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5 第二フェーズまで その一

 健介は想定より早い段階で二人の攻略対象と接点を持つことが出来た。

 現状はまだスタート地点に立っただけではあるが、二人の攻略レースを始められたのだ。


 同時攻略をする上で気を付けなくてはいけないものがる。


 所謂『被せ』である。


 何に対しても被ってはいけないのだ。

 攻略法も――接し方も――自分自身のキャラも――イベントも。


 学園生活は始まってからの初めての長期連休、ゴールデンウイーク。

 健介が二人を攻略し始めてから、休みに入るまでの『如何に被らないか』の奮闘劇を見てみよう。




健介視点――。


「にーちゃん! おっきろー!! あ、おっきしてる……」


 いつもの様に目覚まし時計代わりの妹の襲撃で目が覚める。部屋の壁にかけてある時計を薄眼で見ると七時だ。ここら辺の几帳面さだけは褒めてやろう。


「あと……ごふ、ん……」


「だーめ! おきるのぉ!!」


 ゆさゆさと身体を揺すられる。

 別に二度寝したい訳では無い。これは所謂兄妹コミュニケーションをしてあげているのだ。


 俺はどうしたって休日や放課後は自身の磨きに集中し、このアホに構ってあげられない。だからこそ朝の一時くらいはこいつに時間を割いてやるのだ。


 これは別に俺がシスコンだからとかでは無い。母とおまけの父に対する兄妹仲の良さアピールである。


 俺がこうして自分磨きに専念できるのは両親の支援ありきだ。下手にサボったり遊んだりしてたらバイトしろとか部活しろって言われるだけだろうし。

 



「――飯食いながらスマホ弄んな!」


「ん……許して」


「許したってーおかーさん!」


 一日のうち最も大事にしている朝食中、よく噛みながらも会話アプリを起動した。

 相手は中田である。彼女に早めに教室に来て勉強しようと送る。


『わかったわ――科目は?』

『英語の小テスト有るって隣のクラスの奴に聞いたから英語で』

『もう他のクラスに知り合いがいるのかしら?』


 こ、これは来たな……。

 中田は孤高の、人を見下し系女だ。つまりこの後の選択肢は。


1 中学からの知り合いだよ?

2 まぁね、友達作るの頑張ってるからね


 基本的にはどっちかだ。

 前者の場合は旨味がない。孤高の中田にしてみれば嫌味にも聞こえるだろう。しかも(こいつ私のことを全然分かってないわ)と思われるだけだ。どうせ中田は中学でも友達とか居ないだろうし。


 後者の場合は発展性がある。


『まぁね、友達作るの頑張ってるからね』

『……貴方のことは認めてるけど、そういうところは嫌いよ』

『前にも言ったけど上に行くためだよ。だから中田さんとも友達になったんだし』

『つまり……私のことも利用していると?』

『嬉しい?』

『利用されて嬉しい人は居ないわよ』

『利用しあえる関係って素敵じゃない? だってさ……』

『お互いの能力が釣り合ってないといけないものね』


 こいつはただ友達とか仲間とかの関係なんて望んでない。

 求めているのは認められることだ、優秀な自分を。


「よし、じゃあさっさと食うか」


 中田の第二フェーズに向かうにはこうやってじわじわ攻めよう。










 中田と三十分ほど教室で勉強をした。中田も中島も成績優秀者なのに寮暮らしのようだ。これは計画の変更を余儀なくされたな。


 二時限目の現文の授業中に、俺はノートに書くフリして小さい紙にメッセージを書く。


『なんか眠くなる授業だよね。現文って』


 左隣の中島にさっと渡す。


 中島は驚いた顔をするが、にやりと笑って俺の渡した紙の裏に何かを書いた。


『こういうのやるんだ? 真面目くんだと思ってたのに~♡』


 ギャップって大事だよな。

 この小学生がやるような、授業中の手紙交換。俺みたいな優等生の真面目がやるのは予想外だろう。


 これの何がいいかって、右隣の中田はくっそ真面目に授業を受けてるから気づかないのだ。

 一見すると席が近すぎて二人の同時攻略は厳しく見えるだろうが、実はこの二人のキャラの違いがありすぎて簡単に攻略を分けられるのだ。


『スラックスのファスナー開けっから、中島もスカート捲ってよ』


『……いいよ~♡』


 俺と中島は書いたとおりに下着を露出させた。

 際どい紫のパンツか。


 俺が露出趣味なわけでも、彼女がそうなわけでもない。

 これは勝負なのだ。


 中島は勝ち欲が強いのだ。勝った時の達成感と、負けた奴の悔しそうな顔と、自分を称える姿勢に興奮を覚える奴だ。


 中島は俺に異常な執着心、と言うよりライバル心を抱いている。理由は知らん。


 中田相手には全力で勝ちに行くべきだが、中島に対しては逆に相手の土俵に立ちに行って負けてやればいい。


 俺はあえて起った。


 中島は目を見開き、頬を染めてはあはあと息を荒くしていく。

 紫のクロッチ部分が濃くなっていく。


 ニヤ――。

 中島はシャツを更に開き、ブラを見せつけてくる。白い肌がほんのり染まってきている。


 こなくそ、と俺はパンツを湿らせる。あえてね。


 何度も言うけどあえてね? わざとだよ? まじこの女のパンツに興味ないから。


 中島は急にハサミを持ち出してチョキチョキ、アピールしてくる。


 なんだ? と凝視すると。


 なんと中島は自分のパンツを横に切った。


 ふぁあああああああああ。





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