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運命の人 ~ギフト『探しもの』はかなりチートでした~  作者: イ尹口欠
さんにんめの運命の人

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 上層最後の階層である第十五階層、その階段の間に俺たちはたどり着いた。


「さて、いよいよ中層なわけだが、上層との違いは歴然としている」


 アルフォンスさんが言う。


「まずは天然の洞窟に変わること。これまであった魔法の灯りはなくて、俺たちで灯りを用意しなきゃならない。これは……まあライトの魔法を浮かべれば済む。使えるのは――」


 ノーラ以外の全員が手を挙げた。


「え、なんでみんなそんなに魔法が使えるの!?」


「ていうかノーラって魔法使えないの? 全く使っているところを見たことがないんだけど……」


「うん。剣が使えれば魔法はいらないって養父様が言ってた」


「偏った教育方針だなあ。夜中に灯りのない状態で戦うことは想定していないのかな?」


「そんなことないよ? 夜中に灯りを消して戦う訓練をしているから。気配で戦えるよ」


「なぜそんな回りくどいことを……。ライトの魔法はそんなに難しくないから、覚えようよ」


「うん! じゃあイクト、教えてね?」


「分かった。野営のときにね」


 ノーラに魔法を教えることになった。

 ……のはいいんだけど、なんでウルさんたち兄妹がニマニマしながら眺めているのが気になる。


「よし、灯りは5つもあれば十分だろう。ノーラちゃんにはイクトが教えるそうだし、各自が灯りを用意できれば万全だ。――――よし、降りるぞ」


 ノーラ、ウルさん、俺、オーレリアさん、アルフォンスさんの順番で降りる。

 おおよそ現在のパーティ内の強さ順である。

 俺の方がウルさんより魔法が得意だから、戦闘開始距離が遠ければ俺の方が有利だけど、戦闘開始距離が短ければウルさんが有利だ。


 降りた先では階段だけが人工物で、他は天然の洞窟になっている。

 土の匂いに暗闇。

 確かにアルフォンスさんの言った通りだ。

 そしてなにより、魔物の気配が不穏だ。

 上層と違い、強敵が潜んでいる気がする。


「よし、灯りを出そう。――ライト!」


「「「ライト!」」」


 フワリ、と周囲が明るくなる。

 赤茶色の土と岩の壁。

 天井も岩でできている。


「さて早速だが近くに魔物がいる。どうせ接近したら戦闘になるから、こっちから近づいて行こう」


 年長者のアルフォンスさんがこのパーティのリーダーだ。

 基本的な決定はアルフォンスさんが行い、もしアルフォンスさんが何らかの状況で判断を下せない場合は、年長者順にウルさんがリーダーを代行すると予め決めてある。

 ちなみに俺の判断はノーラよりも先だ。

 同じ年だが、『探しもの』は判断材料を増やすことができるし、ノーラはあまりにも戦闘に偏りすぎているから。


 さて灯りを(とも)して行くわけだから魔物の方からしたら派手に見えるだろう。

 俺の方でも近づいてくる気配を察知できた。


「来るぞ! 大きいのが二体、小さいのは四体だ!」


 大きいのはミノタウロス、小さいのはヒュージアントだった。


 ミノタウロスは牛頭の巨漢で、巨大な戦斧を持っている第十六階層の難敵だ。

 その繰り出される戦斧の威力は盾などで受けることを許さない。


 ヒュージアントは大人の腰くらいの高さをもつ巨大なアリで、牙に麻痺毒を持った厄介な魔物だ。

 うっかり噛まれるとそのまま殺されかねない。

 こちらも中層らしい殺意の高い魔物だ。


 まずノーラが踏み出した。

 闘気を纏い、二刀流でミノタウロスの下半身をバラバラにして、そのまま落ちてきた上半身の首を刎ねた。


 瞬殺である。

 中層においても『剣聖』は無敵だ。


 ウルさんが続いてアリの始末に取り掛かる。

 闘気を乗せた拳でアリの頭部をぶん殴り、そのまま数発殴って頭部をグシャグシャにして一体を始末。

 次の二体目にとりかかろうとしている。


 俺とオーレリアさんは残ったミノタウロスの相手だ。

 ふたりでウィンドセイバーを放ち、俺はミノタウロスの前で回避に専念。

 オーレリアさんのウィンドセイバー三発目でミノタウロスは重傷を負って倒れたので、その首を俺の二刀流で斬りつけた。

 固い表皮を削るようにしか斬れなかったため、もう何度か斬ってなんとか殺す。


 その頃にはウルさんもヒュージアントを全て倒しきっていた。


 順調な出だしだった。

 ノーラ任せにせずに第十六階層で勝利をもぎとったのだ。


「よおし。ミノタウロスの斧は売れるが、重いから諦めよう。アリの方も毒腺が売れるんだが、ウルが壊してそうだからそっちも無理だな」


「あ、そうでしたか。ごめんなさいアルフォンス兄さん」


「いや、いいよ。荷物が増えるだけだ。それよりイクト、ノーラちゃんの運命の人はあとどれくらい潜る必要があるんだ?」


「中層の真ん中くらいかな。多分、第二十階層から第二十五階層くらいだと思う」


 距離感が狂っていなければそのくらいだ。

 つまりあと十階層、降りなければならない。


 その事実に皆が黙る。

 アルフォンスさんは沈黙を嫌って顎に手をやり言う。


「こんなところで荷物を増やすのは得策じゃないな。中層で野営もゾっとしないが、やるしかない、か」


「危険そうなら戻って修行しなおせばいいよ」


 ノーラが言った。


「……そうだな。無理そうなら出直そう。よし進むぞ」


 俺たちは魔物の死体を無視して先へ進むことにした。


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