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お城訪問

負傷した騎士は五人。そのうち二人は軽傷、三人は重傷だ。俺とサディスと軽傷の騎士は重傷者を背負い、

もう一人の騎士には少し辛いとは思うが護衛をしてもらうことにした。しばらく歩いて森を抜けたがどう考えても背中の兵士が拠点まで持つとは思えない。俺の持っているアイテムの中に確か回復薬っぽいものがあったはずだ。


何でそんなことわかるのかって?前にも言ったかもしれないが俺は自分の持っている神器を最初からある程度把握している。すべての神器の能力や存在を把握しているわけではないから何でもかんでもできるわけじゃないが攻撃、防御、回復という戦いに必要な最低限のことはできるはずだ。


背負っていた騎士を地面に降ろす。

「おいしっかりしろ、今楽にしてやる」


「首でも切ってくれるのか?」

騎士は弱々しく笑って言った。


「ふざけんなそんなことしてたまるか、生きて帰るんだよ」


俺は宝物庫の中から小瓶を取り出した。おそらくこれが傷を治す薬。神が作ったこの世界で最強の回復薬。

『天使の寵愛』傷ついた者を癒す万能の薬。どんな深い傷も癒すことができるが魔剣や神器など特殊な力を帯びている武器につけられた傷は癒すことができない。また効果が強大であるため大量に使うと薬の力に耐えきれずに死ぬ死神の薬でもある。


「踏ん張れよ」


俺は瓶の栓を抜いて黄金に輝く万能薬を一滴騎士の口に垂らした。すると傷口からシューと音を立てて湯気のようなものが立ち始めたと思ったら傷が塞がり始めた。

「う、うぐぅあぁ」痛みを感じるのか騎士がうめく。


そして10秒も経たないうちに完全に傷が塞がった。傷がなくなり騎士の容態も落ち着いたがそれでも衰弱していることには変わりない。こういう時どうするのがいいのかよくわからないが俺が昔こいつみたいになっていたときはとりあえず食って寝てた。それでなんとかなっていたから「あ、それでいいんだ」と思ってテキトーに過ごしていた。今回でもそれが通じるのかわからんがどうせできることもないしな。


「ほら、これでも食え。腹は膨れないけど」

そう言って俺が渡したのは宝物庫から取り出した水の入ったポッドとキャロリーメイト。宝物庫の中に無限というほどに入っている水とキャロリーメイト。一体誰がこんなものを入れて詫びようと思ったのだろうか。文句をつけるつもりはないが一体どんな神経をしているのだろうか。詫びの品として無限の水と

キャロリーメイトをくれる神なんて聞いたことないぞ。


神器名は中二病全開でつけるなら・・・そうだな『暴食者の宝』とかだろうか。いや、なんか恥ずかしいから『無謀な飲食料』とかかな。どっちも某トレーディングカードゲームに出てきそうな名前だが(トラップ)カードでもなければ魔法(マジック)カードでもないぞ。


もう一人の方にも薬を飲ませてキャロリーメイトと水を渡した。そしてサディスたちにも。

「何だこれは。クッキーのようだが見たことのない形と味だ何なんだこれは?」

サディスはキャロリーメイトを一口かじって聞いてきた。他のみんなも同じく不思議な顔をしている。


「これはキャロリーメイトっていう携帯食だ。腹は膨れないけど栄養価は高い」


「きゃろりーめいと?聞いたことありませんわ。サディスあなたは?」

アイリスも一口かじりながら聞いた。


「いえ、聞いたことがありません。こんな小さなクッキーが携帯食とは。貴殿は一体どこの国の生まれなのだ?」


「あー、えーっと」

ここで日本と言うのは容易い。だがそのあとに「こことは違う世界から来た」とは言いにくい。言ったところで信じてもらえないのがオチだ。それに俺が今まで見てきた異世界物のアニメでは主人公は

「違う世界から来た」とは言わない。多分こういうのは隠しておくのが暗黙の了解なんだろう。


「日本という国だ」

とりあえずそう言ったがそこでまたみんな知らない国だなという顔をした。アイリスが騎士達の顔を見るが皆首を横に振った。


「その国はどこに?」


「東の方さ。ずーっと東にある小さな国」

一応間違ってはいない。(もう一つの世界の)東の方にある小さめの国だからね俺悪くないネ。


「東、三日月の国意外にも国があったとは」


おっとっとなんか面倒なことを言ってしまったか?

三日月の国がどんな国か知らないがこの世界では極東=三日月の国

なのかもしれない。


「まあ俺の話はいいじゃないか。それよりみんなのことを教えてくれ。まだここに来たばっかりでこの辺りのこと知らないんだ」

と面倒なことになる前に話題を変える。これ以上なんか聞かれたら誤魔化せる気がしない。


その後はこの国のこととアイリスたちのことを少し聞いた。ちょっと長かったから

俺なりに簡単にまとめるとここはハイデンという国らしい。

大きさは世界で3番目と結構デカイ。


ちなみに一番デカイのはグリフォード帝国という国らしい。

一番デカく一番権力が強く一番技術が進んでいるとにかく一番まみれの国のようだ。最近は魔法と蒸気を使って色々しているとかなんとか。


ハイデンは魔法技術に長けているが他の技術はサッパリらしく

魔法だけが取り柄みたいな国で最近は帝国から小指の爪程度の技術が流れてきたらしい。


どうやらこの国はだだっ広い魔法の国だったようだ。


あとなんで野盗に襲われてたのか聞いたらお見合いの帰りだったらしい。だからさっき危うく結婚させられそうになったのか。アイリス見た感じ俺よりちょっと年下だと思うんだけどもうお見合いしてんのね。姫様ってやっぱり大変なんだな。


