が気に入らないんだよ?」

 

 やった事も無い癖に。そんな人が低評価押したりするんだよ! 一度でも良いからこの女に、マリオのゲームをやらせてみたいんだよ!

 

「だって今更初代からストーリー追えないもん。マリオってめっちゃタイトル出てんじゃん? 全部やってたら百時間くらいは掛かるんじゃない?」

 

 初代からストーリー追えないもん? 何言ってるんだよ? マリオってそんな、続編からやるとネタバレ食らうみたいなやつだったっけ? 猫も初代などプレイした事無いから、はっきりとは分からないんだよ。

 

「ま、まぁ、猫もストーリーなど気にせずやっているから……多分ネタバレなど無いのではないか?」

 

「本当に? まぁ登場人物と関係性くらいは知ってるよ? ってかあたし、いつかはちゃんとゲーム機買って、初代からやってみたいと思ってるから。出来るだけネタバレ回避したいんだよね。マリオとピーチとクッパでしょ? ピーチがクッパに囚われてるんだったよね? それをマリオが助けに行く所までは知ってる。王道のストーリーだけど、沢山の人が魅了される結末が用意されてるんだろうね? マジ楽しみだわ。自分でゲーム買ってプレイする日がマジで楽しみ! だから、悪いけどネタバレ嫌だからマリオ系はやりたく無いの」

 

 えっ? いや、それでマリオがピーチ姫救って終わりなんだよ。そこに大したストーリーもクソも無いんだよ⁉︎ 猫も古いやつはやった事無いけど、感動のラストなど用意されて無い事くらいは分かるんだよ。

 

「あっ、あのね? わんちゃん……マリオパーティーっていうゲームがあって、猫はいつもお母さんと日曜日にやるのだから、今日も帰ってやるつもりなんだよ。マリオパーティーはスピンオフだから、ネタバレ要素無いんだよ? ちょっと、やってみたいとは思わないか?」

 

「えっ? スピンオフとかあるんだ? ……気にはなるかも」

 

「わんちゃんせっかくこんな遠い所まで四十分も前から来てたのだから、少しくらい猫の家でパーティーしていくと良いんだよ」

 

「……まぁ、帰ってもやる事無いし……」

 

 乗って来たんだよ! まぁ、いざ来るとなったら面倒臭い気がしないでもないけど。でもいつも猫と母は、CPU一番弱い設定にしてるのに勝てないから、初心者が入ってくれるのはちょっとワクワクするんだよ!

 

「お母さんに電話するんだよ!」

 

 母に電話をした。三コールで繋がった。

 

「あっ、お母さん?」

 

「今丁度買い物から帰った所だったよ」

 

「あっ、あの……」

 

「ちゃんとあんたの言ってたお菓子は買って来といたよ! 友達と居るんでしょ? そんな事で電話して来るんじゃ無いよアンタは!」

 

 良かった……母には、友達と遊びに行かないのであればお菓子は絶対に買わないと脅されていた。

 

「って、いや! それが不安になって電話したのでは無いんだよ!」

 

 本来の用件を思い出した。

 

「へっ? まだ何かあんの?」

 

「あの……ここ最近やって無かったから、マリオパーティーをさ……やりたいんだよ……」

 

 あれは麻薬の一種か? という程ウズウズしてくるんだよ。あーやりたい。早く帰ってマリオパーティーがやりたい……

 

「アンタ⁉︎ そんな理由で友達置いて帰って来ようとしてる訳じゃないだろぉね⁉︎ 許さないよ‼︎ そりゃわたしだってパーティーしたくてウズウズしてるさ! まるで禁断症状の様にねぇ‼︎ ……なんなのアレ? 本当に合法なの? その内規制かかるでしょ……」

 

 お母さんもやりたかったのだ! 嬉しいんだよ。席を立って、わんちゃんには聞こえ無い様に小声で喋った。

 

「と、友達がさ? イチカの家でゲームしたいと言うんだよ。だから、三人でマリオパーティーしたいんだよ……」

 

 裏でお母さんに、わんちゃんとか天羽の事を友達と呼んでいるのを知られたく無かった。だから、わんちゃんの前で、母と堂々と通話する事が出来なかった。

 

「良いじゃん。それ良いじゃん⁉︎ アンタと二人でしかやった事無かったから、それ燃えるわ! 分かった、待ってるからね⁉︎ 走って来なさいアンタ達‼︎」

 

