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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ひとつの国から繋がるお話

この国が滅ぶとき、唯一人信頼できる兄様へ

作者: 星降 香音

珍しく短編を書きました。

面白いかは保証できかねます。


 私の国は100年前に敗戦国になってから国王陛下が政務を行うのではなく、優院(ゆういん)補院(ほいん)の2つからなる議会制になった。その中で()()()一番偉くて仕事が多い人を政務代表大臣と呼んでいる。


 何故建前上なのかというとどうも最近議員達の不正が多発していて信用出来ないからだ。

 議員達は本当に仕事をしているのだろうか?私には私腹を肥やしているようにしか見えない。そして私の義叔父(おじ)がその政務代表大臣を務めている。

 私の家は戦前から代々大臣を排出している旧家らしく私の母も財政大臣を務めている。私の義叔父――ザイジスというのだが――が不正をしているとすれば私の母―――レイティや父、他の親戚達も関わっているのだろう。私は自分の血筋に誇りを持っている。

 だから、その血筋を汚した腐敗している人達が憎い。でも、それでも一応身内だから信じたい。そうだ。兄さんに聞いて見よう。


(にぃ)様!どうしたら、人を無条件に信じることができますか?」

「どうしたの?突然だなぁ。無条件に信じる方法ねぇ。」


 兄様は考え込んだ。そして言う。


「無理だなぁ。人間は結構打算的で腹黒くて残虐な生き物だから例え身内であっても無条件には信じない。」

「兄様は私を信じますか?」

「そうだねぇ。レティエのこと()信じるかなぁ。」

「そっか。もし私が(かぁ)様に制裁を喰らわせようとしていても?」

「あぁ。母様に制裁を喰らわせようとしているのかい?」

「さぁ?私は兄様をある程度は信用しているから教えてもいいけど。今は教えてあげられない。」

「くすっ。素直だねぇ。僕が母様に言ってしまうとは考えないの?」

「言ってももう間に合わないから。」


 このことは最後に手心を加えるかどうかということに()()繋がっていない。計画は始まっているのだから。

 ザイジス達の最大の失敗は私を子供だと侮ってか私を巻き込もうとしてか私に情報が筒抜けだったことだろうか。処理される前の記録が私の手の届く場所にあったから。

 きっと国民の中にも上の不正に気付いている人達がいるのだろうし私まで連座にされても嫌だからそういう人達にあたって革命の手筈は整えたしその後新しい頭領に担ぎ出されても面倒だしお誂え向きな人材と補佐できる人材も確保した。

 私は革命が終われば自由に生きられる筈だ。もし革命の仲間に裏切られても自由に生きる為に隣国や友好国にも逃げられるように伝でどうにかした。

 うん。頑張った。兄様はまだ巻き込めない。一応、義叔父の力がどれ程かある程度は把握できているけど狂ったら何をするかわからない。もし何が起きて私が捕まった時、兄様を守る為に必要な措置だ。


 最悪私が死ぬ事態になれば兄様に()()()()が届くようにしている。兄様はその時ことの全てを知るのだろう。

 今回の革命は成功したらほとんど血は流れない。失敗しても流れるのは私とほんの数名の血だけだろう。

 過去にも《無流血革命》と言われる革命が成功している。私達に出来ない筈がない。


 この作戦は腐敗している議員達を内側から崩していくようになっている。そのための協力者は優院に3人と補院に7人潜り込ませたし協力者達の中でも限られた者にしか作戦の全容を知らせていない。

 きっと後世の人々には私のことが悪女だとか言われるのだろう。気にしないけど。私はそのとき生きてないだろうし。


「レティエ。

 ザイジスに気を付けて。」


 このときの兄さんの忠告を聞いていれば私の作戦は完全に成功していたのだろうか?狂乱したザイジスは兄さんを巻き込んでしまった。私の地雷を踏み抜いたのだ。私はキレた。それはもう誰にも止められないほどに。やり過ぎてしまったのだ。

 結果、隣国との関係の始末に追われている間に逃げ損なった。兄さんだけでも逃せたのは不幸中の幸いだった。私は悪女を飛び越して悪魔にされた。生きている間に。災厄みたいだ。教会で処刑されることが決まった。兄様にあの手紙がちゃんと届くだろうか?リカルト兄様が生き延びて一族の子供達を比護してくれますように。

 私の守りたかった者達に幸せが届きますように。


 処刑の鐘が鳴り響く。私は質素な服を着て牢から出されそこから続く段差を登る。


「何か言い残したことは?」


 執行人に問われる。


「ごめんね。こんなことをさせて。人なんて殺させてしまって。」


 執行人に囁く。驚いた顔をするが私の革命に巻き込んでしまった人なのだから謝罪は当然必要だろう。それから私は宣言する。


「この国の民達よ。革命は終わりだ。散れ同志達よ!我らの目的は達成した。敵討ちなどしようと思うな!これ以上は無意味だろう。アルティゴス王国よ栄光あれ!」

「「「アルティゴス王国よ栄光あれ!」」」


 執行人が涙目になっている。演説は苦手だと思いながら私の処刑は執行された。


ーーーーーーーーー


 この国が滅ぶとき、唯一人信頼できる兄様へ


   リカルト兄様。お元気ですか?

   兄様がこの手紙を読んでいる頃私はこの世界に

  はもう居ないことと思います。

   思う存分悲しんで泣いてください。そして笑っ

  てください。その後一族の子供達を比護してくだ

  さい。あの子達には罪がありません。

   もし私を憎むならそれでも良いと言ってあげて

  ね。

   兄様、私を信じてくれてありがとうございまし

  た。兄様を巻き込みたくないので伝えなかったこ

  とを伝えたいと思います。

   

   まず、兄様が知っているだろうことから。

  私は革命を起こします。目標は《無流血革命》で

  す。

   母様やザイジスなどの一族の大人達はほとんど

  が不正をしていて、不正をしていない者は傍観者

  です。制裁を加えるのはその人達だけです。それ

  以外の人は巻き込まない予定なのでそれ以上の被

  害が出そうな場合はこの手紙をナシアミイという

  人に見せて止めてあげて欲しいです。

   その後ナシアミイを旗本に新政府を作る手筈な

  ので一族の子供達を連れてイチリア村という山間

  の村に行ってレイシスという魔術師の弟子として

  生活してください。後は頼みました。


   最後に、私は兄様の妹に生まれて来て良かった

  です。私の兄様になってくれてありがとうござい

  ました。私の自慢の兄様です。幸せになってくだ

  さい。


         レティエ・ルールア・アテルリス


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