表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潜むモノ達  作者: たっしょ
3/7

第一章〔3〕 /…十三の時、事件が起こる

やがて十三歳になった私は背がとても高くなり、力もずっと強くなっていた。

私をここへ連れて来たワウリンは、最初以来全く姿を見せなかった。

ただ、他の4人が入れ代わり立ち代わりいなくなるので

「皆は時々どこへ行くの?」

とムルザに聞くと

「ワウリン様の所さ」

ユトラに聞くと

「ランサー王の所だ」

と言われた。

どちらにしても、彼等が戦いに加わっているのは知っていた。

そして自分がいつかはそれに加わる事も。

ある日、新たに仲間が一人加わった。

ラエと言う、私より幾つか年上の女の人だった。

クリーム色の短い髪、ぱっちりとしたとび色の瞳、

顔は可愛らしいが性格は男勝りな所があった。

静かなレイネと違って彼女はおしゃべりで明るかった。

それにおしゃれに煩くて、頬はいつも赤く塗っていたし、

黄金の腕輪もたくさんつけていた。

彼女も自分と同じくムルザ達から色々な事を学んでいて、私のいい遊び相手だった。

そのラエがある日、少し真剣な顔をして

「バレン、あんた何年もここにいるんだって?」

と聞いて来た。

「あぁ。八歳の時に来たから五年になるよ」

「五年もここであの人達と一緒にいて、何かおかしいと思わない?」

何故そんな事を言うのか怪訝に思った。

「何でだよ?皆いい人達じゃないか」

「そうだけど…この国があちこちの国と戦ってるの、知ってるでしょ?」

それは事実だったので頷く。

「うん」

「あの人達、兵隊なんでしょ?それがどうしてこんなに数が少ないの、

それにこの場所、他の人に全く会わないのも変よ。まるで隠れてるみたいじゃない?」

「うーん…」

少し考え込んだ。

今までこれが当たり前で、特に疑問を持ってはいなかったがそう言うものだろうか。

ラエがいつもの笑みを浮かべた。

「って、あたしの考え過ぎかな」

「うん、きっとそうだよ」

この場は笑って済ませたけれど、忘れてしまうには何かが引っ掛かった。

しばらくして、私はある事件に遭遇する事になる。


私にとってはいつもの夕方だった。

珍しくラエと私以外の4人がいない事を除けば。

それで、二人で普段の稽古場である森に入り、稽古をしている内に夜になってしまった。

「ユトラさん、帰って来なかったなぁ」

ぽつりと呟く。

「ラエ、ユトラさんが好きなんだ」

「内緒ね」

そう言えば、彼女はユトラさんに助けてもらってここに来たと言っていた。

「さぁ、今日はこれまでにして遺跡に帰りましょ!競争よ!」

素晴らしい速さで彼女が走って行く。

「ラエ!ったく…」

足では彼女に敵わない。

その時。

僅かな光の中で幾つか影が動いた気がした次の瞬間、身を硬くした。

武装した見知らぬ男達だった。

「誰?」

その数は十人いるかいないか。

私は一歩下がった。

彼等が異様に目を光らせているからだ。

と、中の一人が自分に向かって弓を構えた。

私は踵を返した。

瞬間、右足にひどい激痛を感じた。見ると矢が刺さっている。次に背中に衝撃が走った。

私は悲鳴を上げて地面に倒れた。

その時、何かが背後に降り立つ気配がして

「ぐわっ」

苦痛に満ちた男の声が聞こえた。

かろうじてそちらに顔を向けると、自分と連中の間に誰かが立っているのが見えた。

「レイネ…」

彼女はちらりと自分を見、連中の方を向いた。弓を構えた男が腕を押さえている。

他の男達が彼女に向かい、一斉に武器を構えるのが分かった。

「レイネ…逃げて」

目が霞んで来た。思った所で一瞬、彼女の右腕が歪み、黒く太く変化した気がした。

それから何も分からなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