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スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
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百二十三頁    悪魔 玖   『父と娘』

 百二十三頁

 

 悪魔 玖

 

『父と娘』

 

 私の考えが、甘かった。父に、心を込めて想いを伝えれば、改心してくれるだなんて思っていた。違った。いつから垂れ下がっているのか分からない首吊り縄を見て、身体中が、怒りで小刻みに震え出した。

 

 優子が、私の手を優しく握り声を掛けて来た。

 

「真央? 流されんな。だってこれは……」

 

 私は優子の握って来た手を右の掌で包み、優子の目を見た。

 

「……大丈夫。分かってるよ」

 

「今日は、帰らないか?」

 

「ううん。だって、苛々する。いくらなんでも、こんなのあんまりだよ」

 

「でも……そっか。分かった。ちゃんと近くで、見守ってるからな?」

 

「うん」

 

 やっと気付いた。お父さん……いや、この男には。平凡な言葉じゃ通じない。殺すつもりで向き合わないと、心を変えられない。

 

 だって、苛々する。苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々する‼︎

 

 部屋の隅に、いつもの様に丸まっている父親を見つけた。近くにあったゴミ箱を思い切り蹴り飛ばし叫んだ。

 

「いつまで寝てんだしょうもねぇ‼︎ 起きろよ⁉︎ クズ親父‼︎」

 

 ゴミ箱はクルクル回って弧を描き、父の頭上を通り過ぎ大量のティッシュをアル中の達磨に降り注いだ。

 

「えっ? ちょっと、真央?」

 

 優子、黙って見てて。

 

「私は、私が‼︎ オカシクなんないと、このクズ親父とちゃんと向き合え無いんだよ‼︎ 大丈夫だから! 優子は、優子が近くに居てくれるだけで、私、ちゃんと戻って来れるから……」

 

「真央……」

 

 私は、丸まってる父を睨み付け、近付き怒鳴った。。

 

「起きろクズ人間がッ‼︎ どうせ生きてんだろ? 死ぬ勇気すらねぇんだろぉが⁉︎」

 

 湿気って腐った達磨の腹を、何度も蹴り上げ罵倒した。

 

「ま、真央っ⁉︎ や、止めてくれよ……」

 

 娘が家出して、三、四週間振りの会話がそれなの? 情けねぇ……

 

「お前、プライド無ぇのかよ? どっかで無くしちまったかァァァッ⁉︎ 一ミリでも漢気ってものがお前にあるなら、目を合わせろ」

 

 父は、震えながら恐怖に塗れたその目を私に向けた。

 

 どれくらい振りだろう? 父と目を合わせたの。

 

「ま、まお……?」

 

「立って喋れよ餓鬼かテメェェェッ⁉︎」

 

 首を伸ばしたので、頭にサッカーボールキックをお見舞いしてやった。

 

「グェビィッッ‼︎ イッ、ヒッ、ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィッ⁉︎」

 

 い、痛い? イタイ⁉︎ ねぇ⁉︎ イタイのかなァッ⁉︎

 

「アッ、アッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎」

 

「ちょっと真央‼︎ 下手したら死んじゃうって‼︎」

 

「あっ、アハハ、ヤバッ。殺しても良いかなって思ってたわ」

 

「良い訳無いだろ⁉︎」

 

「良いじゃん別に? コイツ、この世界に必要か? 要らね。イラネェェェェェェェェェェェェッ‼︎」

 

「完全にオカシクなってんじゃん⁉︎ 真央お前‼︎ 戻って来れんのかよ⁉︎」

 

「ハァッ⁉︎ へ、べ、別に良いじゃん⁉︎ こんなクズは殺して、ゴミ箱に捨てた方がエコじゃん⁉︎ エコエコ‼︎ アハハアヘハヒハハハハァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎」

 

「違う‼︎ そんなクズ殺して、何年も牢屋にぶち込まれて良いのかって言ってんだよ‼︎」

 

「エッ? あ、あぁぁぁぁ……確かにそうだわ」

 

「だろォッ⁉︎ 私だってこんなクズどうだって良いんだよ! 心配なのはお前だけなんだよ‼︎ ヤバ過ぎだから‼︎ 三上みたいなムーブ起こすんじゃねぇよお前‼︎」

 