俺が水を飲んで一息つくと


「そういえばさっきから肩でぷよぷよしてるそれは、スライムです?」

アイリスが聞いてきた。

「ええ、俺の相棒カッコカリです」


「へぇ、なんか可愛いけど名前は?」


「いやぁ、さっきからつけようとしてんすけどなかなか気に入ってくれなくて」


「じゃあ私がつけてあげましょう」

アイリスは顎に手を当てて考え始めた。一体普通の人はどんな名前を付けるのだろうか。

俺のジャクソンとマイケルはあまりに批評だったためにビンタされたり目潰しされたりとろくな目に合わなかった。


「ジャクソン、マイケル・・・?」


「いやさすがに」

スライムを見ると色が水色からピンク色に変わっていた。おい待てやテメー。さっき俺がその名前つけようとしたとき俺のこと打ったよな?おかしいだろ。何照れてんの?まあ照れてんのかわかんないけど多分照れてんだろうね。


というかアイリスも俺と同じ残念なネーミングセンスだったか。よくジャクソンとかマイケルとか思いついたな。ちょっと運命すら感じるよ。だが俺は思いついてしまった。覚えやすくなんとなくかわいい名前をな。



「チクワ」もうそれでいいと思った。適当そうだが覚えやすいうえにどこか可愛げのある名前だ。

ジャクソンは雰囲気的にあっていないしマイケルはちょっとリアルすぎるというか超一流スターを思い出すような名前だし多分これがいい。しかもカタカナ表現にすれば食品のちくわと間違えることもない。間違える機会もないと思うけどな。


肝心のスライム自身はポヨポヨと体を上下に揺らしている。喜んでいるのか仕方ないからそれにしてやろうと呆れているのかそれともまたダメだと主張しているのかわからん奴だ。


「チクワ、また聞いたことのない単語だけどなんか可愛い」

アイリスはそう言ってチクワを撫でた。するとまたピンク色に変わった。

照れやすいやつだな俺の相棒は。


「それとあの金色の薬は一体n」


「さーてそろそろ行こうか!お前らはまだ歩ける元気はないと思うから負ぶって行くわ‼」

また話が面倒な方向に行きそうだったのでまた強引に話を切る。これも別に隠す必要はないんだが

これで「俺神器持ってるんだ」とか言ったらこれを奪い合うために戦争とか始まったりしそうで怖い。


多分そんなことにはならず誰にも信じてもらえないんだろうけどな。それに悪用されたして誰かに迷惑かけたりしたくないし。

「もう、自分に関わることは語らないのね」

とアイリスは頬を膨らませた。うんやっぱり可愛いな。もっといろんな表情を見て楽しみたいところだが


目的地まではまだ距離があるようだ。城は確か町の中心だったか、まだまだ遠くに見える。

結構近場を探索していたはずなのにスライムとゴブリンを探し回っているうちにかなり遠くに来てしまっていたらしい。どうやらもう少し話を逸らす努力をしなければならないようだ。



大体1時間後、ようやっと城に着いた。俺はもう疲れた。別にこの騎士を背負っていることに疲れたわけではない。俺が疲れたのはいかに自然な形で俺の話題を避けるということことだ。どこかの誰かが俺のことについてしつこく聞いてきてその度にどうにかこうにか重要な部分を誤魔化し続けてやっとゴールに着いた。


もう自分を褒めたたえたい。よくやった俺、よく最後まで諦めずに誤魔化し続けた。本当にもう国民栄誉賞もんだよマジで。あまりにも誤魔化すもんだから少しずつ騎士たちからは怪しい目で見られていったし

アイリスに関しては変に誤魔化したせいでさらに俺に興味を持ったらしく目が輝いているが、もうどうでもいい。


今はとにかく自分自身を褒めちぎりたいただそれだけだ。頭の中で自分を褒めながら城の中に入る。

城の中はテレビとかでたまに見るような造り・・・だと思う。あんまり記憶にないから何とも言えないが。

負傷してた人達は医者っぽい人たちに任せてっと、よし帰ろ!今帰ろう、すぐ帰ろう、マッハで帰ろう!


ヤバいことに巻き込まれる前に逃げる。そのつもりでした。なのに

「ぜひ、お父様に会ってください。そのまま結婚の許しをもらいましょう!」とか言われちゃってね。

当然俺も「いや、もう本当にいいんで!俺が国王様にお会いするとか国王様に失礼なんで‼」

とか適当なこと言って逃げようとしたが入り口を兵士たちに塞がれ帰れなくなった。


結果、俺は今玉座のある部屋、玉座の間の扉の前にいた。あーヤバいわ。マジで心臓がヤバいわ。

今までにないくらいバクバクと音を立てている。王様ってことはつまり一番偉いよな。

久しぶりに本気でビビってるわ。


もしアイリスが変なことを言えば俺の首が飛ぶことになるかもしれない。怖い人だったらどうしよう。

とにかく不安でいっぱいだ。だが心の準備が整う間もなく扉が開いてしまった。






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