究極人工生命体
「俺たち8人揃って」
『あ☆g♤fjsl△○zsptい!!』
「・・・・・今暗殺部隊って言ったやつ手あげろ」
8人中ちゃんと本来の名前である暗殺部隊と言ったのはエルシア1人らしい。
「私はそもそも違うし」
ユウナはそっぽを向いた。何だこの統一のなさは。これ決戦のはずなんだけど団結してないないな。
まあそりゃそうだよな。だって俺たち出会ってから1か月経ってないからな。本来ならもっといろんなドラマがあるんだろうけど俺たちの場合はゲームで例えるなら最初のステージからラスボスまで何もかもを吹っ飛ばしているようなものだ。きっと信頼度が低いんだな。
「はぁ。お前といると士気が乱れる」
「和むと言いなさい。俺が悪いみたいでしょうが」
「良くも悪くも事実かと」
うぐふっ!誰も俺のフォローをしてくれない。やっぱりもっとみんなとの交流を深めた方が良かったのかもしれない。まあ俺が乱しているのは事実だからどうあがいても叩かれるだろうけど。でもね!?でもね!?俺だっていろいろ考えてetc
「あなたたち忘れているようだから言っておくけど今そこそこの窮地よ?」
ぐだぐだな俺たちを見てユウナが忠告してくれる。忘れていたがそういえば今は戦闘中だった。それもラスボスを目の前にしてのだ。また大事な場面でふざけてしまったらしい。じゃあそろそろ真面目にやろうか。クールに、それでいてアダルトでダークな感じに。
「エルシア」
「了解」
エルシアは両腕を後ろに思いっきり引く。それは殺し合いの始めるという合図でもあったが同時にすべてに決着をつける必殺の一撃だった。周囲のキメラは瞬く間にバラバラになり、静かに血の海を作った。
俺たちはただふざけていたわけじゃない。ちゃんと目的は果たす。
「加賀、今のうちに降参しておけば痛い思いしなくて済むぜ?」
「ふざけろ。この究極人工生命体がいる限り負けはない。お前らこそ今のうちにまともな命乞いを考えておけ」
この状況でこれほどの余裕、自分の勝利を信じて疑っていないようだ。それほどあの筋肉塊みたいなキメラに絶対的な信頼を置いているのか。前に戦った体が泥のキメラは強かった。それは体の殆どが水分で攻撃が効かなかったからこそ強かった。
だがそれでも最後は水を蒸発させるほど高熱の炎の前に敗れた。
それに対して目の前のソイツの体は肉のように見える。
肉体を持つということは体温がある。どんな生き物だって生きているのならば体温があり、その体に適切な体温、周囲の温度がある。高すぎても低すぎてもだめだ。
そして肉体があるということは斬られたり、殴られたりすればダメージを受けるはずだ。例え俺みたいに再生能力を持っていたとしてもダメージはある。どう考えてもあの泥人形たちの方が強く感じてしまう。
加賀は何でこんな弱点だらけのキメラに絶対的な信頼を置いているんだ?パワーやスピードはあるのかもしれない。でもそれだけじゃこの異常な自信に説明がつかない。攻撃を跳ね返すチート能力でも持ってんのか?そうだとしたら詰みなんだが、そんな風には見えないな。
「後は頼むぞ」
加賀はそのキメラにそう言ってその場を去ろうとする。
「逃げんのか!?」
「ああ、逃げさせてもらう。俺の能力はお前らみたいに脳筋じゃない」
加賀は複数のホワイトライオンのようなキメラを連れて奥へ、暗がりの中へと消えていった。
追いたいのはやまやまだがこの状況では当然無理だな。組を二つに分けるしかないな。
「部隊の皆は周りを頼む、ユウナは加賀、あの転生者を追ってくれ」
「わかった」
「それとユウナ、奴は殺すな。アイツには聞きたいことがあるんだ」
ユウナは何も言わずただ右手の親指を立てると加賀の進んで行った暗がりへと走っていった。
「彼女一人で大丈夫なんですか!?」
「ユウナなら大丈夫。多分うまくやってくれる」
ユウナを加賀の追跡に行かせたのはその能力の強さが理由だ。重力操作は超がつくほど強力な能力。はっきり言おう、恐らく世界最強の能力だ。重力の操作は一見地味で対して強くもなさそうに思える能力だが実際のところはその真逆だ。話を聞く限り重力の強弱、向きを自在に操る能力。しかも敵を操った重力と重力で押し潰す技、G.V。この技の存在が操作できる重力が複数あるということを物語っている。
そしてこの能力の最大の特徴は攻撃面では目に見えない、躱せない、防げない、発動時ユウナ自身は何の動作も必要ない、防御面ではユウナ自身に物理攻撃は当たらない、それどころか下手をすれば近づくことすらできない。ということ。