「三上って、殺人衝動があるってアレ? 私、そんなのと比較されるくらいヤバかった?」

 

「激ヤバだよ‼︎ 止めろ‼︎ 私が許さない‼︎ お前がオカシクなるのは、もう私が許さないからな⁉︎」

 

「でも? そのムーブじゃないと、私、お父さんと話せ無いよ……」

 

「ってかそれって、本当の自分をどっかに隠してないか? さっきまでの真央は、私の知ってる真央じゃ無かった。私の……私の好きな、優しい真央じゃ無かったよ? マジ怖かったし。ってか、そもそも間違ってる。父親と向き合いたいって言った真央が、別人格呼び起こすのは、オカシイ事だよ! ってか別人格呼び起こすってなんなんだよ⁉︎ ……ありのままで向き合うのは、怖いのかも、辛いのかもしれない。私には分からないから。でも、お前のお父さんは、きっとありのままのお前の言葉しか刺さんねぇぞ?」

 

 私の言葉? 私、なんて言おうとしてたんだっけ? 何も、思い出せないよ。

 

「い、痛い。痛いよ……ま、真央? 痛いよ……」

 

「…………」

 

 黙れよクズ親父。お前の為に、私は、考えて、悩んで、苦しんで、策を練って、泣いて、喚いて、小鳥母に懇願して、お前を救える道を作ったんだよ? もう……私もう。あなたを救える言葉なんて……分からない。

 

「い、痛いよ真央……ま、真央? お前も、痛かったよな? お前は、心がもっと痛かったよな? ごめん。ごめんなさい。俺が居なければ、俺さえ居なければ」

 

「……えっ?」

 

「俺が全部悪いんだ。その子に言われた通りだ。俺はお前を放ったらかして、遊び回った。お前の為の金を、自分の私欲の為に使い果たした。邪魔者扱いして、……死んでくれないかと、言った……」

 

「…………」

 

「それを、懺悔するのが怖かった。忘れられる筈無い事を分かっているのに、忘れていてくれてるんじゃないかと思い込もうとしていた。だから、目を合わす事が出来なかった」

 

「…………」

 

「本当は、ずっと、ずっとずっと、謝りたかった。でも、俺の罪を、お前は咎め無いから、だから……忘れたままでいた方が良いんじゃないかって、思った……」

 

「…………」

 

 今は、父の言葉に口を挟みたく無い。この人が、一人で、独りきりで、どんな結論に至ったのかを知りたいんだ。

 

「その子が言った言葉で、全て分かった。真央? お前は、全部覚えてたんだな。真央は、優しい子だなぁ?」

 

「…………」

 

 首を横に振った。優子? ありがとう……今は、父の言葉を最後まで聞きたいっていう私の想いを汲み取って静観してくれている。なんで私の気持ち分かるの? やっぱり、姉妹だからかな?

 

「お前は、俺の過ちを、全部覚えていたんだろ? なのに……それなのに……何で、文句も言わずに過ごせるんだよ? あの時、あんな事言ったよね? って、なんで責めないんだよ? ……俺は、ずっと後悔してたんだ。お前と、目を合わすのが怖かった。お前の為の金を喰い潰し、残高に底が見えた時、自分の事を心から軽蔑した。でも、そんな気持ちですら、俺は忘れ様とした。酒を呑んで、ひたすら呑んで、現実から、逃げようとした」

 

 もう、いいよ。私、お父さんは、話せば分かってくれると思っていたの。違った。話さなくても、本当はもう、分かっていたんだ。

 

「今は、お酒呑んでるの?」

 

「今は呑んで無い。真央と、話しをしたいと思ったから……いつ、帰って来てくれるのか分からなかったけど、酒の入っている俺の話しなんて、聞いてもらえないと思ったから。でも……一昨日は、呑んだ……その二日前も呑んだ。この家に一人だと、どうしても、寂しくて、不安で、未来が、見えなくて、酒に、頼ってしまうんだ……」

 

 その気持ちは、分からない事も無いよ。この家に居ると、悪い記憶を呼び起こすからかな? 鬱になって来るんだ。

 

「あそこにぶら下がってる、首吊り縄は何? 私に、同情させようとして仕込んだの?」

 

