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ナターシャというおばあさんは、なんとノーラと同じ『剣聖』だった。
家に上げてもらった俺たちはお茶を御馳走になりながら、これまでの旅の経緯を語った。
「なるほどねえ。私がノーラちゃんの運命の人ってこと……それでわざわざ王都からマーテリーブルックにねえ」
「はい。ナターシャさん。なぜ私の運命の人がナターシャさんなんでしょう?」
「さあねえ。思い当たることもなくはないけど……その前に。イクトくんや、私の運命の人は探せるかい?」
急に話を振られて、お茶を吹きそうになった。
「え? はい、やってみます」
「頼むよ」
「…………いませんね。探せませんでした」
「そうだろうねえ」
「え、分かっていたんですか、結果が?」
「私の旦那は死んでいるからねえ。老い先短い私に今更大きな運命の変化が訪れるとしたら、そこのお嬢ちゃんくらいなもんだけど旦那には敵わないからねえ」
ナターシャさんのロマンスは気になるが、ノーラが身を乗り出す。
「あの、じゃあ私の運命の人である理由はなんなんですか? ナターシャさんは心当たりがありそうでしたけど」
「なくもないね。『剣聖』の先達として、教えられることが幾らかあると思うのさ。さて木剣を持って庭に出なさいな。ひとつこの老人と打ち合ってみないかね」
「は、はい」
なんと、『剣聖』同士の打ち合いが見られるだなんて幸運なことだ。
ノーラは木剣を掴むと、颯爽と庭に出ていったナターシャの後を追う。
新連載『多目的スポーツ者シュンのマイペース冒険生活』、ようやくプロローグを終えて第一現地人が登場!
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