加賀みたいに戦闘向きのじゃない能力はもちろん、俺みたいな脳筋能力でさえこの世界の法則に従っている限り、本気になったユウナを止めることはできないだろう。
あの力はこの世界で唯一世界の法則に逆らうことができる。その差はすぐに埋めることはできない。
「俺たちは俺たちの心配をすればいい」
目の前の究極人工生命体はだるそうに、力なく立ちながら俺たちをじっと見ている。周囲のキメラが死んだというのに焦るような様子を見せることもなく、ぼんやりと、「興味はない」とでも言いたげな態度。何を考えているのか一切わからない。
オオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
究極人工生命体が上空を見ながら発した雄叫びだった。人間の声に近いがそれとは少し違う、まさに怪物というにふさわしい。そんな雄叫びだった。そしてその雄叫びに反応したのかまた上空どこからか何体ものキメラが下りてきた。
「皆、予定通りに」
そこで少しでも究極人工生命体から目を離したのが間違いだった。
顔面に強い衝撃、そしてすぐに背中にも衝撃が走る。一瞬にして距離を詰められ、顔面を殴られ後ろの壁までぶっ飛んだらしい。砕け散った壁の瓦礫を除けながら立ち上がる。
「くそ、痛てえ」
俺は鼻血を親指で拭うと踏み込んで究極人工生命体まで一気に距離を詰めた。
そして今度はアイツの顔面に思いっきり右ストレートを叩きこんだ。向こうも俺と同じように壁まで吹っ飛ぶ。
「皆離れてろ。巻き込まれたくなかったらな」
これはまずい。一発殴られただけでわかる。あのパンチは確実に転生者と同等かそれ以上のパワー。普通の人間があのパワーをくらったらどうなるのかなんて言うまでもない。もし転生者だったとしてもパワー系の転生者ならまだしも半端な能力の転生者なら確実に殺される。こいつは今確実に殺さなきゃいけない。こんなのが野放しになったらこの世界は終わる。
究極人工生命体がゆっくりと起き上がる。殴られたダメージがあるのか、ないのかはわからないが戦闘に支障はないように見える。やはりそこらへんのキメラと違って頑丈らしい。
俺は剣を構え、究極人工生命体は何かをする仕草もなくお互いに1歩踏み込んで加速する。接触に3秒もかからなかっただろう。俺はその勢いのまま1歩足を着くとすぐに空中で体を横に倒しながら縦によじる。剣を上から叩きつけるように振った。剣はまっすぐに究極人工生命体の右肩へと振り降ろされそのまま腕を斬り落とした。
そのままヤツの胸のあたりを蹴って後ろの方へと飛ぶ。腕を斬り落とした。剣には赤黒い血がついている。今度こそダメージはあるはずだ。すぐにまた距離を詰めて追撃する。ヤツは痛みに鳴き声を発することもなく静かに斬り落とされた自分の腕を見ていた。肩から大量に出血しているのにもかかわらず。
「その首、もらう!!」
今度は横振り。確実に首を斬る。早期に決着をつけたほうがいいと俺の直感が言っている。長引かせたら不利になるとなんとなくわかるのだ。剣はまたまっすぐに首へと向かっていく。だがその首を刎ねることはできなかった。無論躱された。それもただ少し膝を曲げるだけという最小限の動きで。
カウンターの左フックが俺の腹に直撃する。俺との距離が離れると究極人工生命体は斬り落とされた右腕を拾って肩の切断面に付けた。すると斬り落とされたはずの右腕が何事もなかったかのようにまた動き出す。
「最悪かよ・・・・・」
切断された腕がまたくっつくなんて。驚異的な再生能力だ。これじゃいくら斬ったところで意味がない。斬り落としてこの再生能力なら傷をつけた程度じゃ瞬時に再生されるのは明白だ。倒すには首を斬るのが1番効果的か。
剣を構え直す。首を直接狙いにいっても意味はない。おそらく返り討ちに遭う。首を斬るにはいくつかの段階を踏む必要がある。
まず脚、次に手どちらも右もしくは左と同じ側の手足を斬ってバランスを崩す。そして最後に首を斬る。それが1番可能性ある勝ち筋だと思う。
ぎゅっと剣を握る力が強くなる。再び力と力がぶつかる。凄まじい速さで繰り広げられる打撃と斬撃による瞬きも許されないほどの高速戦闘。かすり傷なんて気にしていられない。致命傷になる攻撃だけは避けてそれ以外の支障のないものは無視。そうでもしないと互いに負ける。
打撃がかすって脇腹に切り傷ができる。その小さな傷に焦りを覚える。そのかすり傷が致命傷というわけじゃない。だがこれは確実に。
押されているっ!!