 今さっき、私の逆鱗に触れたモノについて問い掛けた。こないだ父が私に言った言葉、「俺を……一人にしないでくれよ……」その言葉で、私は泣き崩れた。それに味をしめて、そういう仕掛けをして来たんだと思った。優子もそう思った筈。

 

「覚悟を、見せたかったんだ。同情? 真央、全て覚えていたんだったら、俺に同情する余地なんて無いだろ? あれは、償いだよ。お前が、どうしても俺を許せないと言うのなら、その場で、首を吊ろうと用意してたんだ」

 

「はっ? はァァァッ⁉︎」

 

「俺は、俺は……真央に……死んで、くれないかと……言った。本当に、ごめん、ごめんなさい……」

 

 父は土下座して、額を畳に擦り付け、震えていた。

 

「いや、意味が、分からないから……」

 

「お前が望むなら、今すぐ、目の前で首を吊って死ぬ。ただ最後に、謝りたかったんだ」

 

「そんなの……迷惑でしかねぇだろ⁉︎ そんな光景、一生脳裏に纏わりつくわ‼︎」

 

「そうかもしれない。でも……」

 

「同情目的じゃ、無かったんだ?」

 

 この部屋に来て、首吊り縄を見た時、それ目的だと勘繰った。自分を一人きりにしたら、俺は、自殺するかもしれないよ? みたいな、良心につけ込む狡い手を使って来てるんだと思ってた。でも、よくよく考えてみれば、アル中の達磨がそんな手使ったって、血を分けた娘でも同情なんてしないのは明らかだった。父の話しを聞いていると、それに気付かない程イカれてる訳じゃ無い事に気付いた。

 

「真央は俺に、死んで欲しいって、思っているだろ?」

 

 はっ?

  

「なんで私が、そんな事思う訳?」

 

「それだけの事を、俺はして来たから」

 

「急にメンヘラかましてくんだ……」

 

「俺は、もう。生きる価値も、意味も無いから」

 

 マジで、苛々する。

 

「なめんじゃねぇよ‼︎」

 

「……えっ?」

 

「私が⁉︎ それで、そんな事で……お父さんの事、見限ると思ってるの?」

 

「俺の罪は消せない。真央? もう、大丈夫だから」

 

「大丈夫? 何が? 自己完結してない?」

 

「もう、大丈夫なんだよ。真央が、ここで死ねって言えば首を吊って死んでた。そうすれば、近くにお前が居たとしても、自殺で通せると思ったんだ」

 

「だから、何言ってんの?」

 

「それほど、お前は俺を恨んでいると思ってたから。俺な? 俺……いや、もう、良いだろ? 出てってくれ」

 

「何? なんか言い掛けたよね?」

 

「なんでもない」

 

「……お父さん。私ね? どうしても、お父さんとの思い出の中で、消せない事があるの」

 

「消せない事……?」

 

「お父さんは忘れてるのかもしれないけど、どうしても忘れられない事があったんだよ?」

 

「そうか……真央? こんな父親で、ごめんな」

 

 違う。違う違う違う違うから⁉︎ 何言ってもマイナスに受け取るじゃん⁉︎ コイツ、こんなにネガティブな奴だったのかよ⁉︎

 

「私が小学生になる少し前、お母さんが、二ヶ月くらい家に帰って来なかった時の事だった。お父さんに、お母さん、帰って来ないねって言ったの」

 

「…………」

 

 覚えて、いないのかな?

 

「まだ、お父さんが優しかった頃の話し。私を動物園に連れて行ってくれた。あの頃お父さん、いっぱい仕事してたから、外に遊びに行く事なんて無くて。家で一緒に居る時間も少なかったから、会話も上手く出来なくて。ただただ黙って、園内を三周くらいして帰ったよね?」

 

「……覚えてる。俺は、気の利いた事が言えなくて、普通の父親だったら、もっと、子供を楽しませられる事を言えるんだろうなと思って、情けなかった」

 

「情けない? なんで⁉︎ 私、嬉しかったのに。上手く会話が出来ないお父さんの、不器用な所が好きだった。人通りの多い通りになると、何も言わず手を握ってくれるお父さんが好きだった。繋いだ手はガサガサで、こんなになるまで私達の為に頑張ってお仕事してくれてるんだって、尊敬してた……」

 

「……俺は」

 

「悪い事言うけど、もう、尊敬なんてしてないよ。その当時は、そうだったって話し」

 

