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旅の道中、気まずいこともあったけど、なんだかんだトラブルもなく目的地についた。
「この辺りにノーラの運命の人がいるよ」
「私の運命の人……どんな人かしら。イクトより格好良かったりして」
「ちょ、待ってくれよノーラ。その、まだ男だとは決まってないし」
「ふうん。でもウルの運命の人は男の人だってよ?」
「まだ引きずるのその話題!?」
あれ以来、しばしばこの話題でからかわれることになった俺である。
ウルの方はさっぱり忘れ去ったかのように振る舞っているというのに、ノーラはまったく忘れてくれていない。
「はいはい、おふたりともその辺にして。まずは宿を取りますよ」
「「は~い」」
正直、ウルがこうして仲裁してくれなければ、延々とチクチクやられるのである。
ほんと、なんでウルの運命の人が俺なんだ?
そしてなんでノーラの運命の人が俺じゃないんだ?
ややこしいったらない元凶が、この街にいる!
……ところでこの街はどこかというと、王都から離れて半月の距離にある、街の中央を大きな川が分断しているマーテリーブルックという街だ。
王都から三ヶ月もかかった俺の故郷よりも断然、都会である。
宿にチェックインした後は、さっそくノーラの運命の人の元へ行くことにした。
俺が先導しながらあるくこと30分ほど。
その家はあった。
普通の民家に見える。
ここにノーラの運命の人が……。
「ここだよ、ノーラ」
「う、うん。この家の人なのね?」
「そうだと思う。家の中にいるのは確かだよ」
「わかった」
ノーラがカクカクと緊張を露わにしながら扉に近づき、ぎこちなくノックした。
しばしの間をあけて、ギ、と扉が開く。
出てきたのは……?
白髪のおばあさんだった。
「は~い、どちら様ですか?」
「ああ、あ、あの。…………イクト、この人、じゃないよね?」
「……いや、その人だよ」
「え? このおばあさまが?!」
俺とノーラは顔を見合わせて、出てきたおばあさんを見る。
背筋がシャンと伸びたおばあさんだ。
歳は60歳くらいだろうか、歳の割には元気溌剌とした印象をうける。
「ええと。お嬢ちゃんたち、私になにか用なのかね? ……ん? その剣は……」
「あ、はい。剣がなにか?」
「ふうん……お嬢ちゃん、『剣聖』だね?」
「!? なぜそれを……?」
おばあさんは胸を張って言った。
「私も『剣聖』だからさ!」




