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1 面白い奴

 体育館で行われた入学式を終え、教室の戻った新入生たち。


 一学年八クラス、各四十人で構成されている。A~Hまでの組が分かれ、健介はA組である。席順に関してはランダムであり、その組の担任が決める。

 健介は窓側二列目の最後尾と言う神ポジを手に入れた。





健介視点――。


 俺は神に選ばれし存在かもしれん……。個人の席だけ考えても95点くらいあるが、横の席がやばい。右、つまり通路側が孤高のクールキャラ――中田翔子。逆の窓側がギャルキャラの中島卓実だ。


 個人的には中島の席だったら100点だった。


「改めて名乗っとくぜ! 俺の名前は近藤遥輝、よろしく」


 前の席の男、名は近藤と言うそうだ。振り返ってサムズアップしているのがムカつくな。茶髪のそこそこのイケメンっぷりを考えると、ギャルゲー特有の便利お助け友人キャラと言ったところか。


「じゃあ俺も倣って、西川健介だ。一年間よろしくな」


「席固定なのは辛いよなぁ。まあ俺たちは勝ち組っしょ」


「……? なぜだ」


「はあ……横見なさいな。それでもそのセリフほざけるなら知らん」


 言わずもがな――しかしここで乗ってしまうのは主人公的によろしくない。


「うーむ……なぜだ?」


「だめだこりゃ」


 近藤はやれやれと首を振って正面を向いてしまう。


 やっべーわこれ。ギャルゲー的やり取りやってしまったよ。


 近藤はまたあとで絡むとして――今日のうちにどちらかとフラグを立てないとな。

 最初の狙いは、難易度の高そうな中田にしよう。


 多くの生徒がコミュニケーションを取ろうと周りの生徒と話している中、彼女だけは読書をしている。中島の方は前の席の同じようなギャルと話している。


 彼女のような周りに壁を造るタイプには独自の攻略法がある。


『え、こいつ――普通じゃない! なんて面白い奴』作戦である。


 普通じゃないこと……普通じゃないこと……。あくまでも授業中と言う体であるため立ち上がることは出来ない。となれば――。






中田翔子視点――。


 入学式後のホームルーム。建前上は教科書や生徒手帳の確認などをする時間とされているが、実際にはクラスメートたちとの交流の意味合いが強いのだろう。


 左隣の男は前の席のチャラついた男と話していた。


 実にくだらない。


 本に目を通しながらも、内心は別のことに向いていた。


 私は優秀だと自覚している。中学まで毎年成績は一位だったし、全国模試も一桁だ。運動神経だって良いし、容姿も優れていると自負している。大きくなってきた胸が、男どもの視線を誘導するために不快だが。


 そんな私が入試の順位が二位だった。入学前に学園側に問いただすと、入試一位は西川健介と言う男らしい。つまり左隣の男がそうである。


 断じて許していいものでは無い。この時点でこの男は私のライバルとなった。次のテストで必ず勝ってやる。そう思い、彼を見ると何やらノートに書いていた。


 勉強かしら? 真面目ね。

 そう思ったが、彼の行動が不思議過ぎて二度見してしまった。


「――どうして定規で字を書いているのかしら?」


「え?」


 気が付けば彼に聞いてしまった。彼は字の一画一画を定規で書いていた。


「だからどうしてそんな面倒くさいことしてるのかしら? 非効率じゃない」


「これは印象付けのためだよ」


「印象?」


 腕を組み、考えるように彼は答えた。


「俺は物覚えが悪いからね、こうして一文字に負担を掛けることにより脳に刻んでいるんだよ」


「――時間が掛かるじゃない」


「全部そうする訳じゃないよ。大事なところだけさ」


 そう言い彼は再び視線を落とした。

 

 何を書いているのかしら?

 覗き込むと、そこには友達の作り方――と書いていた。


 え? 友達の作り方? この男が?


 どう考えても陰キャでもコミュ障でもなさそうな男がそんな事を書いているのが、どうしようもなく気になった。


「友達が欲しいのかしら?」


「ちょ!? 見ちゃったの!? プラベの侵害だぞ」


「――驚きすぎよ、あんたも凡人思考なのね。拍子抜けだわ」


 一位のこの男も私と同じ考え――凡人などとつるむ必要無い派の人間だと思っていたのに。


「凡人思考がどんなものか解らないけど……競い合う人間は必要だろ? 上に行くためにはさ、その方がより成績とか上がるってものだよ」


「その考えは理解できるけど、友達である必要はないんじゃ無いかしら?」


「一緒に勉強したいんだよ、一人だと怠ける気が有るからね」


「――そう、なら今度一緒に勉強してみる?」


 友達作るのはしたくないが、ライバル(私の中で)とは仲良くするのも悪くないだろう。


「え!? ぜひぜひ! 俺の定規記憶法を教えてあげますよ」


 こいつ……意外と面白い奴ね。







健介視点――。


 作戦は上手くいったようだ。

 

 俺から見ても定規で字書いてたら気になるからな。


 彼女も成績優秀者の可能性が高そうだ。なら自宅で勉強会というイベントをこなせるだろう。目標としては夏休み前の期末テストまでに彼女とは決着を付けよう。


 同時進行で中島も堕とさないとな。



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