最初は五分五分の戦いだった。だが徐々に俺が不利になってきている。攻撃が少しずつ当たらなくなってきている。さっきまで当たっていた一撃が流された。コイツ戦いの中で成長してるのか!?
まずい。一旦距離を取る。
もう今まで通りの戦い方はできない。戦いの中で成長する万能のキメラ。加賀が勝ちを確信するわけだ。コイツはある意味雑なチート能力よりも厄介かもしれない。ただでさえ厄介な再生能力とスピードとパワーがあるっていうのにそこに優秀な頭脳もプラスされるとなると打つ手無しだ。
まあ、それは普通ならば、だ。実のところついさっきまで自分の能力を忘れていた。俺の能力は超人的な身体力でも剣を振ることでもない。俺は150を超える神器を所持する転生者。ならば今はその能力を存分に使う絶好の機会なのではないだろうか。向こうが成長するっていうなら、戦い方を学習する前に戦い方を変えればいい。
「無限にも等しい神器の組み合わせ。お前に対処できるか?!」
駆け出しながら今持っている長剣を短剣に持ち変える。
究極人工生命体の横振りの攻撃を避けてその脇腹を斬る。短剣にしたおかげで体が軽い。攻撃範囲は狭いがその分相手の懐に入りやすくなった。そして入ったならすぐにまた武器を変える。
また長剣だが今度はさっきのものとは違う。断面が繋がってしまうなら断面を無くせばいい。簡単に言うと断面を焼く。剣に力を
込めると剣を紅蓮の炎が包みこむ。そしてそのまま再び、今度は肉の焼けるような音と共に右腕を斬り落とす。断面はすでに黒く炭化している。あの状態ならおそらく断面は塞がっているはず。
そしてまたすぐに神器を持ち変える。今度は今まで使ったことがなかった大鎌。大鎌を振りかざし右脚を刈り取る。
これでバランスが崩れるh
強烈な一撃が俺のみぞおちに直撃した。
「っ!!!」
しかもこの入り方はヤバい。体中の空気がすべて吐き出された。
息ができねえ!!ヤロウ左脚を軸に回転、その勢いで思いっきり一撃入れてきやがった!!マズい!!意識が・・・飛ぶ!!
今まで受けたこともない体を突き破るような痛み。未だに生きているのが不思議なくらいだ。すごく痛い、意識が朦朧とする。でもまだ意識を飛ばすわけにはいかない。
「ドミ・・ネー、ェーン」
僅かに発した声に万物支配の鎖が反応する。ドミネートチェーンが究極人工生命体の左肩に巻き付くと同時に最後の力を振り絞って短剣の神器を装備すると鎖を引いてそれをヤツの首に突き刺した。深く深く突き刺した短剣をそのまま横へと勢いよくずらす。首は切断されたが僅かに皮一枚が繋がっていたことに気づき、意識が飛ぶ直前にドミネートチェーンに最後の命令をする。
「剥がせ」
それだけでドミネートチェーンはプツンとその皮を斬った。首が落ち、究極人工生命体がドサッと重たい音を立てて倒れる。それと同時に俺の意識も限界を迎えた。
目の前が真っ暗になった。
「隊長!!」
無限に湧き出るキメラたちを相手にしていたアリシアがレイジが倒れたことに気がついた。見たところ向こうはレイジの勝ち、もしくは相打ちで終わったように見える。いくらこっちでキメラの相手をしているとはいえ倒れた無防備なレイジをそのままにしておくことはできない。
「「私たちが」」
そう言って駆け出したのは双子のレネとルネ。だがその道に無数のキメラが立ち塞がる。いくら倒して減らない。いつまで経ってもレイジへとたどり着かない。
「おい!見ろ!ヤツが!!」
ウェイブの声に全員がレイジの方を見る。そこには倒したはずの
究極人工生命体が平然と立って気を失ったレイジを見下ろしていた。レイジに斬り落とされたはずの手足や首はどこにもなく、いつの間に再生したのか五体満足の状態だった。全員の焦りが募る。
「ルネ!」
「わかってる!!けど数が多すぎる!!」
そんなことをよそに究極人工生命体はゆっくりと治癒した右腕を振り上げた。




