動揺
一週間・・・?今まで考えていたこともすべてが吹き飛んで頭の中は一瞬で空っぽになってしまった。
そして空っぽになった頭を埋めるようにすぐさま焦りと混乱が生まれる。あまりの衝撃に言葉が出ない。目の前の現実を信じることができない。
「一週間!?そんなわけないじゃん‼」
エリアスは俺から腕時計を奪い取るとこれまで見たことないような真剣な顔で時計を凝視する。思わず口が開き言葉が出ないとでも言わんばかりに俺のほうを見てくる。明らかにおかしい出来事だ。俺たちは一週間もこのダンジョンにはいないはずだ。どれだけ異常なことが起こる場所であってもそれくらいの自覚はある。
「ダンジョンって時間の速さ違うってことは?」
「あるわけないじゃん。いくら変な場所とはいえ時間のズレなんて」
俺たちはいったいどこで一週間近く過ごした?4層か?いや、4層に入ってからかなり時間は経っているがそれでもまだ3時間も経過していないはずだ。ならば5層か?5層なら1日2日過ごしていても不思議ではないかもしれない。だが当然7日間も過ごしているわけがない。いつだ、いつなら俺たちが気が付かないうちに時間が流れていても不自然じゃない?
「まさか最初にアーティファクトに出会ってからなのか・・・?」
「うそっ!アーティファクトに出会って5層に運ばれるまで4、5日も寝てたっていうの!?ありえないよ!だってあれは」
「ああ、たった数時間の出来事だったはずだ」
だが他に正確に自分の体で時間を確認できていないタイミングがない。目を覚ましたのはアーティファクトの動きが止まったのを感じたからだ。どのくらい眠っていたかなんてわからない。5層でも俺たちは一度眠っているがただの休息で一週間も眠ったとはとても考えにくい。
「もしも2層から5層まで休みなしでドリルで穴を掘ったら4、5日かかってもおかしくないんじゃないか?」
エリアスも薄々気が付いているはずだ。これくらいしか可能性がないことに。
「ここまでで一週間と4日。地上に出るのに最悪1日としてオリジルから王都まで4日。ギリギリすぎるよ‼」
ミーティは三週間であのひび割れのような奇妙な症状が全身に広がると言っていた。ただ三週間というのはあくまでも推定だ。実際はそれより早いかもしれないし遅いかもしれない。だがどうであれ早く帰るのが良いのは間違いない。しかし時間がないし、目的物もない。
「時間がない。休憩は終わりだ」
こうなった以上もう休憩なんて呑気なことはやっていられない。とにかく探す、見つけるまで探し続けて地上に出る。無計画、頭が悪い、そんなことを言われても仕方ないと思う。だが俺は今俺にできることをやるしかない。ブラッドチェリー見つからない理由なんて俺にはわからないし、現状解決できる気もしない。だからとにかく探す。
「まずは川に沿って歩きましょう。見つかるかはわからないけど」
「それでも行くしかないさ。可能性があるなら」
そうしてザクザクと音を立てながら石の敷き詰められた川辺を歩き出した。どれだけ歩いても目の前の光景は相変わらず変化がない。変化しているのはせいぜい川の幅くらいだ。それにしてもこの川は透き通るほど水がきれいなのに水生生物が全然いないな。まあ川で堂々と泳いでいる大きい魚なんてあんまりいない。川で見かけるのはせいぜい小さな川で泳ぐ小魚か石の裏とかにいる小さい蟹ぐらいのもの。よく見ればそこら中に何かしらいるのだろう。時間があるならじっくりと観察したいな。
気が向いたらまたここに、いや無理だな。生きて帰れないだろうし。
そんなことを思いながらもブラッドチェリーらしきものはないかと辺りを見回す。だがあるのは全く関係ない木々と石だけ。あまりにも代わり映えしない。見回して、代わり映えしないという現状を自覚するたびに少しずつ気が重くなり、不安が大きくなっていく。実は実在しないものを探しているのではないか、仲間を助けたいがために幻想にすがっているのではないかとネガティブな錯覚をしてしまいそうになる。
だがポジティブにはなれそうにないがネガティブなっている場合ではない。暗い気分になったところで問題は何も解決しない。どれだけ精神をすり減らそうが時間は止まらないしブラッドチェリーが見つかるわけでもない。鞭打って進むとしよう。
「どわっ!」
何かに足を引っかけて転びそうになる。まったく足元には注意しないとな。
「アンタが転んだら私も危ないんだからね!」
「メンゴメンゴ」
みんなも足元には注意しよう。スマホばっかりいじってるとそのうち大けがするぞ!
