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俺たちは、遂に地上にたどり着いた。
宝箱を回収しながらの帰還だったので思ったより時間がかかった。
もうすぐ日が落ちてしまう。
早めに宿を確保しなければならない。
冒険者ギルドにアルフォンスさんの救出を報告して、3人の前衛は未帰還のまま、俺たちはたっぷりと持ち帰った魔物の換金部位や宝箱の中身を売却する。
金額は締めて金貨10枚と銀貨40枚にもなった。
ひとり金貨2枚と銀貨8枚の大金だ。
「うわあ、冒険者って儲かるんですね」
「いやいや、イクトくんのおかげよ」
「この金額はなかなかお目にかかれないぜ?」
オーレリアさんとアルフォンスさんがニヤニヤしながら、俺の背中をバンバン叩いた。
「やっぱりイクトは凄い」
「イクト少年、ほんと役に立ちますねえ」
ノーラとウルさんからも褒められた。
嬉しいけど、こそばゆい。
疲れていた俺たちは、とにかく宿をとって酒場で食事にした。
その日はアルフォンスさんが救出のお礼として、すべておごりになった。
たっぷりご相伴にあずかったが、今回の収入を考えれば痛くも痒くもないらしい。
「で、どうするんだこれから? 俺らと組んで冒険者やる?」
「アルフォンス兄さん、お嬢様を前衛にしたら楽勝だとか考えているでしょう。イクト少年も宝箱を探せますから、確かにふたり共、冒険者になれないでもないですが。お嬢様は子爵家令嬢であることをお忘れなく」
「っだよぉ……つれないなあ。俺たち5人、相性はなかなかいいと思うんだけど」
それは確かに思った。
前衛にノーラとウルさん。
斥候の俺とアルフォンスさん。
魔法使いのオーレリアさん。
やや俺の立ち位置が特殊とはいえ、バランスは十分にいい。
「ねえイクト。私の運命の人は?」
「あ、そうか。目的は果たしたから、また変わっているかもしれないのか」
「うん。…………今度こそイクトになるといいんだけど」
「え?」
「…………な、なに?」
「いや。そう思ってくれるなら俺も、その……」
「う、何よ……別にイクトが私の運命の人じゃなければ、旅も続けられるし……別にどっちでも良いっていうか」
「ノーラ……。ま、まあとにかく探してみよう」
「う、うん。よろしくイクト」
俺たちのやりとりをニマニマと三人が見守っている。
からかわれないが、その笑顔が嫌です。
ともかくギフトを起動して、ノーラの運命の人を探す。
なんとなくそうではないかと思っていたけど、やっぱり俺じゃなかった。
「今度も俺じゃないな。ただ今回の運命の人は近いぞ、かなり。ていうかダンジョンの中じゃないのかな、この感じは」
「そう。……ダンジョンの中?」
俺とノーラはオーレリアさんとアルフォンスさんを見上げる。
ウルさんはこめかみを押さえて「なんてこと……」と嘆いている。
「よおし、パーティ結成に異存のある奴、いるか? いないよな?」
「いるわけないよアル兄。私達、相性バツグンだもんね!」
「路銀の調達に丁度いいというのは確かなのですが、釈然としませんね……またお嬢様に冒険者仕事をさせるなんて」
「私も、このメンバーでまた冒険がしたい。イクトは?」
「……俺ももちろん、よろしくお願いします」
こうして俺たちは、もう少しダンジョン探索を続けることになったのだ。