 お母さんもやっぱりやりたかったんだ! ……こういう言い方してると、本当に違法薬物の様に思えて来る。

 

「行こうわんちゃん」

 

「そだねー……」

 

 そだねー? 何年前のオリンピックで流行った言葉だよ? 駄目だ。今日はもう使い物にならないなわんちゃん。でもその位で良い。今日初めてお母さんか猫が二位を取れる。

 

 抜け殻の様なわんちゃんを連れて家に着いた。三人でマリオパーティーをやって、わんちゃんがボーナススターを二つとも取った結果、わんちゃん星六個、CPUのピーチが星二個、猫と母が星一個ずつだったのだが、コインの数で猫が三位になった。

 

 最下位になった母が、眉間に皺を寄せて叫んだ。

 

「こんなつまんねぇクソゲーだったのかテメェ⁉︎」

 

「お母さん⁉︎ お、落ち着くんだよ? 猫達の運が、悪かっただけなんだよ……」

 

「いや! なんなら運ゲーのミニゲームの時だけ勝てたわ‼︎ わんわん? これやった事あったの⁉︎」

 

 母は猫がわんちゃんと呼ぶものだから、ちょっと変えてわんちゃんをわんわん呼びしていた。何故ちょっと変えるか? マリオの中にもわんわんっていう鎖の魔物が居るからややこしいんだよ。

 

「えっ? 無いです。ってか、ゲームのコントローラー握るの初めてです」

 

 上手過ぎなんだよ……ミニゲームも強いのだけど、すごろくも戦略立てて立ち回ってたし。今まで母とやって来たマリオパーティーの中で、わんちゃんが無双過ぎて一番面白く無かったんだよ。

 

「冷めたわ。もう暫くこのパーティー開きたく無いわ。わんわんアンタ、プロゲーマーにでもなりなさい」

 

 勝手な事言うんじゃ無いんだよ。

 

「えっ? あたし、そんな強かったですか?」

 

 この女は、本当に分からないのだろうな? その言葉は、煽りにしか聞こえ無い事に。つっても、あれだけの力の差を見せ付けられたら、逆にその位言ってくれた方が気持ち良いくらいなんだよ。

 

「さぁーて。ゲームなどという偽りの世界には別れを告げて、飯でも作りましょうかねぇ」

 

 母が現実に戻った。

 

「お母さん、今日の晩御飯なにー?」

 

「今から考える」

 

「へっ? いつ頃出来るの? イチカ、お腹空いたんだよ……」

 

「アンタ達とマリオパーティーしてたからこうなったんでしょうが⁉︎ ちゃんと材料はあるから大丈夫! マジなんなんだよアレ⁉︎ 使ってはいけない時間を使ってまでやってしまったんだよ‼︎ わたしゃパチンコ依存症者に向けられてる注意喚起の文言に当てはまってるじゃないか⁉︎ お金では無いけど、使ってはいけない時間使ってしまってるじゃないか⁉︎」

 

 何か母が声に出して自分にツッコんでる……一旦そっとしといた方が良いんだよ。

 

「わんちゃん? ご飯出来るまで猫の部屋に来るんだよ」

 

「えっ? マジ……? あたし、そんなにゲーム上手?」

 

 会話が噛み合わない、トリップしてやがる。お母さんにゲーム上手いって言われたのが余程嬉しかったのだろう。

 

「わんちゃん? もう外も暗くなっているんだよ? そろそろ帰ったらどうなんだよ?」

 

 夕飯くらい食べて貰おうと思っていたのだが、トリップしているなら話しは別だ。今すぐ帰ってもらいたいんだよ。

 

「あ、あたし……う、嬉しい……今年に入って初めて人に褒められたし」

 

 猫の言葉を聞いているのか⁉︎ お前が誰に褒められようと、猫の知ったこっちゃ無いんだよ‼︎

 

「良かったね。じゃあ、ちゃんと寄り道などせず帰るんだよ?」

 

「あたし……プロゲーマーになろっかな……」

 

 帰れよ‼︎ いつまでトリップしてるんだよ⁉︎ そんなやり取りをしていると、猫の部屋の前まで辿り着いてしまった。

 

「はぁ……ここが猫の部屋なんだよ」

 

「へっ? 猫宮の部屋⁉︎ あたし何でこんな所まで……」

 

 こっちが聞きたいんだよ。お前は何故‼︎ こんな所まで付いて来たか……?

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