石だらけだから川で転ぶのは本当に危ない。転んだ先に尖った石が・・・なんて考えるだけで恐ろしい。やれやれ、あまり考え事しすぎるのも問題だな。つまずいた場所を見ると石だらけの地面の中に一か所だけ違和感ある場所を見つけた。俺のつまずいたところだけ石が浮いている。下に何かあるのか?気になって石をどかしてみると石だらけの場所には不似合いな何かがある。
一目見ただけではそれが何なのかわからなかった。だがよく見るとそれは折れた低木だった。低木はかなり長く切られた、もしくは折られたのか残っているのは根の部分だけだった。俺は一瞬ポカンとしてしまったがこれがどういうことなのかすぐに理解して一週間・・・?今まで考えていたこともすべてが吹き飛んで頭の中は一瞬で空っぽになってしまった。
そして空っぽになった頭を埋めるようにすぐさま焦りと混乱が生まれる。あまりの衝撃に言葉が出ない。目の前の現実を信じることができない。
「一週間!?そんなわけないじゃん‼」
エリアスは俺から腕時計を奪い取るとこれまで見たことないような真剣な顔で時計を凝視する。思わず口が開き言葉が出ないとでも言わんばかりに俺のほうを見てくる。明らかにおかしい出来事だ。俺たちは一週間もこのダンジョンにはいないはずだ。どれだけ異常なことが起こる場所であってもそれくらいの自覚はある。
「ダンジョンって時間の速さ違うってことは?」
「あるわけないじゃん。いくら変な場所とはいえ時間のズレなんて」
俺たちはいったいどこで一週間近く過ごした?4層か?いや、4層に入ってからかなり時間は経っているがそれでもまだ3時間も経過していないはずだ。ならば5層か?5層なら1日2日過ごしていても不思議ではないかもしれない。だが当然7日間も過ごしているわけがない。いつだ、いつなら俺たちが気が付かないうちに時間が流れていても不自然じゃない?
「まさか最初にアーティファクトに出会ってからなのか・・・?」
「うそっ!アーティファクトに出会って5層に運ばれるまで4、5日も寝てたっていうの!?ありえないよ!だってあれは」
「ああ、たった数時間の出来事だったはずだ」
だが他に正確に自分の体で時間を確認できていないタイミングがない。目を覚ましたのはアーティファクトの動きが止まったのを感じたからだ。どのくらい眠っていたかなんてわからない。5層でも俺たちは一度眠っているがただの休息で一週間も眠ったとはとても考えにくい。
「もしも2層から5層まで休みなしでドリルで穴を掘ったら4、5日かかってもおかしくないんじゃないか?」
エリアスも薄々気が付いているはずだ。これくらいしか可能性がないことに。
「ここまでで一週間と4日。地上に出るのに最悪1日としてオリジルから王都まで4日。ギリギリすぎるよ‼」
ミーティは三週間であのひび割れのような奇妙な症状が全身に広がると言っていた。ただ三週間というのはあくまでも推定だ。実際はそれより早いかもしれないし遅いかもしれない。だがどうであれ早く帰るのが良いのは間違いない。しかし時間がないし、目的物もない。
「時間がない。休憩は終わりだ」
こうなった以上もう休憩なんて呑気なことはやっていられない。とにかく探す、見つけるまで探し続けて地上に出る。無計画、頭が悪い、そんなことを言われても仕方ないと思う。だが俺は今俺にできることをやるしかない。ブラッドチェリー見つからない理由なんて俺にはわからないし、現状解決できる気もしない。だからとにかく探す。
「まずは川に沿って歩きましょう。見つかるかはわからないけど」
「それでも行くしかないさ。可能性があるなら」
そうしてザクザクと音を立てながら石の敷き詰められた川辺を歩き出した。どれだけ歩いても目の前の光景は相変わらず変化がない。変化しているのはせいぜい川の幅くらいだ。それにしてもこの川は透き通るほど水がきれいなのに水生生物が全然いないな。まあ川で堂々と泳いでいる大きい魚なんてあんまりいない。川で見かけるのはせいぜい小さな川で泳ぐ小魚か石の裏とかにいる小さい蟹ぐらいのもの。よく見ればそこら中に何かしらいるのだろう。時間があるならじっくりと観察したいな。
気が向いたらまたここに、いや無理だな。生きて帰れないだろうし。
そんなことを思いながらもブラッドチェリーらしきものはないかと辺りを見回す。だがあるのは全く関係ない木々と石だけ。あまりにも代わり映えしない。見回して、代わり映えしないという現状を自覚するたびに少しずつ気が重くなり、不安が大きくなっていく。実は実在しないものを探しているのではないか、仲間を助けたいがために幻想にすがっているのではないかとネガティブな錯覚をしてしまいそうになる。
だがポジティブにはなれそうにないがネガティブなっている場合ではない。暗い気分になったところで問題は何も解決しない。どれだけ精神をすり減らそうが時間は止まらないしブラッドチェリーが見つかるわけでもない。鞭打って進むとしよう。
「どわっ!」
何かに足を引っかけて転びそうになる。まったく足元には注意しないとな。
「アンタが転んだら私も危ないんだからね!」
「メンゴメンゴ」
みんなも足元には注意しよう。スマホばっかりいじってるとそのうち大けがするぞ!
