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それでも転生者は異世界を生きていくようです  作者: 春深喜
ダンジョン探索編
48/106

遠回りの始まり

人工物(アーティファクト)!?」


「簡単に言うと激レアモンスター!」

黒いキューブ型の胴体と結晶でできた巨大な手。しかも原理はわからないが巨大な手は自由に飛び回り、本体も宙に浮いている。その見た目はどう見ても自然界の生き物ではない。まさに人工物と言うにふさわしいだろう。それに激レアというだけあってこんなモンスターのことなど聞いたこともない。


「エリアスは下がって!」

神器を構えて相手の様子を見る。人間でも、そこら辺のモンスターでも、キメラでさえもない今までとは全く違う敵。一体どう動くのか予想がつかない。


アーティファクトがゆっくりと手を上げる。そしてただ地面を叩くように勢いよく振り下ろす。本当にただそれだけのシンプルな動作だっだ。アーティファクトが何をしたのかわからなかった。地面に振動が起こる。

当然攻撃は届いていない。だが次の瞬間だった。アーティファクトが叩いた地面からまるで波立つように結晶が現れものすごい速さでまっすぐこちらに向かってくる。


すぐに横方向へ回避する。危ないところだった。もし、あの結晶に当たっていたら今頃串刺しにでもなっていただろうか。そう考えると寒気がする。アーティファクトは依然として静かにそこに佇んでいる。顔がないから何を考えているのか全くわからない。

次は一体どこに結晶を発生させるのだろうか、アレは一体どこを見ているのだろうか。


「エリアス、コイツに弱点とかないのか?」


「弱点かぁ。アーティファクトはすごくシンプルに作られてるからこれと言って弱点っていう感じのものはないかな。強いて言うなら体。手を破壊して攻撃手段が減ったところで体を狙うのがいいかも」


「わかった」

よし、じゃあまずは手の破壊だな。結晶の攻撃は速くて厄介だが

躱せないわけじゃない。それに手だったら胴体を狙うよりもずっと難易度は低い。やることはいつも通り。突っ込んで、剣を振る。それだけのシンプルな戦法。剣を握り直して堂々と真正面からアーティファクトに向かって走っていく。


さっきと同じように結晶が目の前から迫ってくるがそれを難なく躱す。当たったら大ダメージだろうが攻撃の方向は一方向、まっすぐ進むだけだ。一度見ればあとは何度同じ攻撃をされようが簡単に避けられる。宙に浮いている手まで辿り着くのはとても簡単だった。


「おぉらっ!!」

何も考えずただ思いっきり剣を巨大な結晶でできた手に向かって振り上げる。剣は止まることなく綺麗にアーティファクトの手を切断した。斬られた手はドスっと鈍い音を立てて地面に落ちた。良かった、斬られたことでただの結晶になったみたいだ。斬ったとしても宙に浮いて問題なく動く、みたいなことになったらどうしようかと一瞬心配したが無事破壊できたようだ。


アーティファクトは自分の手を破壊されたことに危機感を抱いたのだろうかもう片方の手がロケットみたいな速さで俺に向かって飛んできている。さすがに避けられないな。すぐに剣の側面を見せるように構えて防御の姿勢をとる。だが


「アイス・ウォール!」

目の前に突然氷の壁が現れアーティファクトの拳を防いだ。

どうやらエリアスの魔法らしい。おかげで怪我をしなくて済んだ。


「助かった!」

結晶の手は氷の壁にぶつかっているというのにそれでも無理矢理その壁を壊そうと前へ前へと突っ込んでいる。氷の壁はまだどうにか耐えられそうだがペキペキとヒビの入る音が聞こえているため破壊されるのに時間はかからないだろう。向こうがその気なら俺にも考えがある。俺は両手でしっかり剣を握って腰を少し落とす。そう、バッターの構えである。俺は飛んでくるロケットパンチを斬るつもりだ。