「真央が、あの時の事を喜んでくれてたなんて、思いもしなかった。なんで、俺は間違ってしまったんだろうな。それなら、休みの日に遊びに行ったりして、家族の様な事が、出来た筈なのに。俺は、自信を無くしたんだ。俺には、お前を楽しませる事が出来ない。幸せにする事が出来ないって、諦めてしまったんだ」

 

「……私も悪い。楽しかったって言わなかった。ありがとうって言わなかったから、私が嬉しかった事にお父さんは気付かなかったんだ。多分、初めてだよね? こんな事を、話すの」

 

「そうだな。話しをする事を、避けてた。俺は、最低の事をしたから」

 

「私ね? お父さんと、血が繋がって無いの」

 

「……そうか。良かったな……」

 

「良かったな? どういう事?」

 

「俺みたいなクズが、本当の親じゃ無くて良かったな? 本当に、良かった」

 

「……お母さんに、会ったの」

 

「涼子に……涼子が、そう言ってたんだな?」

 

「うん」

 

「それなら、そういう事なんだろう。……お母さんもきっと、苦労したんだよ。俺が不甲斐ないから、お母さんはお前の為に、試行錯誤してお金を残してくれた。あの当時は認められ無かったけど、今は、自分のせいだってはっきりとそう思うんだ。お前は、不幸だと思うよ。不公平だと思う。他の同級生の親なんか、聖人に見えるだろ? お母さんは居なくなるし、俺が、クズだから。人生を、運命を恨んだだろ?」

 

「……ずっと、死にたいって、思ってた……」

 

「俺が言って良い言葉じゃ無い事は分かってるけど、生きていてくれて良かった。行かないでくれなんて、自分勝手な事を言って悪かった。俺は、なんとなく気付いていた。真央が、俺の子供じゃ無い事に……でも、しょうがないだろ? 十七年一緒に暮らして来たんだから、お前の事を、一番に考えたって良いだろ? やっぱり、気持ち悪いか……?」

 

「私の事を、一番に?」

 

「……あぁ」

 

「考えた結果が、酒を呑んでダンゴムシみたいに丸まる事なんだ?」

 

「……泊めてくれる友達の家が、あるんだよな?」

 

「……うん。事情を話すと長くなるけど、色んな兼ね合いで、一生面倒見てくれるらしい」

 

「一生面倒見る⁉︎ 他人の子を? 正気か? ……でも、居候みたいな立場、辛くは無いか? この家じゃ多分、お前は心を休められないよな」

 

「どうしたの? 何が言いたいの?」

 

「引っ越しをして、一人暮らしとか、真央は耐えられるか?」

 

「引っ越し? どこにそんなお金があるの? お父さんは、現実が見えているの?」

 

「あぁ。一年前、自分で貯めていた金と涼子が残してくれたお金に底が見え始めた時に、生命保険に入っていたんだ」

 

「生命……保険? それって……」

 

「俺が、お前の為のお金を喰い潰したんだ。せめて、お金だけでも、返したかったんだ」

 

「死のうと、してたって事……?」

 

「どっちみち、死のうと思ってた。自殺じゃ保険は降りないけど、お前が望むならと思ったんだ。もう俺には、死ぬ事でしか金を残せる手段が無いから。本当は……言わないで逝こうと思ってた。でも、言ってしまった。本当にクズだ、俺。……もう、何も言わず、出てってくれ」

 

「出来る訳無いでしょ……」

 

「出てってくれ……」

 

「出て行ける筈無いだろ⁉︎ 何それ? 私が出て行った後、お父さん、事故を装って死ぬって事だよね?」

 

「出て行け‼︎」

 

「嫌だ‼︎ ……だってお父さん、本当は死にたくなんて無いんでしょ? だから、首吊り縄を垂らして、私と、話しをしたかったんでしょ? 話しを聞いて欲しかったんでしょ⁉︎」

 

「……俺は、俺は‼︎ どこまでいっても、クズ人間かよ……真央が、この場で首を吊って死ねなんて言う筈無い事、分かってた。真央が、優しい子だって事、分かってた。俺は、覚悟を決めた筈なのに、何で、何で……言ってしまうんだよ……」

 

「お父さん……」

 

 お父さん、泣いていた。お父さんだって……私の事、考えてくれてたんじゃん?