石だらけだから川で転ぶのは本当に危ない。転んだ先に尖った石が・・・なんて考えるだけで恐ろしい。やれやれ、あまり考え事しすぎるのも問題だな。つまずいた場所を見ると偶然にも石だらけの地面の中に一か所だけ違和感ある場所を見つけた。俺のつまずいたところだけ石が少し浮いているように見えたのだ。
下に何かあるのか?
気になって石をどかしてみると石だらけの場所には不似合いな何かがあった。一目見ただけではそれが何なのかわからなかったがよく見るとそれは折れた低木だとわかった。低木はかなり長く切られた、もしくは折られたのか残っているのは根の部分だけだった。俺は一瞬ポカンとしてしまったがこれがどういうことなのかすぐに理解して目を見開いた。
「なあ、これって」
「ブラッドチェリーね。見つからないわけだわ」
「ってことはこの一帯の全部か!?」
この一帯全部のブラッドチェリーが持っていかれたっていうのか?冒険者か?だがそれだったら低木をへし折る必要はないはずだ。いや、それ以前になぜ低木は折られている?そして折られた低木はどこへ行った?俺はブラッドチェリーをゲットできるのか?自分でもわかるくらいとても焦っている。
「歯形からして草食動物のものだと思うけど」
焦る俺に反してフィリアは冷静に低木を観察する。その姿を見て俺も落ち着くように自分に言い聞かせる。低木を見るとフィリアの言う通り何かの歯形がしっかりとついていた。俺は動物には詳しくない。だから歯形を見たところでわかることはほとんどない。
「木を食べる動物なんているのか?」
「皮を食べるっていうのは知ってるけど木を食べるっていうのは知らないかなぁ」
「私もよ。木を丸々1つ食べる草食動物がダンジョンにいるなんて聞いたこともないし」
動物が木を一本食べるなんてどうにも想像できない。でかい草食動物、象とかか?確かにたくさん食べてそうだけど木を食べる絵はやはり想像できない。しかもこの辺りに大きな動物が歩いたような痕跡はない。この一帯のブラッドチェリーを食べ尽くすということは数がたくさんいるんだろう。
さすがに1匹でこの一帯を食べ尽くす、というのは現実的ではない。
一体どんな生物なのだろうか。シロアリとか虫じゃなければいいが。もう5層での出来事みたいなものはごめんだ。実のところ虫とかは得意じゃないんだ。見た目の気持ち悪さによっては顔を青くするぞ。
さて、ブラッドチェリーが見つからない理由はよくわかった。そしてそれを知ったうえで俺たちには選択肢が2つある。1つはこの一帯には見切りをつけて別の川辺を探すこと。もう1つはまだこの川で探してみること。まあ無難に他の場所に向かったほうが可能性はあるだろう。もし、ブラッドチェリーがなければかなりの時間をロスしてしまうことになるが。
「フィリア、近くに他の川ってないか?」
「ちょっと待って」
フィリアは考えるように目をつぶって小さな煌めく羽をピクピクと動かしている。
「ないわ。ここからじゃ1番近いのでも1日はかかるかも」
悩みどころだ。可能性ある川は時間を1日使ってしまう。だがここにいたって問題を解決できるとは思えない。だがどちらを選んだとしても結局は僅かな可能性に賭けるしかない。
「行こう、それしかない」
「でもそれじゃ時間が」
「急がば回れ。時間をかけてでも可能性の高いほうに行った方がいい。エリアスもそれでいいな?」
「どうせそれしかないしね」
「わかった。じゃあ急いで行くわよ」
そうしてまたフィリアを手に乗せて俺たちは森を歩き始めた。もう少しだ、もう少しで手がかかる。
そんなもどかしい気持ちが消えることはまだない。