「普通に構えればいいのに」

何か言われているような気がするがきっと気のせいだろう。

壁の亀裂が徐々に広がっていく。そしてガラスが割れるような音とともに氷が砕け、そこからロケットパンチが飛んできた。俺は飛んでくる手にタイミングを合わせて剣を振った。確かに斬った感触。もう片方の手も破壊したことでアーティファクトはついにそのキューブ型の本体だけになってしまった。


「よーし、ここまでやれば」


「あとは楽に倒せるはずだよ」

俺は胴体だけになったアーティファクトをじっと見つめる。手を失ったからなのか急に大人しくなった。巨大な結晶でできた手が宙を舞っていたときも不気味な感じがしたが、手がなくなってキューブ型の胴体だけになるとさらに不気味なものに見える。洞窟の中でこんなよくわからんキューブが静かに浮いていたら怖いに決まってる。


油断はせず確実に倒そう。ただ困ったことにどう攻撃を仕掛けるべきなのかわからない。いつものように突っ走って仕留めるべきなのか、それとも慎重になるべきなのだろうか。アーティファクトと戦ったことなんてないから何が起こるかなんて当然わからない。突っ込んだところで自爆でもされたらひとたまりもない。


「自爆機能とかないよな?」

一応エリアスに聞いておく。


「それはわかんない」


よし、慎重にいこう(即決)


ゆっくりとその奇妙な立方体に近づく。1歩ずつゆっくりと崩れそうな橋を渡るかのように。


剣の間合いまで接近することができた。俺は早く終わらせたくて剣を振った。だが狙いが外れた。アーティファクトが瞬時に俺の攻撃を躱したのだ。こいつはまだ戦う気だ!!


後ろへと飛んで距離を取る。アーティファクトを見るとヤツの本体に変化が生じていた。黒い立方体の内側からショッキングピンクの光が漏れ出していた。気が付かなかったが体にパズルのような線が入っているようだ。そこからさらにアーティファクトは体の一部をルービックキューブのように回転させる。まるで体の何かを組み替えるように。


「これヤバくね?」


「うんヤバい」

などと悠長に言っている場合ではない。これ倒しちゃっていいのか?!今斬ったら爆発しそうなんだけど。でもこのまま放っておいたらそれはそれで爆発しそうだしな。よーしここは()()手段を使うしかない。


相手は自分の体でルービックキューブをしている。そして俺たちは五体満足。足がすくんで動けないわけでもない。つまり走ることができる。ここから導かれる結論は1つ。


「逃げるんだよォ!」


「アイアイサー!!」

俺とエリアスは急いで回れ右して走り出そうとした。だってどう考えてもそれが最善の一手だもん。でもまあなんて言うか、許されなかったよね。


回れ右した瞬間何かに体を掴まれた。後ろを見るとアーティファクトからジェル状の触手のようなものが伸びていてそれが俺の体に巻き付いていた。俺の体は抵抗することもできず宙に浮く。

そうして俺はそのまま何なのかわからないショッキングピンクの液体にぶち込まれた。どうやらアーティファクトに飲み込まれたらしい。ショッキングピンクの光源はアーティファクトの体内のこの液体だったようだ。俺に続いてエリアスもぶち込まれる。


そしてアーティファクトが開いていた体を閉じてまた最初の立方体へと戻る。完全に閉じ込められた。外では何が起きているのかわからないがすごい振動が伝わってくる。


いや、外で何が起きているかなんて今どうでもいい。ここから出なければ。このまま溶かされるなんてゴメンだ。だがどうすればいい?狭すぎて剣は出せない。それに液体の中じゃ剣なんてまともに振れない。焦る俺にエリアスが落ち着けとジェスチャーする。


この液体自体が光を発しているおかげでお互いの顔や仕草を見ることはできる。エリアスがさらにジェスチャーする。


?何のジェスチャーだこれ。


鼻をつまんでその次に喉を押さえる。鼻、喉に関連すること、呼吸か!!そういえばさっきから苦しくない。いつもどおり普通に息をしていた。どうなってるんだ。原理はよくわかんないけど呼吸はできている。心配ごとが1つ減った。