 

「大丈夫だから。真央、出て行ってくれ」

 

「話してくれて、良かった」

 

「……真央」

 

「話してくれなかったら、お父さん、死んでたんでしょ? だから、話してくれて、本当に良かった」

 

「あっ、あっ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎」

 

「そうだよ……そうだったんだよ。悲しい時、寂しい時、泣けば良かったんだよ。私達、何でそれが出来なかったのかな? だから、お互いの気持ちが分からなくて、息苦しい時間を過ごす羽目になったんだ。私、お父さんが死んだ後に入る保険金なんて要らない。お金なんかより、もう一度、働く格好良いお父さんの姿が見たい‼︎」

 

「お、俺は、狡い人間だ。だってお前は、別れを言いに来たんだろ? そんなお前に、俺は死を仄めかせて、繋ぎ止め様としたのと同じだ。……いいんだ。もういいんだ‼︎ 俺はもう、人生詰んでるんだよ……」

 

「そんな事、分かってるよ‼︎ お父さんが、人生詰んでる事くらい、分かるよ……」

 

「えっ?」

 

「分かってるから! 助けたいと思ったんじゃん⁉︎ お父さんを助ける為に、お父さんが働ける所も見つけて来たんだよ⁉︎ 私、頑張ったんだよ? 本当は会いたくも無かったのに、同情を誘う為、お母さんにも会ったんだよ……辛かった。ねぇ? 褒めてよ? 私が、お父さんの為にどんだけ頑張ったと思ってるの⁉︎」

 

「はっ? 何で、俺の、為に?」

 

「ふざけんな馬鹿親父‼︎ お前が、仕事無くて破産しかけてるから、私が仕事見つけて来てやったんだろぉが⁉︎ 生命保険? そんなもんに頼んじゃねぇ‼︎ それ目当てで死ぬんだったら詐欺と同じじゃん‼︎ そんな汚いお金で生きながらえたく無い。それに、私は、お前が死んだら泣くからな‼︎ 悲しいよ、寂しいよ? 十七年間、一緒に過ごして来ただろぉが⁉︎ 心が通じて無くても、血が繋がって無くても、酷い事言われたけど、でもそれでも……放っておけ無いんだよ‼︎」

 

「真央……真央ぉ……」

 

「情け無い。本当、情け無いよ……泣いて、死のうとなんかして、情け無い、軽蔑するわ」

 

「ごめん、なさい……」

 

「だから、もう一度見せて欲しい。お父さんの、格好良い所。仕事頑張ってるお父さんの姿、見せて欲しいんだ」

 

「そうか……それが、償いになるんだな」

 

「……うん。それが罪に塗れたお父さんの、罰ゲームだよ」

 

「……真央、ありがとう」

 

「でも、お酒を断たないとって条件だけど?」

 

「だよな……俺、頑張れる……真央? お前が俺をまだお父さんと呼んでくれる事が、力になる」

 

「って事は、お父さんって呼ばなくなったら力下がる訳? メンタル弱っ」

 

「血が繋がって無いんだもんな……確かに、俺は、お父さんじゃ無いんだよな。痛い所突いて来るんだな……なんていうか、その……」

 

「アァァもぉ! 冗談だよ‼︎ 通じ無いの⁉︎ 家族じゃん⁉︎ 縁が切れる事なんて、無いんだよ」

 

「……重いのかもしれない。ウザいのかもしれない。でも俺は、真央、お前の為だけに生きて行きたい。それを、許してはくれないか? 血は繋がって無いのに、そんなのおかしいってなるかもしれない。でも、俺にはそれしか頑張る理由が、生きてく理由が無いんだよ。今までの、罪を償いたい。真央を幸せにする事を、俺の生き甲斐にしても、構わないかな?」

 

 こんな言葉をくれる未来を、あの頃の自分に言ってあげたい。私は、唯一の支えだった父親に認められたくて、優しくされたかったのかもしれない。きっと、ずっと、誰かに必要とされたかったんだ。

 

「なんでそんな言い方するの? 嬉しいよ……良いに決まってるでしょ?」

 

 私は流石にあなたの為に生きていかないけど、でもね? なんかね……その言葉、めちゃくちゃ嬉しかったんだよ?

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