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スクリーム・ノート III  作者: 藤沢凪
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百十八頁    鷹 肆   『十七年』

 百十八頁

 

 鷹 肆

 

『十七年』

 

 何年振りになるのだろうか? あの子は今十七歳の歳だから、十七年振りになるのかな?

 

 鈴香から、ショートメールが送られて来た。

 

「久しぶり……私の事、分かるかな?」

 

 何のつもり? 時間が経てば、憎しみは風化されるとでも思った訳? お前や英治は、好きな者同士で結ばれ、何の不満も無い人生を送って居るんだろ? それとも何か? 英治が破産でもして自殺でもしたのか? それとも子供が人を殺して窮地にでも立たされて居るのか? いや、そんな事があったら逆に連絡して来ないだろ?

 

 十七年振りだぞ? 何かあったんだ。理由を探せ。十七年前の鈴香との最後のメールのやり取りを思い返していた。

 

 

「久しぶり。私そろそろ臨月に入る。涼子もそうでしょ? 私は、あなたの子供、受け入れる体制整えているよ?」

 

「はっ? 何それ? 自慢したい訳? 私と英治は上手くいっていますって、遠回しに追い討ち掛けたいんだ?」

 

「そんな筈無いでしょ⁉︎ だって、心配だから」

 

「お前に心配される筋合い無いんだよ」

 

「あなたの心配じゃ無い。産まれて来る子供の心配だよ」

 

「どういう意味だよ?」

 

「涼子あなた、産まれて来る子供を、ちゃんと愛して育てて行けるの?」

 

「お前に、そんな事諭されたくねぇんだよ。お前自分がどんだけ失礼な事言ってんのか分かってんのか? 私がどんな想いで結婚したのか、お前に分かんのかよ⁉︎」

 

「結婚? 涼子、結婚するの?」

 

「もうしたの。子供を幸せにする為、養って行く為だけに、結婚したの」

 

「はっ? 誰と?」

 

「あなたに教えてあげる義理なんて無いでしょ?」

 

「嘘、吐いてるんでしょ? だって、結婚って……あれから、六ヶ月くらいしか経って無いんだよ⁉︎ お腹も膨れて来るのに、そんなの、信じられないよ」

 

「何それ? 妊婦は男に相手されないって差別してんだ? 冷たい人間だなぁ?」

 

「それでも良いって言ってくれた人が居たって事?」

 

「そうだよ」

 

「ごめん。ちょっと、信じられ無くて」

 

 阿久津との経緯を、話したく無かった。話せば、本当はその人との子供なんじゃないかと問い詰められるのが嫌だった。絶対にそうじゃ無いって、私は分かっていたから。

 

 財布から保険証を取り出し、携帯で撮って写メールを送った。

 

「阿久津、真央?」

 

「うん。今の私の名前。嘘だと思うなら、どういう角度で撮って欲しいとか、何でも応えてあげるよ。私は結婚したの」

 

「本当、なんだね?」

 

「だからもうごちゃごちゃ言われる筋合い無い。お前らからの連絡ほど、苛々して胎教に悪いモノねぇんだよ」

 

「そうだったんだ。分かった」

 

 …………

 

「二度と、連絡して来んな」

 

「分かった」

 

 ………………

 

 

 あれから十七年。何故、鈴香は連絡して来た?

 

 ……分からない。分からない。だから、そのショートメールが届いてから三日経った後に、私は返信を打ったんだ。

 

「忘れたの? 随分前のメールで言ったよね? 連絡して来んなって。それとも送る相手間違えてた?」

 

 暫くして、鈴香からの返信が来た。ってか、十三分も待たせんなよ。

 

「間違えて無いよ。涼子? 本当はもう、連絡しない方が良いのかなって思ってた。でもきっとこれは、運命なんだよ。会って、話しがしたい」

 

 はっ? 運命? どうしたコイツ? 頭、オカシクなっちゃってた?

 

「気持ち悪いんだけど? 何故急に連絡なんかして来た? 理由を言えよ」

 

「理由は、会った時に話す。会ってくれないのなら、話さない」

 

「行かない。そんな一方的な誘いマジ無いわ。成長してないね鈴香? 家の中に閉じこもって、常識も知らないままおばさんになっちゃったか?」

 

「うん。変わって無いよ。あの頃のままなの私。涼子は? あの頃から、自分で変わったなって思う?」

 

「さぁね」

 

 変わって無いって素直に言える鈴香が、本当は羨ましかった。誰だって、厳しい現実なんて知らず、苦労せず生きれれば幸せな筈なんだ。私は……きっと、変わってしまった。でも、変わる前の自分でさえ、私は嫌いだった。

 

「私、お酒飲める様になったんだよ? 金曜日、私の家に来てワインでも飲まない? 美味しいやつを用意して待ってるよ」

 

 家だと⁉︎ 英治とその子供も居るんだろ? マジ、狂ってんのかコイツ。

 

「話し聞いてた? 行かないって言ってんだよ」

 

「本当は、気になっているんでしょ? 私が、急に連絡して来た理由」

 

 糞がッ。コイツは、私の性格を気味悪い程理解してる。

 

「ってか、金曜日とか明後日じゃん? 日付け指定して来んなよ。こっちにはこっちの予定があんだよ」

 

 送った後に気付いた。それもう、行く事は了承してんじゃん。

 

「あっ、違うよ? 金曜日ならどの週でも良いの。英治が、必ず金曜日は帰って来ないから。突然でも金曜日なら大丈夫って意味。前もって言ってくれれば、英治に言って別で借りてる部屋に行ってもらうから」

 

 別で借りてる部屋? それ、前の旦那にもあったやつだ。不倫部屋だろ? マジか? 鈴香お前? 旦那の不倫容認してんのか?

 

「良いよ。明後日の金曜日、鈴香の家行くよ」

 

 面白くなって来た。

 

「うん。住所送るね?」

 

 鈴香から、住所が送られて来た。

 

「七時頃行くわ」

 

「待ってるね」

 

 そうか……そうかそうなんだ⁉︎ 鈴香も、本当は不幸だから私に連絡して来たんだ‼︎ 英治は、十中八九不倫してる。鈴香が、会ったら言うと出し惜しみしていた理由は、英治の不倫の事なのだろう。

 

 ねぇ? 辛い? あの時私に譲れば良かったって思う? それをもう、抱えきれなくなった? ねぇ? ねぇ⁉︎ もう無理? 無理なのッ⁉︎ 歩けない? 人生は辛い? 生きていたくない? 死にたい? ねぇ⁉︎ 死にたい⁉︎ ハッ、アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎

 

 アハッ、アハッ、アヘッ……

 

 私も同じだよ。もう、この世界に、未練なんて無いの。本当だよ? 今まで出逢って来た人達の事を思い返してみた。

 

 ……誰とも、出逢わなければ良かった。

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