だがここからどうやって抜け出すかだ。魔法が使えればもしかしたらどうにかなったかもしれないが俺は魔法に関してはど素人だから全然使えないし。エリアスなら―――――


そう思ったのと同時にエリアスがギュッと抱きついてきた。

俺は意図が理解できずにエリアスの肩を叩いた。するとエリアスは頬を膨らませてこちらを見たあと自分で俺の腕を自分の背中へとまわした。あのお気楽、ぐーたら天使のエリアスでもこんなときは怖いのだろうか。まあ仕方ないことか。こんな状況だもんな。怖いと思って当然だ。俺は「大丈夫だ」と言い聞かせるようにエリアスを抱きしめた。




そのままどのくらい眠っていたのだろうか。目を覚ましたのは今まであった振動が突然止まったからだ。俺たちはまだ生きている。ありがたいことにそのまま消化されるということにはならなかったらしい。しばらくすると外部から光が差した。アーティファクトが体を開いたのだ。俺たちはそのまま外部へと排出された。エリアスを庇う形で俺が下に、クッション代わりになって背中から地面に落下した。


上を見ると天井に突き刺さっているアーティファクトの姿があった。あそこから俺たちを落としたのか。そこそこの高かったから多分普通の人間なら死んでるな。アーティファクトは天井の穴へと入って行ってしまった。あの振動は穴を掘ってときのだったのか。


「エリアス、起きろ」


「むにゃあ?ここどこ?」


「それは俺が聞きたいけどな」

ダンジョンの中だとは思うが一体どこなのかわからない。


そこは辺り一面真っ白だった。地面も天井もそこにある何もかもが白かった。明らかに異常な光景だっただろう。真っ白なだけではない。まるで神殿のような、あるいは四角い民家のような人工物に見えるものが所々にある。そしてここは音がない。一切の環境音がしない。生き物も見えない。ぼんやりしていたら気がおかしくなってしまいそうだ。


「白・・・白!!まさか!!」

エリアスは寝ぼけていた頭が覚醒したのか周りを見る。

「ここはどこなんだ?」


「ここは第5層、虚無の白域。かなり危険だよ」


「とりあえず上に上がる道を」

そのとき、一切音がないこの空間で初めて自分たちの声とは違う音が聞こえた。


「こっちだ!」

エリアスの手を引いて近くの物陰に隠れる。音がどんどん近づいてきている。その音は虫の羽音のような音だった。音の大きさからしてきっと手で潰せるような大きさの虫ではないだろう。カサカサと鳴り続ける羽音。まだ近くにいるのはわかる。


こっそりと少しだけ物陰から頭を出す。その姿を見た途端俺の動悸が速まる。そこにいたのはムカデのような胴体に羽が生えていて、ドリルのような頭がついた巨大な怪物だった。当然見たことのないモンスターだ。


巨大なムカデのモンスターはしばらくそこにいたが俺たちには気が付かずどこかへ行ってしまった。そこで初めて安堵のため息をついた。


「これからどうするの?」


「当然上を目指す。それもできるだけ早くな」

俺らにはタイムリミットがある。こんなところで時間を無駄に消費できない。


「とは言ってもどこに行けばいいのやら」


「そうだねぇ。ここがどこかも分かんないし」

俺らは第5層のどの辺りにいるのだろうか。今のところ手掛かりになりそうなものもなし。せいぜいわかることといえば、とりあえずダンジョンの端っこではないということぐらいだ。探索にはできるだけ時間は掛けたくない。


「ここがどんなところかわかるか?」


「見ての通り一面真っ白で環境音がない。おかげで精神崩壊を起こす冒険者も結構いる。モンスターは手強いってところかな」


「つまり状況は最悪ってことか」

精神崩壊を誘発させる空間と命を直接取りに来るモンスター、ダンジョンは俺たちを殺しに来てる。だがここで止まっているわけにもいかない。例えいつ死のトラップを踏むとしてもここで止まっていても解決しない。そんな死の空間を俺たちは適当に歩き出す。どこを目指すわけでもない。進む先に上に行く階段があるかどうかは完全に運次第だ。

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