こんな日常
俺は自業自得で死んだ
所謂、ブラック企業でトラック運転手をしていたのだが
かなり、身体を酷使したせいか荷物を運搬中に
意識が一瞬飛び、人をひきそうになった。
何とかハンドルを切り、殺人は免れたが
そのせいで横転してしまった。
最期に見たのはぶつかった衝撃で割れた
ガラス片とそれに写る自分の姿だった。
さっさと、あの会社を辞めれば
こんな事に成らなかったのに
今、後悔しても遅かったと言わざるを得ない
だが、ありがたい事に転生と言う物をした。
記憶は前のままだった。
たいした知識は持っていなかったが
持っているだけ有り難かった。
でも、現実はそう上手くは行かない物で
神様の悪ふざけか最悪の家庭に生まれた。
父親の顔は分からず、母親には暴力を降られ
毎日(意外と人間って頑丈だなぁ)と思いながら
気絶に近い状態で眠りにつくのである。
目が覚めれば母親は家を出ていて
賞味期限のきれたロールパンを食べ。
汚い部屋を気持ち程度に片付け
近所の図書館で前の人生では見れなかった
小説を読むと言う毎日を過ごしていた。
こう言っては不謹慎なのだが
俺にとっては前の人生とくらべれば
まだ、ましな方だと思う
前の知識があるお陰で痛みの緩和の仕方
受け身の取り方、相手を刺激しない話し方
などを駆使するお陰でそこまで酷い事には
なっていないと思う。
(働かないっていいなぁ…………)
そう思っていると閉館の放送が鳴る
その放送でわずかな幸せに浸っていた
意識が一気に現実に引き戻される。
身体が急に重くなり、タメ息ばかりが溢れる
本を戻し小さなアパートへ帰る。
部屋の中に入って、風呂を洗い
お湯を貯める。
少しすると母親も帰ってくる。
名前もろくに知らぬ母親で
風俗嬢をやっているらしい
毎晩、毎晩、酔っ払って帰ってきて
うざい客の話や、売り上げの話
100回は聞いた昔話を聞かせてくる。
俺はそれに気持ちよく相づちをし、褒め
ほどよい距離で聞き流す。
それでも、回避できない暴力もある。
いきなり弾け、烈火のごとく怒り出し
拳を振り上げる。
うまく受け流しながら痛み耐える
すると、いきなりピタッと拳がとまり
手を広げ首をつかんできた
(今日は首を締められるのか………)
馬乗りになって首を締める
母親をぼんやりと見やる。
暴れると酸素を失うので静かに目を閉じ
身体の力を抜いた。
そして、母親に気が済むまで首を締めさせる。
暫くすると母親はいきなり倒れ眠りに落ちる。
「けほっ、けほっ、はぁ…………」
今世でも負け犬なんだなぁ
酸欠の頭はそんな事しか思えなかった。